空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

アイディアマンはもちろん、そうでない人も、書店の未来について考え(たりす)る

広義の「書店の未来」について書かれたもので、対照的といっていい内容と読後感の文章を、たまたま続けて2本読みましたので、ご紹介します。



まず前者、「第3章 アイディアマンと本屋の未来について考える」。内沼晋太郎氏と嶋浩一郎氏の対談です。「好きな本屋・嫌いな本屋」「本屋の未来」「お客さん同士のコミュニケーション」「新しい形態の書店」「実際に本屋をやるとしたら?」といった、書店に関心のある向きには気になるテーマが目次に並んでいます。




実際に読んでもらうのがいいので、とくに引用や紹介はしませんが、いやはや、お二人とも書店の店頭、書店の実際をよく見ています。嶋氏が好きな書店としてあげているのが、ぼく自身、阿佐ヶ谷時代には通いまくった、南阿佐谷にある書原だというのがいいではないですか。これだけで、話の続きが読みたくなりますよね。


対談中、書店がこれからどうしたらいいか、どうしたらおもしろくなるかについて、アイディアがぽんぽんとびだします。それらは、「対談編」とは別に、「アイディアまとめ編」として一覧になっていますから、対談読了後に、書店関係者なら、自分のお店を思い浮かべながら、一般読者ならひいきのお店をイメージしながら、これらのうち、どれなら実現可能か、どれが実現したら楽しいか、などと、ああでもないこうでもないと考えてみるのも一興でしょう。


ここに出ているアイディアのすべてに、全面的に賛同・共感するわけではありません。でも、いろいろな意味で刺激になりましたね。とくに、いまは、吉祥寺の大型書店出店問題で、書店関係者と顔を合わせれば、どうしよう、ああしようと、そんな話ばっかりしてる時期なもので、よけいに。なにより、書店をどうしたらいいか、って、考えてるだけで楽しいではないですか。ねえ。


そういえば、吉っ読の例会飲み会でも、こんなことしよう、あんなことできないかな、なんて話を、これまでさんざんしてきたのでした。今回のブックンロールだって、そういう流れで生まれてきたわけですしね。さすがに、我々は、お二人のようなアイディアマンではありませんから、こんなにたくさんのすてきな案をぽんぽんあげられるわけではありません。だから、比べたりしたら、怒られそうですが、やってることは同じだなあ、と、ちょっとうれしくなってしまったのでした。吉っ読でも、例会のたびに、とびだしたアイディアをストックしておいて、こんなふうにブログで披露したりしたらおもしろいかも、そんなふうにも思った次第です。


で、一方の後者。こちらは、同じく書店の今後、とくに減少傾向(とその先)についてまとめたものですが、楽しいアイディアに満ちていた内沼嶋両氏の対談とまったく違うノリで、書店好き、書店関係者にはあんまりな書き方がされているところもあったりして、驚いてしまいました(以下、いささか批判めいたことを書きますので、書店問題にご興味のある方だけお読みください)。



この「書店の減少傾向はいつまで続くのか」なる文章、書き手は、「出版流通コンサルティング」の冬狐洞隆也氏。聞かない名前です。出版・書店関係の著書はないようです。


書店数の推移を表にしてあげ、減少傾向を具体的な数字で示しています。もちろん、中身はたしかにその通り。っていうか、もう書店数の減については、業界紙誌はもちろん、朝日新聞など全国紙でもしょっちゅう報じられてますから、いまさらわざわざ指摘いただくまでもない。


で、この「出版流通コンサルティング」のプロの方が何を書いているのかというと、こんなふうに書いておられるわけです。


《大型書店(500坪以上)が1店できると半径5キロ以内の書店は転業か廃業の選択肢しか無くなって来た。今年も1,000坪以上の出店計画が散見されるが、近隣で50坪以下の書店はいずれ廃業の運命となるだろう。》


《日本は人口比からして書店数が多すぎる。適正は10,000店で十分と見ている。》《インターネット・ネット書店・中古本書店・レンタルコミック店・図書館と古書店・漫画喫茶と読者の選択肢は多種多様である。ここに電子書籍が加わると読者は苦労せずに出版物に接することが可能であることを新刊書店が理解していないだけのことである。》


《消費人口が減ってきているので書店経営が更に厳しくなると予想する、》(読点ママ)《書店数は10,000店まで減数が続くが、その中で生き残るのはどんな書店経営形態かは非常に興味がある》《どんな書店経営形態であろうと地域読者のニーズに沿った本の仕入能力を備えている書店のみが生き残るのは確かであろう。》


この駄ブログをご覧になっている方は、多少なりとも本の世界、書店の世界に興味のある方だろうと思うのですが、そのようなみなさんがお読みになって、これ、どうですか? 出版流通のプロが、すでにさんざんいろいろなところで言われていることを列挙し、それに自分なりの読みも、打開策も何もあげることもせずに、《適正は10,000店で十分》だの《新刊書店が理解していないだけのこと》だの、論じている対象に愛がないにもほどがある。書店を愛する方、書店に関わっている方がこんな文章を読んだらどう思うだろう。だいたい、「日本著書販促センター」を名乗るサイトが、こんな文章を載せる意味もよくわからない。


書店なんてもうダメじゃん、でっかいのがそばに来たらつぶれるに決まってるじゃん、電子書籍に読者が流れてるのに新刊書店は何もわかってないじゃん、って、そんなことは言われなくてもわかってるし、どんな素人だって言えること。だからどうしたらいいのか、どうすべきなのかを示すのが、「出版流通」の「コンサルティング」のプロのすることなんじゃないの? 全体に、きわめて不愉快な読後感しか残らない文章だけれど、とくにひどいのは、やはりこのくだりだろう。《インターネット・ネット書店・中古本書店・レンタルコミック店・図書館と古書店・漫画喫茶と読者の選択肢は多種多様である。ここに電子書籍が加わると読者は苦労せずに出版物に接することが可能であることを新刊書店が理解していないだけのことである。》


書き手の方にお聞きしたい。「新刊書店が理解していない」などと、何をもってそのように断じることができるのか。さらに。では、仮に「理解していない」のが事実だとして、それが何か書店の現場の人たちの落ち度か何かだというのだろうか。逆に、新刊書店関係の人が電子云々の事情を仮にきわめて正確に「理解」できているとして、じゃあ、どうすればいいというのか。「いやー、書店も多すぎるしさ、もう読者も電子電子って言ってるし、じゃあ、やめるか」って。そんなわけないじゃん。書店も、そこで売っている本を作っている版元も、人がやってるんだ、それでめしを喰ってるんだ、ということをまったくおわかりでないのでは。素人が言うならともかく、「出版流通コンサルティング」を肩書きにあげる方が、書店なんていくつあれば十分だなんて、書きっぱなしにするのは無責任過ぎる。業界の規模縮小にふれるならば、人やお金の問題についても、何か案を出してはいかがですか。


……すみません、あまりにも不用意なことが書かれているので、書店応援派として、つい興奮してしまいました。でも、あえて書き直さずに、このままアップします。書店好きの人、書店関係者の人には、今回紹介した2つの文章、どちらもぜひ読んでいただきたいです。


で、そのうえで、「書店なんて多すぎるんだから減らせばいいじゃん」と、「書店にできること、やったら楽しいこと、片っ端からあげてみようぜ」の、どっちが、いまぼくたちがとるべき態度なのか、どちらが、わざわざ文章にしてたくさんの人に読んでもらえるようにすべきことなのか、ぜひ一緒に考えていただけるとうれしいです。


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