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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

奇人、嫌われ者、編集者……続・最近読んだ本たち。

さっきの日記の続きです。


  • 前坂俊之『ニッポン奇人伝』(現代教養文庫)
  • 塩山芳明『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)
  • 山田宗雄『職業としての編集者』(三一新書)



この日記で、モンドだのホラーだの、怪獣だの、偏りまくった自分の好きなものについて、うれしそうにかつ好きなように書き散らしていると、ときどきふと我に返って、俺だいじょうぶかなあ、変だと思われないかなあ、などと思ったりする。ここらあたりがいかにも小心で、我ながら嫌になるが、そんなときはこの『ニッポン奇人伝』を読み返す。自分が奇人、変わり者、変人だの呼ばれるには10年どころか100年早いことがようくわかって、とても安心。


先の日記でも少し紹介した『出版業界最底辺』は、やはり最後まで毒だらけの本だった。おもしろい、といえばおもしろい本なんだけど、この語り口は読者を選ぶだろうなあ。なにしろ、作家、漫画家、評論家、編集者、出版社、印刷会社、書店、お役所、飲食店、出版物、映画作品……もう毒づく相手はとどまるところを知らない。このサイン本は、神保町の書肆アクセスで購入したものだが、塩山は「地方出版物を扱う書店流通の良心」みたいに言われるこの店にも手厳しい(そういう記述があることはわかっているはずなのに、ちゃんとサイン本を平積みにしているアクセスはえらい、のかもしれない)。


終始そんな調子なので、楽しい読書向きではないんだけど、編者の南陀楼や解説の福田が言うように、資料的な価値はある、というか高いのかもしれない。出版界の名編集者さんたちの手による本はいくつもあるが、多くは有名作家との交流が中心で、編集者の日常、特に地味なデスクワークや印刷会社など「業者」とのやりとりに紙幅が割かれたものはあまり見ない。


その点、本書は、印刷会社とのやりとりがかなりこまかく記述(その多くは、これまたけちょんけちょん)されているし、写植がどうのこうの切り貼りがどうのなんてのも出てくる。また、漫画家との原稿受け渡しがどうなっているか(持ってきてもらうか、取りに行くか、送ってもらうか、ボツや書き直しはどうなっているのか)、下請けって何誌ぐらいを抱えているのか、などなど、普通の出版関連本には出てこないような編集のごくごくこまかな日常がふんだんに出てくる。同じ編集のぼくでも、(ジャンルが違うから当たり前なんだろうが)へえと思ようなところがたくさんあるから、出版界に興味のある外部の読者には、とても新鮮かつ興味深いものに映るのではないだろうか。


副題の「エロ漫画」に引いてしまう人もいるだろうし、たしかにその手の記述も多いけれど、それだけでやめてしまうのはもったいない。別にエロ漫画に興味のない人にも読める本だし、むしろ、ぼくがそうであるように、門外漢のほうが楽しめるのかもしれない。ただ、くどいようだが読者を大いに選ぶ本なので、書店でぱらぱらやってから買うことをおすすめします。


『職業としての』は岩波新書にも吉野源三郎で同名本があるけれど、こちらは今はなき三一新書版。100均で見付けたので、持ってる気がするけど、まあいいやで買ったもの(こういう大ざっぱな買い方は、我が家の質量保存の法則的観点から実に問題の多い行為なのだが、まあ、いいや、探すより買っちゃったほうが早いもの)。


《編集者はなにより本好きでなければならない。》

《編集者とは、他人の褌で角力をとる。自分が本を書くわけではない。著者をみつけて、自分の意図にあう仕事をしてもらうのである。ここに編集者特有の知的能力がはたらく。》

まあ、当たり前っちゃあ当たり前だし、いまさら編集のお勉強というわけではない身にはふうんみたいになっちゃうところもあるんだけど、ほかにも《編集者は手がけた本の書評を書け》なんてのがあったりと、言ってることはいちいちまっとう&もっともで基本的。だが、(自戒を込めて言うのだが)ぼくの周りにもたくさんいる、その基本すら怪しい、ゴルフ三昧で本なんか読みやしないおやじ編集者たちに、今さらながらに読ませてみたい気がしないでもない。


でもなあ、なんかねえ、この上から見たような感じってやっぱり腹が立つんだよなあ。書名も大上段だしなあ。京大出て東大出版会入って共産党員で、って経歴もなんかなあ。ぜんぜん意識を共有できないっていうか、したくない、っていうか(なら読むな、って言われそうだが)。のっけから「今の若い者は」的な調子で、最近の編集者(校正者)はなっとらん、みたいな話でね、西田幾多郎も読めないじゃないか、みたいなことが書いてあるの。そのくせ、最初の段落には「不必要なぜい肉がない」なんて表現があったりしてさ。笑っちゃうよね、こういうの。若いやつぁ校正もなっとらんって話の前振りがこれじゃあさあ。これは著者のあなたの見落としじゃないの? それとも、この本の編集者・校正者のせいだって言いたいのか。


……はっ?!、いかんいかん、なんて下品な! 楽しい話好きな話ばっか書くがモットーの空犬通信に、こんな辛辣、というか生意気なことを書いてしまった! 塩山本の影響かしら。反省して全文ママとします。



◆今日のBGM◆

  • Les Dudek『Les Dudek』


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