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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

山下書店南行徳店で、すてきな出会いが

先日、千葉方面の書店を少し回ってきましたので、うち、初訪問となる山下書店南行徳店を紹介したいと思います。(以下、写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。12月半ばごろの様子で、店内の様子は変わっている場合があります。)


121218山下書店南行徳 全景121218山下書店南行徳 看板121218山下書店南行徳 入り口

最寄りは地下鉄東西線の南行徳駅で、南口を出てすぐです。以前、ブックス英光堂があったところに居抜きでオープンしたお店で、43坪。サイズといい、立地といい、店構えといい、まさに駅前の本屋さん、という感じですね。


このお店、一見、ふつうの駅前本屋さんですが、本八幡にあった、椿書房(現、ときわ書房)のUさん(現在は、ご結婚されてTさん。以下「Tさん」とします)が働いているお店だと言えば、書店好きや出版関係者には反応される方も多いのではないでしょうか(ここで、彼女の店頭での姿を撮影させてもらってくればよかったと思い当たり、我ながらがっかり)。Tさんと、店長さんにお話をうかがいました。


お店は、11月半ばのオープンで、ぼくが訪問したのはちょうどひと月少しがたったところ。店長さんもTさんも、お店がようやく落ち着いてきた、というところ、まだまだこれから、と謙遜していましたが、とてもオープンしたてには思えない感じに、売場ができていましたよ。


121218山下書店南行徳 フロアマップ121218山下書店南行徳 レジサンタ121218山下書店南行徳 フェア棚

↑レジに貼られたフロアマップは、店長さんの力作だとか。(この後、まさに実例を目にすることになるのですが)それほど大きなお店ではなくても、棚になれていないお客さんは気づかずに帰ってしまったりするもの。こまかくジャンルが書き込まれたマップがあるのはいいですね。中は、レジにいるサンタ。右は入り口入ってすぐ脇のフェア+新刊棚。TさんのPOPもありました。


121218山下書店南行徳 児童書クリスマス121218山下書店南行徳 児童書サンタ121218山下書店南行徳 児童書2

↑ちょうどクリスマス前の時期だったので、児童書棚はクリスマス仕様。こちらにも、サンタがいて、折り紙製です(残念ながら、ピンぼけ……)。棚3本ほどの、決して大きくはないスペースですが、こまかなディスプレイが効いています。


121218山下書店南行徳 平台121218山下書店南行徳 棚エンド

↑文芸平台で、いちおしの1冊だという本とその周りを撮ろうとしたのですが、お客さんが入らないよう引いているうちに、なんだか妙なアングルでピントもダメダメ(泣)。写真には撮れませんでしたが、文芸の棚には、1段だけですが、本の本・書店の本のコーナーもあり、Tさんが取材に協力した『本屋さんで本当にあった心温まる物語』も並んでいました。右は、お店に来てくれたという作家さんの色紙。


121218山下書店南行徳 ブックカバー121218山下書店南行徳 購入本

↑山下書店での買い物は久しぶりだったので、カバーをかけてもらいました。購入本は、店長さんのいちおしとPOPの立っていた、第8回酒飲み書店員大賞受賞作『キネマの神様』。


Tさんは、前のお店を離れてから今回のお店で働き始めるまでに、少し間があいているんですが、とても書店員ブランクのある人とは思えない丁寧な接客。しかも、仕事をしている様子が、本当に楽しそうで、傍で見ているだけで、なんだかうれしくなってしまうような感じでした。「感じのいい書店員さんがいるお店」と地元のお客さんたちにお知られるようになるのは時間の問題でしょう。(Tさんの接客については、またあとで少しふれます。)


店長さんとのやりとりもなんだかあったかい感じで、お店全体の雰囲気がとてもいいのが、短時間いただけで伝わってきました。駅前にこういう雰囲気で、しかも夜遅くまであいているお店があると、地元の本好きの方はうれしいのではないでしょうか。


店長さんの話によれば、(新規店にはよくある悩みですが)まだまだ認知が十分にされていない感じだとのこと。同じ場所に書店があり、屋号切り替えの期間も短かったため、まったく異業種の店舗の跡地などにできた新規店よりはお客さんの認知という点では有利だと思うのですが、それでも、あらこんなところに書店が、というお客さんはいるようです。お店の周囲を歩いてみた感じでは、看板もわかりやすく出ていますし、「本」の大きな字も目に入ってきます。ふだんの人の流れがわからないので、なんとも言えませんが、お店自体にこれといって改善すべき点など見当たりませんから、地元の方に浸透していくのを地道に待つしかないのかもしれません。


南行徳駅は、北口側、駅からちょっと離れているようですが、TSUTAYA南行徳店もあります。位置関係的に、どの程度競合するのかよくわかりませんが、品ぞろえ的にはやはり意識しているとのことで、たとえば、沿線に高校もあり、周囲に塾などもある、駅前のこの立地で、あってもおかしくない学参がないのは、競合店との関係も考えての絞り込みのようです。


駅前の本屋さんらしいたたずまいと、学校・会社帰りに寄ってひとまわりするのにちょうどいいサイズ、バランスのいい品ぞろえ、感じのいい書店員さんたちと、ふだん使いのお店にぴったりの要素がそろったお店です。


今回は、千葉方面の書店回りということで、この後、西船橋、船橋、津田沼を回りました。この後は、残念ながら、タイミングが悪かったようで、行く店行く店で、ことごとく担当の方にふられ、さんざんな結果となってしまいました。でも、山下書店での短時間の訪問が効いていて、それもぜんぜん気になりませんでした。まあ、仕事的にはそんなことでは困るんですけどね(苦笑)。


121218津田沼書店フリペ

↑丸善津田沼店とTSUTAYA津田沼店でもらってきた書店フリペたち。いっときは、あちこちで見られた書店フリペコラボも、波が少し落ち着いてしまったのか、やめてしまったお店もありますが、こちらの2店は今も大きく展開中。2店で、これだけの種類(他にも、まだありました)が手に入ります。



ここで、ちょっと山下書店や今回の千葉の書店回りからはずれますが、Tさんのことをもう少し。


Tさんの噂を聞いたのは、もうずいぶん前のこと。Tさんが本八幡の椿書房にいたころのことでした(当時は「Uさん」でした)。すごい書店員さんがいるよ、と、知り合いの書店営業や書店好きからよくその名前を聞いてはいたのですが、こちらは文芸の担当でないし、ふだん、ふらりと寄れる場所でもないので、なかなか機会を作れずにいるうちに、椿書房が閉店してしまったのは、空犬通信でも以前ふれたとおり。


その後、書店を離れてしまったと聞き、お会いするチャンスもなくなってしまっていたんですが、今年のブックンロールに、お客さんとして来てくださり、会場でお会いすることができたのは本当に幸運でした。


そのTさんから、書店に復帰したので、ぜひお店を見に来てほしいと連絡をもらい、実現したのが今回の訪問。つまり、噂の書店員さんが、「書店員」として書店で実際に働いている姿を見る、初めての機会だったわけです。


ふだんからたくさんの書店を訪問し、売場を拝見していますから、すてきなフェアを手がける人、すばらしい棚を作る人、ユニークなフリペを作っている人……すてきな書店員さんたちにお会いする機会もたくさんあります。ただ、棚や平台やPOPなどが印象に残ることはあっても、接客が印象に残るということは、そんなにありません。というか、過去の書店レポートでも、隆祥館書店の二村さんのような特別な例を除くと、ほとんどない。過去のレポートにも接客についての話というのはほとんど出てきていないと思います。


Tさんの接客は、とにかくこまやかで丁寧です。お客さんへの声かけは、タイミングを誤ったり、多すぎたりするとうるさがられるものですが、そのバランスが絶妙で、おしつけがましい感じがまったくありません。どころか、声をかけられたお客さんが、「そうそう、今ちょうどききたかったのよ」という感じの反応をしています。とくにびっくりしたのは、店内をうろうろして、一度あきらめて出ていきかけていた家族に声をかけ、またたくまに(その家族が探していた)児童書の棚に案内していたこと。直前まで、ぼくとふつうに話をしていたのに(しかも、それがぜんぜん上の空な感じではないのに)。ちゃんと店内とお客さんが見えているんですね。


レジの近くで話をうかがっていると、その間、何度もお客さんが入り口を出入りします。そのたびに、いらっしゃいませ、や、ありがとうございました、と、Tさんは声かけをするんですが、こちらとの話の途中でも、それまで別のほうを向いていても、必ず、お客さんのほうに向かって、声をかけています。こまかいことですが、これは丁寧に徹底しようと思うと意外に大変なはず。よくお店でありますよね、お店に足を踏み入れたら、なんかあさってのほうから、「ませー!(いらっしゃいませ)」「あしたー!(ありがとうございました)」みたいな(おそらくは機械的に反応しているだけの)声が聞こえてきたりすることって。そういうマニュアルに従っているだけのものとはまったく別ものです。ちょっとびっくり、感激してしまいました。


驚かされたことはほかにも。これだけ、お客さんと店内の様子を丁寧におさえているぐらいだから、こちらが(つまり、店にきた営業マンが)店内をぶらぶらしているときのことなんて、当然気にもとめていないだろうと思っていたのですが、後日、訪問時のお礼メールのやりとりをしていたら、こんなふうに棚を見ていましたね、とか、こんな表情してましたね、とか、こちらの店内での様子についての感想まで記されているのです。いやはや。驚きました。


こうして文章にしてしまうと、そんなの、うちでもやってるよ、自分もそうだよ、と言いたくなる人がいるかもしれません。別にTさんだけが特別だということを言いたいわけではありません。もちろん、接客が丁寧な書店員さんはほかにもたくさんいるでしょう。でも、今回強調したいのは、こうして、書店を回って、書店レポートを書くというのを続けてきましたが、お店の魅力についてたくさん書きたい語りたいと思うことはしょっちゅうあっても、この書店員さんについて、この接客態度について、ぜひ書いておきたい、そんなふうに思わされることは、きわめてまれだ、ということです。


お店での様子について、メールでやりとりしているときに、Tさんは、「人が好きだから」だと書いていました。それが、ことばだけではないことを、しっかりと見せてもらった、そんな気がします。そして、ぼくの周りのたくさんの出版営業マンが、Tさん(Uさん)のことをなぜあんなにも絶賛していたのかが、ごくごく短時間、お店での様子を見せてもらっただけで、ほんとによくわかりました。


121218山下書店南行徳 椿ノート121218山下書店南行徳 Uさんノート

↑椿書房時代に、お店に置いて、お客さんとのやりとりに使っていたというノート。出版関係の知り合いから噂には聞いていましたし、Tさんご本人がblogなどにも書いているので、存在は知っていたんですが、見せてもらうのは初めて。まじめな書き込みも多いなか、中2病全開の超しょーもない質問というか要望みたいなのもあるんですが、そういうのにも、真摯に、かつユーモアを忘れずに返答していたりして、どこまでも手を抜かない人なんだなあと、あらためて。右はTさんが個人的につけている業務ノート。ちらっと見せてもらいましたが、新刊の情報、フェアのアイディア、その他、自分の担当に関連するいろいろなことが丁寧に書き込まれていました。


今のお店では、棚の担当を持っているわけではない、ということで、自作のPOPなどはあまり見られなかったのですが、その代わり、以前の職場での「作品」をいくつか見せてもらいました。


Tさん資料1Tさん資料2Tさん資料3

↑写真左の左は、「にこちゃんニュース特別版」。以前つとめていた書店で初めて作ったフリペだそうです。トークイベントの内容を自分で起こしてまとめたものだそうで、「初」とは思えぬ力作。右は椿書房時代の「椿」で、Tさんによれば、「昔の「にこちゃんニュース」を小さくしたもの」。基本的に、Tさんの作るものは、ほとんどが手書きです。写真中の「にこちゃんニュース」もトークイベントの中身をまとめたものだそうで、柱などに貼っていたそうです。こちらもオール手書きで、コピーをさらに写真撮りしているのでわかりにくいですが、カラーになっています。


Tさん資料4121218山下書店南行徳 POP例

↑写真左は、お酒フェアがあたったので、それをフリペにしたものなのだとか。右は、イラストを全面にあしらったPOP。とにかく、見せてもらうものが、どれもこれも手がかかっているものばかりで、印象に残ります。残念ながら、単体で見せてもらったものばかりですが、それでもうれしくなりましたから、店頭で見かけたら、さぞわくわくさせられたことでしょう。


ちなみに、こんなふうに過去の作品を紹介できているのも、こうした資料を、それぞれに、いつ、なんのために作ったか、などの丁寧なメモをつけて、ご本人がまとめてくださったからなんです。これまで、いろいろな書店員の方を取材させてもらってきましたが、雑誌や単行本の取材ならともかく、個人のblogですからね。そのためだけに、こんなに丁寧に資料を用意していただいたのは初めてのことで、それだけでも感激してしまいました。いやはや。


ちなみに、フリペとしての「にこちゃんニュース」は、今は店頭では見られませんが、Tさんご本人による同題のブログ、「にこちゃんニュース 喜怒哀楽のつまった、ものがたり。」がありますので、興味を引かれた方はぜひそちらもご覧ください。


というわけで。書店レポート、というよりは、書店員レポート、のような記事になってしまいましたが、おそらう2012年最後のものになるであろう書店レポート記事が、山下書店南行徳店とTさんの紹介記事でほんとうによかったと、書いている本人がいうのもなんですが、そんなふうに思っています。近隣の方はもちろんですが、書店好きならば、わざわざ遠出する価値ありかと思います。



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  • 2013/01/18(金) 12:58:08 |
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