空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

年初の読書はいささかヘビーなものに……

あけましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いします。空犬通信ですが、昨年最後の記事に書きました通り、トピックを絞り込み、少しペースも落として、ゆっくり続けようかと思っています。


さて、年明けて最初の本……別に前日までと何が違うわけではないのですが、気分的にはやはり、一年の最初の本ということで特別感のある、その最初の本……ですが、少し迷った末に、昨年からの読みさし本から、この本を(読みさしはほかにもたくさんあったにもかかわらず、あえて)手にとりました。


  • 石井光太『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)

昨年の終わりに、冒頭を少し読んだだけで大きな衝撃を受けていたので、そうなることはわかっていたのですが、涙でぼろぼろになりながら読了。元日の午後、年初の読書にはヘビー過ぎる本でしたが、今読んでおかなくては、という気がしていましたし、そして、読了したいま、やはり読んでおいてよかったと思っています。


ただ、やはり、大変な読書ではありました。どの描写も、どの場面もずしりとくるものばかりですが、なかでも、子どもがらみのエピソードは、子を持つ親としては平静な気持ちで読み進めることができず、何度もページをめくる手が止まってしまいます。読みながら震えをおさえることができません。


新聞やWebで目にしてきた、犠牲になられた方々のリスト。被災地に係累がいないこともあり、これまでは、何の気なしに眺めることの多かったリストの、その背後にこんなことがあったとは……。人の安否や身元を確認すること、そのことに、どれだけの人の手がかけられていて、それがどれだけ大変なことだったのか。


震災後は、マスコミの情報の遅さに対する批判があちこちでなされましたよね(同時期に読んだ、『「僕のお父さんは東電の社員です」』では、小学生からもそのような批判がされていました)。速報性の求められない仕事をしているとはいえ、こちらも一応は広義のマスコミ、出版の世界の片隅に身を置く者です。身内をかばうような言い方をするつもりはありませんし、すぐれたルポを1冊読んだからといって、わかったようなことを言うつもりもないのですが、こういう本を読むと、遅いだの速いだのと、簡単には口にできないし、したくないなあと、そんな気がします。Webやツイッターやメールや各種の速報サービスなどで、情報が瞬時に手元に流れてくることに慣れ過ぎてしまったのかも……読み終えてから、そんなことも思ったりしました。


情報の速度、ということでいうと、この丁寧で濃密な取材が震災からわずか半年ほどの間になされていたことにもあらためて驚愕させられました(あとがきの日付が9月になっているのです)。


手軽に読み通せる本ではありませんから、簡単に「おすすめ」などと書くことはできません。ぼくでさえこんな調子ですから、ここに描かれた世界に立場的にもっと近い人にはさらにつらい読書になるはずだし、読み通せないという方もいるでしょう。実際、この本を読んでしばらくは、読後感があまりに強烈で脳内がしばらく支配されてしまい、2日ほどは、他の本の内容が頭にすんなり入ってきませんでした。


でも。上にも書きましたが、今この時期に読んでおいてよかったと、心からそう思える1冊でした。年初の記事がちょっと重たい本の紹介になってしまいました……。


2012年も、このような読み応えのある、すばらしい本にたくさん出会えますように。
2012年が、出版・書店に関わる人たちにとって、いい年となりますように。


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