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空犬通信

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新刊書店の大型化に拍車が?!……TSUTAYA出店戦略に関する気になる記事

久しぶりに書店の開店関連ニュースです。まずは、北海道のこちらから。「三省堂書店 留萌出店へ 市民グループが誘致 地方小都市へは異例」(6/17 北海道新聞)。


記事を引きます。《大手書店の全国チェーン三省堂書店(東京)は16日、留萌市内に出店を決めた。道内では札幌、旭川、函館に続き5店舗目で7月下旬のオープンを目指す。同社が人口2万5千人規模の地域に店を設けるのは全国的にも異例。》


《店舗は市内南町4のマックスバリュ留萌店内に構え、床面積約530平方メートル。10万冊の書籍のほか、CD、DVDも取りそろえる。営業時間は午前10時~午後8時で、従業員は地元から8人を採用予定。》


記事にもある通り、このクラスの地方都市にナショナルチェーンが出店するのはめずらしいケースですよね。とくに、最近は、地方の出店というと、大型店のニュースばかりでしたから、坪換算で160坪のお店の出店はちょっと新鮮な感じです。


先日のブックンロールのトークでも少し話題にしたのですが、新刊書店の店数と規模の関係については、この空犬通信でもご紹介しているように、お店の数が減少する一方で、総売り場面積は微増となる傾向にあり、ざっくり言うと、中小のお店が減って大型店化が進んでいる状況。そんななか、地方都市の「街の本屋さん」的なお店を、全国チェーンがになうことになるというのは、なんだかうれしいニュースですよね。しかも、書籍だけではなくCD・DVDと合わせてだとはいえ、約160坪とありますから、駅ビルなどに入っている小・中規模ワンフロア書店ぐらいあるということですからね。地元の本好きはきっと喜んでいることでしょう。


めずらしい小規模店の出店の話の後は、やはりこれにふれないといけません。大型出店の話題というと、最近は、コーチャンフォーや宮脇など、一部の地方チェーンの件をのぞくと、CHIグループの独擅場という感じでしたが、広さの点でも店舗の点でも、ある意味CHIグループ以上の影響なり衝撃なりになるかもしれないと思わせるニュースがこちら。「TSUTAYAに大型書店併設 「ついで買い」狙う CCC、既存店の5倍の面積で 」(6/23 日経新聞)。


まずは、記事を少し見てみましょう。《カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、DVDレンタルなどを手掛ける「TSUTAYA」で、大型書店を併設した複合店を展開していく。売り場面積を既存店の5倍の6000平方メートル前後とし、その半分を書籍・雑誌の販売にあてる。出版市場は縮小傾向をたどっているが、品ぞろえが豊富で販売効率の高い大型書店で顧客を囲い込み、レンタル事業との相乗効果を狙う。》


大型書店を併設した複合店、それも6000平米! いやはや。それはまたスケールの大きな話です。続きを見ます。


《TSUTAYA既存店の平均売り場面積は約1200平方メートル。半分でCDなどのレンタル事業を、残り半分で書店やCD・DVDの販売を展開する。新型の複合店では書店の売り場だけで3000平方メートルをあて、既存店の7倍にあたる35万冊の書籍・雑誌をそろえる。店舗の残り半分でCD・DVDレンタルのほか、文具などを販売。コーヒー店も併設する。》


文中の数字を確認しておきます。6000平米というと約1815坪、3000平米は約907坪、1200平米は約360坪です。つまり、書籍・雑誌売り場だけで、大型出店が毎回話題になる丸善/ジュンクの新店と同規模となるわけですね。いやはや。気になるのは、いつ、どこに、どんなペースで、ということですが、その点については、以下のようにあります。


《2012年3月期中に5店程度を新設する計画。トップカルチャーが今年8月に前橋市に1号店を出すほか、来年3月には埼玉県久喜市に出店。CCCも東京都渋谷区に新店を建設中で、5年後に全国では郊外型を中心に計80店程度に増やす考えだ。》


5年間で80店! 毎年16店?! これがすべてこの記事にあるような大型店舗なんでしょうか。だとしたら、CHIグループの戦略以上に、書店の大型化を一気に加速させる事態ですよね。なんと。


このような短期間での大型出店で、採算面、売上予測面がどうなっているのかも気になるところですが、それについてはこんなふうになっています。


《TSUTAYAのチェーン店舗数は現在約1400で、書店併設型は約650店。11年3月期のチェーン店舗売上高3639億円のうち、書店は前の期比7.3%増の974億円で、CD・DVDレンタルの1757億円に次ぐ収入源。今回の大型複合店の出店をテコに5年後に書籍・雑誌販売、レンタルともに2000億円の売上高を目指す。》


TSUTAYAが、書籍・雑誌の世界でいまや老舗全国チェーンをおさせて業界のトップにたっていることは業界紙だけでなく、全国紙でも報じられていましたし、空犬通信でも取りあげました。それにしても、なんというか、すごい話です。数字とか出店ペースとか、そういうところだけ見ていると、とても書店の話とは思えない感じです。


そういえば、この方針と同じ流れにあるのでしょうか。トップカルチャーが「蔦谷書店」のプレスリリースとして、こんなのを出していましたね。「既存店リニューアルオープンのお知らせ~3店舗にカフェを導入、BOOK&CAFEスタイルを推進~」(4/28 トップカルチャー)。



本文には、こうあります。《当社は、お客様の期待を超える「心地良いコミュニティ空間づくりの実現」を掲げ、既存店の改装を重点取り組みとして推進しております。この度、4月29日(金)に 長野川中島店(長野市)、蔦屋書店 新通店(新潟市)、5月2日(月)に 府中クレッセ店(東京都府中市)と既存店3店舗にタリーズコーヒーをテナントとして加え、新たにエンターテイメント・コンテンツとカフェが融合した“BOOK&CAFE”スタイルへとリニューアルオープンいたします。また、今回の改装においては、書籍および文具の品揃えを質・量ともにさらに強化いたしました。で過ごす時間がより一層 “楽しく・くつろげるひととき”となり、地域の皆様が集うコミュニティ空間となるよう、今後とも既存店の付加価値向上に努めてまいります。》


記事でふれられている3店ですが、長野川中島店が750坪、新通店が450坪、府中クレッセ店が900坪と、大型店舗戦略の記事でふれられていたような規模ではないものの、また、書籍・雑誌のみの数字ではないものの、それなりに大きなお店になっていますし、書籍の在庫も増やしたとされています。長野と新潟はなかなか機会ないですが、とりあえず、府中クレッセ店については、近いうちに、どんな感じのリニューアルがされたのか(といっても、以前の様子を知らないのですが)、チェックしてこようと思います。


さて、大型店舗戦略の件に戻ります。記事には、今秋、渋谷区でオープン予定だという大型複合店の写真が載っています。この秋と言えば、まもなく、6/24に旭川店(1050坪)がオープンとなるジュンク堂書店が、MARUZEN&ジュンク堂書店ブランドで、静岡の複合商業施設「新静岡セノバ」に出店することがしばらく前に報じられたばかり。10月という話ですが、その同じ10月には、北海道北見市にコーチャンフォーが1700坪超という、超大型店を出店することが報じられています。


ぼくは、書店は大きなところも小さなところも、それぞれにいいところがあって、どちらも好きだし、大型店の本に囲まれている感じ、あっちに行ってもこっちに行っても本という「本の森」状態も好きなので、大型店が増えるイコール、よくない、ダメだ、などというつもりはまったくありません。ただ、大型店が増え、結果、同一商圏はもちろん、近隣まで含めた中小規模の書店が圧迫され、廃業に追い込まれるようなことはあってほしくないし、そのようなことが繰り返されることで、それこそ、どこにいっても同じチェーンのお店しかない、というようなことには、ぜったいになってほしくないんですよね。


いずれの出店も、書店問題に関心のある身としては、気になるものばかりですので、続報詳報ありましたら、また記事で取りあげたいと思います。


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