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空犬通信

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本が「紙」で良かった……紀伊國屋新宿南店の「Visual Editions ブックフェア」がおもしろい

紀伊國屋書店新宿南店で、先日、おもしろいフェアが始まったので、紹介します。「Visual Editions ブックフェア」がそれ。お店のくわしい情報はこちら。「【新宿南店】 ロンドンの出版社 『VISUAL EDITIONSブックフェア』 素晴らしい姿で綴られた物語 」(以下、店内の写真はお店の方に断って撮影したものです。)


Visual EditionsVEフェア テーブル

場所は、6階洋書売り場コミュニティーガーデン(洋書売り場と語学書売り場の間あたりのスペース)フェアテーブル。フェアで紹介されている書籍は全部で4点、上の写真にある通り、テーブル1つにおさまってしまう小規模なものなんですが、これが実に濃い。


フェアタイトルにあるVisual Editionsは、2009年に設立されたロンドンの出版社。そのVE社が刊行した、Visual Writingなる《視覚的要素が言葉と同様に鍵となるような物語の表現方法》(チラシの説明より)で著された作品が集められています。チラシに《本が「紙」で良かったと思う》というコピーが見えますが、まさに、見る人にそのコピーのような感慨を抱かせずにはいられないような、「紙の本」の可能性に全力で挑戦しているかのような、強烈な本ばかりです。


言葉では説明しづらいので、まずは現物を見ていただきましょう。4点のうち、最新刊だという『Kapow!』(Adam Thirlwell)を買ってきました。


VEフェア KAPOW ラッピング表VEフェア KAPOW ラッピング裏

↑ギフトラッピングされたものと、ラッピングなしの2種が売られています。ラッピングペーパーは、お店でつけたものではなく、版元特製だそうで、内容に合わせてあるんでしょうか、4点それぞれ別のものになっています。この『Kapow!』は、ご覧の通り地図。カイロ(?)の地図に、ロンドン(?)の地図がコラージュされたもの。


VEフェア KAPOW 本体

↑本体は一見、ふつうのペーパーバック。ところが、中をあけると……。


VEフェア KAPOW 見開き1VEフェア KAPOW 見開き2

↑このような感じ。本文に窓があいていたり、横組みに縦組み、斜め組が乗ったり交差したり重なったり、丸や三角の形に組まれた箇所があったり、ページがシート状に広げられるようになっていたりと、ほぼ全ページにわたって、タイポグラフィの遊びが繰り広げられています。


文章自体は難解なものではなく、拾い読みしてみたかぎりでは、「ふつうに」読めそうではありますが、この作品に関しては、個々の文章が平易かどうかを言ってもあまり意味はなさそうですね。改段落のない文章がずっと続いているところに、まったくあさっての方向の文章が重なったりしているわけですから、ちゃんと読もうと思ったら、レイアウトの遊びを楽しむ余裕と集中力の両方があったほうがよさそう。でも、英文読解の練習じゃありませんからね。あまり難しいことを考えずに、本文を眺めているだけでも楽しめます。


残り3点がこれまた強烈で、上の本が4点のなかで比較的「おとなしい」と感じられてしまうほど。綴じられていないページが箱に収まっていて、どこからでも、どの順でも読めるようになっている「本」(『Composition No.1』)、バロウズ流のカットアップではなく、既存作品の文章の一部が「物理的に」切り取られて創られた/造られた作品(『Tree of Codes』)、古典文学(『トリストラム・シャンディ』)のレイアウト・組版をビジュアル的にさらに激しく冒険的にアレンジしたもの(『The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman 』)。


VEフェア ポスター

↑『Tree of codes』は、『Extremely Loud and Incredibly Close』(邦訳『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』)のジョナサン・サフラン・フォアの作品。これは、同氏の署名入りポスター。


文章で説明されても何のことだかよくわからないと思いますし、自分でもうまくこれらの本のありようをまとめられているとは思えないので、ぜひ店頭で実物を手にとってみてください。版元のサイトや紀伊國屋書店のフェア紹介ページでも本の内容、造本や紙面の様子がくわしく紹介されていますので、遠方でお店に行けない方はそちらをご覧いただければと思いますが、Webで見るのと、実物を見るのとでは、衝撃がぜんぜん違うと思いますので、ぜひ現物を手にされることを、強くおすすめします。


洋書読み、とくに英語圏の最先端の文学にふれたいという方、少し前の名前なら、たとえば、レイモンド・フェダマン、ドナルド・バーセルミ、マーク・Z. ダニエレブスキー(『紙葉の家』)、最近だと、サルバドール プラセンシア(『紙の民』)といった作家・作品に関心のある方にはおすすめです。また、洋書は読まない、読めないという方でも、あなたが「モノ」として本を愛する方、ブックデザイン・装丁・造本・印刷などに興味のある方ならば、ぜひ実物をご覧になるといいかと思います。フェアは、6/30まで。



ちなみに、上にあげた名前のうち、サルバドール プラセンシアは、VEの函入り本、『Composition No.1』に「The Anatomy of Your Favorite Novel」という一文を寄せているんですが、この本の形態を考えると、これを入れるのか、と思わず笑ってしまうようなものになっています。フェアではサンプルが見られますので、そちらでどうぞ。


21世紀の世界文学30冊

↑同じく洋書売り場で開催中のフェア「『21世紀の世界文学30冊を読む』原書フェア」。先日刊行されたばかりの都甲幸治さんの同名の本(新潮社)に合わせたフェアのようです。オースター、デリーロ、ピンチョン、エリクソン、デニス・ジョンソンらの作品がずらり。


紀伊國屋書店新宿南店の洋書売り場は、質量ともに充実していていいですね。洋書は和書以上にオンライン書店、とくにAmazonの影響が大きいのか、都内の洋書店・洋書売り場はなかなか厳しい状況と聞きますが、そんななかにあって、この規模の売り場を維持しているのは、ほんとうにすごいことだと思います。紀伊國屋書店新宿南店には、丸善丸の内本店、渋谷のタワーブックスらと並んで、都内の洋書売り場の「砦」として、がんばってほしいものです。


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  • 2012/06/08(金) 15:58:52 |
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