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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

香山滋の「新刊」が出たと思ったら……

昼休み、いつものように東京堂書店の「軍艦」を眺めていたときのこと。なぜか、香山滋の本が新刊台に、それも2冊も並んでいます。探偵者として反応しないわけにはいきません。



この『妖蝶記』『海から来た妖精』、タイトルを見ただけで香山ファンはすぐにピンとくるでしょうから説明不要かと思いますが、元は、今なき牧神社から「異色絵本叢書」という叢書の2巻目、3巻目として、函入りの上製本で出ていたものですね。セレクトも造本もいいので、たまに開きたくなる本です。


香山滋 牧神社

↑これが、牧神社版。B5判函入り上製で、篠田栄子さんの絵が表紙と本文に使われています。


好きな作家の復刊は、もちろんうれしいもの。とくに、香山滋は、主要作が手に入りにくく、いま手軽に読める文庫や単行本となると、出版芸術社の「ふしぎ文学館」の1冊『月ぞ悪魔』ぐらいしかありませんからね。だから、復刊は歓迎です。でも……。


それにしても、この装丁は、いくらなんでも、あんまりじゃないでしょうか……。上の書名に、紀伊國屋書店BookWebのリンクを入れてありますので、書影を見てみてください。要するに、元の版の本体のカバーから装画と編者・版元の表記をとっただけのもので、イラストがあった中央部から下があいてしまってバランスが悪いことこのうえない。元は、円に近いイラストが入っていたので、書名がアーチを描いているのは、イラストに呼応させる意図だったと思われるんですが、それを考えずに、単にイラストをとってしまったから、書名のアーチもなんだか妙な感じ。


タイポグラフィだけで処理するにしたって、もうちょっとやりようがあったろうし、なにより、なんでこんな色にしてしまったんだろう。牧神社版も本体のカバーの地は青だけど、ボールの箱に入っていて、そのボールに青系の紙がかかっているのと合わせてあったのに、そういうのを一切無視して、元のカバーの色だけ残すのは乱暴すぎ。しかも、下巻のオレンジはいったいどういう意図で選ばれたのか(牧神社版のカバー、書名の色がオレンジだが、もしかしたら、そこからとったとか……うーん)。やる気がないにもほどがあると言わざるを得ません。店頭で手にして、くらくらしてしまいました……。


版元は沖積舎。ついこの前まで、東京堂書店の1階でフェアをやっていましたね。初版オリジナルの覆刻もいくつも出している版元で、それこそ、足穂・乱歩・久作といった探偵ものの重要作家・重要作品の覆刻を出しています。この本の場合は、牧神社版は作品としては厳密な初版オリジナルではないものの、このような中途半端なかたちで覆刻でする理由がよくわかりません。造本やイラストの扱いなど、(牧神社版の)元のかたちが採算的に難しかったのかもしれませんが、それにしたって、もう少しなんとかできたんじゃないでしょうか。だって、ふつうのミステリー読みが気楽に手を出すような本ではないわけで、香山の名前に反応する、それなりの読者(つまり、マニアっぽい人)を相手にすることになるのは間違いないのだから。


もうひとつ気になることが。今回の沖積舎版、店頭で手に取った際に、あきらかに牧神社版がベースになっているのがすぐわかったので、クレジットを確認してみたんですが、元版が牧神社「異色絵本叢書」であることが奥付にも、その対向ページにも記載されていなかった気がするのです。ぼくの見落としかもしれませんから、再度確認して、もしこちらの間違いであれば、後で修正しますが(翌日あらためて確認してみましたが、やはりどこにも記載がないようでした)、もし本体のどこにもまったくふれられていないとしたら、問題はないんでしょうか。編者も装画も収録作品もタイトルも、あきらかに同じなのに……。


大好きな作家の本、それも、それが復刊であれ、新刊など出ることがあまり期待できない作家の本だっただけに、ほんと、残念です。空犬通信では、あまり楽しくない話題は取り上げたくないのですが、香山滋のファンとして、また探偵小説読みとして、あまりにも残念な復刊のされ方だったので、抗議の意をこめて、あえて記事にしました。不快に思われた方がいたら、すみません。


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コメント

この出版社さんは、復刻本を出してくれること自体はありがたいのですが、いつも造りがうにゃうにゃでもったいないですね(苦笑)。春陽堂書店と同様、会社の内情を知りたい出版社さんのひとつです。

  • 2012/12/16(日) 11:29:35 |
  • URL |
  • sugata #8Y4d93Uo
  • [ 編集 ]

復刊

sugataさん>
いつもありがとうございます。

元版の仕様をきっちり復元したものも出している
んですけどねえ。今回のはほんと、「もったいない」を
こえてしまってた感じだったので、思わず、取り上げて
しまいました。

> 春陽堂書店と同様、会社の内情を知りたい出版社さんのひとつです。

わかりますw。春陽堂書店には、個人的にすごくいい思い出
があるので、機会があれば、記事にしてみたいです。

  • 2012/12/16(日) 21:55:58 |
  • URL |
  • 空犬 #-
  • [ 編集 ]

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