仙台レポート、続きです。今回は一般新刊書店以外のお店をということで、まずは児童書専門店の老舗、横田やから。このお店のみ、今回訪問した仙台駅周辺からは離れたところにあります。タクシーで行ったので、場所の説明ができませんので、お店のサイトをご覧ください。



↑かつて造り味噌屋さんだっという建物は、築100数十年だとか。この外観は、入る前からわくわくしますよね。
外観もすてきですが、中がこれまたすばらしい。お店は横長で、入ってすぐの正面がレジ、左側のスペースには木のおもちゃと赤ちゃん絵本などが並び、より広い右側のスペースは絵本と読み物にあてられています。店内の柱や梁は、年季の入った実にいい色をしていて、そういう建物の部分だけ見ていると、児童書を扱うお店には見えませんが、お店全体として見ると、違和感なく、本やおもちゃが並んでいて、とても居心地のいい雰囲気になっています。お店には、作家の碧野圭さん、広島からこられたウィー東城店の店長・佐藤さんの3人で訪問したのですが、佐藤さんは入るなり、お店のあたたかい雰囲気に真っ先に反応されていて、こういう雰囲気のお店を作りたいとしきりに口にされていました。お客さんだけでなく、同業の方にもそのように思わせるお店だということですね。
この日は、横田さんが代表をつとめる「こどもとあゆむネットワーク」の件でお話をうかがうのがメインだったので、店内をじっくり見たり、買い物したりはできなかったのですが、それでも強く印象に残るお店でした。ここはぜひ再訪したいなあ。
横田さんからは、「こどもとあゆむネットワーク」について、貴重なお話をいろいろうかがいましたので、その件は、別途、ブックンロールの募金寄付の件と併せて、まとめます。
続いて、同じ児童書専門店の老舗、ポランを。営業を始めて30数年というポランは、後述する横田やさんよりも古く(ポランが1年早いらしい)、仙台でいちばん最初にできた児童書専門店なんだとか。


↑右は、表の壁を利用した絵本のディスプレイ。
ビルの1階にあるお店なんですが、道路から引っ込んだ建物の中にあるため、注意していないと通り過ぎてしまいそう。中に入ると、これがびっくりするようなサイズで、5坪もない感じ(3坪ぐらい? 人がいると中に入れないのがちゃんと確認できず)の店内は見事に本でぎっしり。品揃えは絵本が中心とのことで、このサイズに3000冊(お店のサイトの数字より)が並んでいるといいますから、驚きます。
次は古書店を。仙台駅周辺には、いくつか古書店がありますが、今回は時間の関係で全部は回れそうになかったので、1つだけ選ぶならもちろんこのお店をということで、以前からずっと気になっていた火星の庭を訪ねてきました。

岡崎さんの『女子の古本屋』(ちくま文庫)、店主前野さんご本人による『ブックカフェのある街』(仙台文庫)などを読んでいるのはもちろん、その他、古本関係の文脈ではいろんなところで目にする店名ですからね。どんな店かとわくわくで行ったんですが、いやあ、想像通りのすてきなお店でしたね。
店内は、半分が古書スペース、半分がカフェといった感じ。カレーが名物の1つのようで、店内にはカレーのいいにおいが。古書棚にも、好みの本がたくさんあったんですが、例によって、好みが重なりすぎていて、これという本がなかなか抜けない。なんとか買い物をしたくて、大急ぎかつ丁寧に棚を見ていったんですが、ついに時間切れ(この後に、先のレポートに書いた、あゆみBOOKSと、前述の横田や訪問が控えていた)、1冊も買えなかったのが残念すぎる……。カレーもドリンクも試せなかったしなあ。
ここでも、「not major, but... GOOD PUBLISHERS」フェアが開催中。並んでいる本のなかでは、龜鳴屋の本に大いにひかれました。社名からしてあやしいこの版元、自社のサイトの本の案内に「怪しい既刊」という小見出しを付けているぐらいで、すてきにあやしい本をいくつも出しています。

ぼくは、探偵者なので、『稚兒殺し 倉田啓明譎作集』でこの版元の名を知ったのですが、この本がまたすごい本で、手が出ない特装本はともかく、普及本も真っ赤なクロス装(「加賀染縮緬装」だそうだ)で、本のたたずまいからしてただごとでなく、正字正かなで読みにくい本文(というのは組の問題ではなく、文章の問題で)がこれまたすごくて、序文が皆川博子、ブレイク前の西村賢太が稿を寄せている(『藤澤清造貧困小説集』を刊行しているので、その関係か)というおまけもあるなど、なんだかすごい1冊なのです。それでこの社名。そりゃあ、印象に残りますよね(笑)。その龜鳴屋の本が、『稚兒殺し』のほかに、いろいろ並んでる! 素人にしては多すぎるほどの、あちこちの書店に出入りしてきましたが、こんな光景は初めてですから、さすがにちょっと手が震えました。
並んでいた本のうち、いちばん惹かれたのは、伊藤人譽『馬込の家 室生犀星断章』。これまた造本がすばらしい本なんですが、即買いにはやや高い。犀星がらみなのはともかく、知らない著者だし。この後、お金を使うかもしれないし(まだ一箱古本市もちゃんと見ていなかった)なんて、みみっちいことを迷っているうちに時間切れ、とあいなったのでした。嗚呼。
といわけで、いいお店だったし、龜鳴屋の本まで見られたのに、ほんと残念。これは再訪しないとね。ちなみに、ぼくが店内を物色しているちょうど同じとき、店内に北尾トロさんがいらっしゃいました。
あとは駆け足で。駅から駅前を見渡していると、ブックオフの看板が目に入りました。スルーしてもよかったのですが、入っている商業施設の名前「さくら野」が気になって、なんだっけ、と思ったら、ブックオフの大型複合店としてちょっと話題になったブックオフスーパーバザーが入っているところだと思い出した次第。


2フロアを使ったお店はたしかに大きくて、資料によれば、全部で900坪超、本CDゲーム他が370坪弱だとか。棚は見るまでもないと思い、フロアサイズと入り口の感じだけチェックしてきましたが、本のフロアを見るかぎりは、ちょっと大きめのふつうのブックオフでした。

古書店ではありませんが、このお店も紹介しておきましょう。stock gallery&atelier。ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さんにすすめられたお店です。その佐藤さんが、ミシマガジンに寄せた文章を引かせていただきます。
《小さい看板のみの案内で、お店にたどり着く難易度はかなり高めのお店です。小冊子「ふきながし」の発行と、ヨーロッパで買いつけた古道具、紙もの雑貨、リトルプレスなど選び抜かれたものが揃っています。奥のソファー席ではホットサンド(400円)、ホットケーキ(500円)といった、軽食なども食べられます。グッパブは山、旅、ファッションのジャンルから、エッジの利いた本が並んでいます。》「not major, but... GOOD PUBLISHERS」フェア開催店の1つ。
最後は、書店ですらないのですが、これにもふれておきましょう。「ライブラリーホテル」なる、本好き・書店好き・図書館好きにはなんとも気になるホテルがありました。

↑駅のコンコースからも見えます。
フロントなどの共有スペースに本棚が備え付けられていたり、図書室があったりなど、宿泊客が本を読めるようになっている宿泊施設自体は他にもありますが、ホテルの名称にしているケースはめずらしいのではないでしょうか。どれほど「ライブラリー」が充実しているのか大変気になるところですが、本は宿泊客用とのことで、ふらりと訪ねて確かめることはできないらしいのが残念なところ。Book! Book! Sendaiのために仙台を訪問された方で、このホテルを利用した方がいらっしゃったら、ぜひ感想を聞いてみたいところだなあ。
以上、新刊書店以外のブックスポットを紹介してみました。このほかにも、「グッパブ」の開催店の1つである「書本&cafe magellan(マゼラン)」にも行って見たかったし、サンモールそばの古書店、昭文堂、熊谷書店、ぼおぶら屋古書店ものぞいてみたかった。要するに、再訪の要あり、ってことですね。次はもっと書店&ブックスポットを回る時間をたっぷりとって来たいものです。
次は、Book! Book! Sendaiのレポートを。