さて、今回の仙台行き、旅の目的は3つありました。1つは、「Book! Book! Sendai」の様子、とくに一箱古本市を見てくること、2つめが仙台駅周辺の書店を見てくること、3つめにしていちばん重要だったのが、寄付先の候補として考えていた「こどもとあゆむネットワーク」の代表、横田やの横田さんにお話をうかがうことでした。3つめについては、稿をあらためますので、今回は1についてレポートしたいと思います。
「Book! Book! Sendai」がどういうイベントか、というところから始めるとまた記事が長くなっちゃうので、それはサイトを見ていただきましょう。空犬通信でも、以前の記事で一度取りあげています。

↑ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さんのイラストが表紙を飾る「Book! Book! Sendai」のパンフレット。
6/25、当日の仙台は、曇り空。ざーっと降ることはありませんでしたが、完全に晴れ上がることもなく、小雨が時折ぱらつく一日でした。Tシャツだとちょっと肌寒く、長袖シャツを羽織ってちょうどいいぐらい。大雨だったり、逆にかんかん照りだったりしたら、移動がどれだけ大変だったかを考えると、この天気は結果的にラッキーでした。
書店を少しのぞいてから、一箱古本市の会場であるサンモール一番町商店街へ向かいました。会場の商店街はアーケード街だったので、雨天決行。当日も、天気を気にすることなく見ることができましたよ。

↑一箱古本市が始まった直後のサンモール。ぜんぜん会場の雰囲気の伝わりませんね、これでは。我ながらひどい写真です(涙)。
出店数もけっこうあり、開始直後からそれなりにお客さんも集まっているようで、予想よりもにぎやかな様子。絵本をずらりと並べている方、ミステリーマガジンをたくさん並べている方、音楽書や映画書だけを並べている方、オリジナルしおりを配っている方などなど、バラエティに富んだ出店の様子で、端から順に見ていてはいくら時間があっても足りない感じ。
会場で、ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さんのお姿を見かけたので、ごあいさつ。実は、ちゃんと名乗るのはもちろん、不忍の一箱古本市のときの一瞬をのぞけば、おしゃべりするのも初めて。こちらがあちこちで佐藤純子さんのお名前やお写真を拝見、活躍ぶりをようく知っているのは当然として、あちらもときどき空犬通信をのぞいてくださるとかで、なんだかお互いに初めての感じがしませんでしたよ。
近くの野中神社(こんなところに神社が、と驚くような場所にある小さな小さな神社)のブースを紹介していただき、そこで売っている佐藤純子さん特製カバー付きの古本と、これまたご本人手作りのおみくじを購入。


↑すっかり有名になってしまった佐藤純子さんの手書きイラストカバー。おもしろいのがたくさんあったのですが、脱力度が琴線にふれた吉田健一訳の『ロビンソン漂流記』、新潮文庫を購入。表裏とも「イメージです」って(笑)。カバーをとると、紙の裏には「月刊佐藤純子」。本来のカバーは沢田としきさんのイラストで、その落差も含めて、大いに楽しませてもらいました。これはbeco cafeの空犬文庫棚に置いておくことにしよう。

↑サンモールには、こんな感じの、ひなびたいい横丁が。会場には、Cafeスペースもできていて、飲食できるようになっていたのですが、やはり食事は地元の店で食べたい。ということで佐藤純子さんにランチのおすすめをうかがったところ、この横丁の一軒を紹介されました。ランチもいいですが、時間帯がもう少し遅ければ、買った本を片手に一杯やりたいような、そんな感じの横丁でした。

↑ご本人もぱちり。文章も漫画もおしゃべりもおもしろいし、人柄も笑顔もすてきだしで、あちこちでひっぱりだこなのがようくわかります。

↑いがらしみきおさんの絵に、来場者が寄せ書きをしたもの。佐藤純子さんから、ぜひ何か書いていってくれ、と言われていたのに、忘れてきてしまいました。
ちょっと話がそれました。一箱古本市、仙台外のエリアからの参加者もけっこういたようで、東京・不忍からは古書ほうろうさんが出店されていました。こちらのことは覚えていらっしゃらないだろうとは思いつつ、ちょっとだけごあいさつ。ほうろうさんのところでは、ちょうど同じタイミングでいらしていたつん堂さんにもばったり。ちなみに、古本や書店の話が充実のつん堂さんの日記には、この一箱古本市の様子がくわしく紹介されていますので、古本好きはぜひそちらも見てみてください。

↑古書ほうろうさんにいただいたフリペ「ほうろう通信」。「仙台のみなさま、こんにちは!!」で始まるこのフリペには、一箱古本市発祥の地、不忍ブックストリートからやってきたことなど、お店のことや自分たちのことがイラスト入りの文章でまとめられていて、お店を何度も訪ねている者が見ても、おもしろいものになっています。
この後に予定があったため、実は、一箱古本市は、ざっと流すぐらいにしか見られませんでした。ほうろうさんのところも帰りにもう一度寄ろうと思ったら時間切れ、ほかに東京からは、わめぞのみなさんもいらしていたようですが、寄ることもできませんでした。うーん、残念。
なので、一箱古本市の収穫は、佐藤純子さんのところで買った『ロビンソン漂流記』のみ。古本好きとして、その戦果はいったいどうなのよ、という気がしないでもないですが、まあ、今回は古本以外にたくさん収穫があったということで(笑)。……でも、ちょっとくやしいな(苦笑)。
「Book! Book! Sendai」は、一箱古本市だけではなく、ほかにも興味深いイベント・フェア・ワークショップなどがいくつもあります。うち1つが、書店レポのなかで紹介した「not major, but ... GOOD PUBLISHERS」。ユニークな小出版社の本を集めたこのフェアは、4店で展開されていたのですが、うち3店を見ることができました。翌日の夜までいられたら、「出版者ワークショップ 出張版・仙台編「未来に届ける本づくり」」という、気になるタイトルのワークショップにも参加できたかもなのになあ。
今回は滞在が半日だけだったので、「Book! Book! Sendai」のごくごく一部しか見られなかったのはしかたないですね。でも、そのたった一部を目にしただけでも、イベントの盛り上がりぶり、地元との強い結びつきが伝わってくる、うらやましくなるようなブックイベントでした。また行きたいなあ。
BBSのレポートは以上なんですが、そもそも何故、急に仙台だったのかという、今回の旅の経緯についてもちょっとふれておきますね。
「Book! Book! Sendai」のことを最初に知ったのは、ツイッター経由だったか、碧野圭さんからだったか、一箱古本市でお会いした佐藤純子さんからだったか、ちょっと失念してしまいましたが、とにかく、しばらく前のこと。今年の開催とその内容のことを知って以来、各地で盛り上がっているブックイベントに興味のある身としては、ずっと気になっていたのです。イベント自体は約ひと月にわたって開かれるのですが、もしも行くなら、一箱古本市が行われる6/25(土)がいいと、早々に仙台行きを決めていらっしゃったら作家の碧野圭さんから同行しないかと誘われていたのです。
直前にイベント「ブックンロール」があったので、今回は無理かなあとあきらめていたのですが、募金先の件で碧野さんから、話を聞きたい人がいるからぜひ一緒にと言っていただき、それに背中を押されるかたちで決めたのが、今回の仙台行きだったというわけです。碧野さんに仙台行きを伝えたのは、前日で、新幹線の指定も前後3時間ほどの間でたった1席、というような状態でした。
仙台滞在、前半は独りで回り、後半は、作家の碧野圭さんと2人で(書店レポ記事のあゆみBOOKS)、また、広島から来られたウィー東城店の店長・佐藤さんの3人で(書店レポ記事の横田やと、それ以降)回るかたちになりました。
仙台の旅、最後は、碧野さん佐藤さんが宿ですすめられたという飲み屋に行き、3人で乾杯、牛タンとお酒を楽しみつつ、その日見聞きしてきたことについて、いろいろ語り合ってきました。碧野さんは、先日のブックンロールを始め、吉っ読の会に何度か来てくださるなど、何度もお話する機会がありましたが、それでも、このような少人数の会で酒席をご一緒するのは初めて。佐藤さんはこの日初めてお会いする方です。自分が編集者として担当しているわけではない作家の方と、広島から来られた初めて会う書店員さんと、仙台でお酒を飲む……なんか不思議な感じですよね(笑)。非社交的な身ゆえ、ふつうなら落ち着いてお酒を飲める組み合わせとはとても思えない感じですが、本や書店をキーワードにつながっていると、まったく距離感を感じずに話ができてしまうから、ほんと、不思議ですよね。
先に現地入り、前日は東松島にいかれ、復興の取り組みをしている東松島図書館の方と会われたというお二人から、この日見聞きした仙台の様子とはまた違った東松島の状況や復興活動のことなども酒席ではうかがうことができました。実に有意義で、楽しい時間となりました。ビール日和とはいいがたい涼しい夜だったのですが、ビールがことのほかうまかったのは言うまでもありません。
今回の仙台行き、早朝の出発で、帰りは最終の新幹線、日中はあちこち移動で、いろんな人に会ったり、いろんなお店を見たりと、40過ぎのオヤヂにはなかなかつらい、大変な強行軍だったんですが、でも、行ってよかったです。ほんとに。心からそう思いました。体力的にはつらいなんて行ったって、途中から同行したお二人は前日、さらにつらい移動をこなし、当日も仙台泊、翌日は別のお店を訪問する予定まで入っていたわけですから、そのような方々の前で、しんどいなんて言ってられませんよね。
仙台は、ほんとに、ほんとにすてきな街でした。本をとりまく環境がこれほど充実している街だとは、行くまでは思ってもみませんでしたし、またここまで日常を取り戻せているとも思っていませんでした。全体がシートに覆われている建物、壁面におおきな亀裂が走っていたり何かがはがれたような跡が残る建物、たしかにそういうものも目につきましたが、でも、全体の印象として、大変な震災に見舞われてからたった三月ほどの街には思えないぐらい、そこには日常の風景、ふつうの街の姿がありました。もちろん、少し市街を離れれば、まだまだ日常を取り戻せていない地域はたくさんあるのだし、ぼくが見たのは震災で大変な目にあった地域のごくごく一部でしかない、そのことは十分にわかっています。わかったうえで、あえて書くのですが、やっぱり仙台に来て、今の仙台の様子を、自分の目で見ることができて、本当によかったと思っています。
現地でお世話になったジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さん、被災地の子どもたち支援について貴重な話を聞かせてくださった横田やの横田さん、すてきなお店を見せてくださった仙台の書店のみなさん、広島から来られたウィー東城店の佐藤さん、そして何より、仙台行きを後押ししてくださった碧野圭さんに、心から大感謝です。ありがとうございました。
仙台で見聞きしてきたことがあまりに大きすぎて、自分の拙い文章ではとても書きたいことをまとめきれず、いつも以上に散漫な文章になってしまっているのが自分でももどかしいです。ほんとに。
仙台関係については、あと1本、横田やさんに話をうかがった件と、ブックンロールの募金の件をまとめて記事にして、それで終わりにする予定です。
