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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

本を愛するということ……村山早紀さんの『ルリユール』

本の本、書店関連の本は、新刊案内や店頭で気になったものをまとめてときどき紹介しています。以前に取り上げたもので、別途くわしく紹介、としておきながら、イベントが入ったり、急ぎのネタがあったりで、すっかり遅くなってしまっているものがあります。2冊ほど、しばらく前に出た「本の本」関連で、印象的だったものをご紹介します。まずはこちらから。



ルリユール 書影

↑革背の古書を模したようなカバーがとてもいい感じです。


新刊案内でタイトルを見かけて以来、ずっと気になっていた本です。《謎のルリユール(製本)職人と弟子の物語。本への愛と人生の不思議な輝き》、こんな内容紹介を目にしてしまったら、『ルリユールおじさん』を愛読する身としては、装丁・造本全般に関心のある身としては、読まないわけにはいきませんよね。


で、楽しみに待っていたら、著者の村山先生に御本をいただいてしまいました。娘が大ファンの作家さんから本を送っていただいた、ということで、パパの株が格段にあがったことは言うまでもありません(笑)。村山先生、あらためて、ありがとうございました。


さて、そんなわけで、我が家に届いた『ルリユール』。すぐにも読みたいところをガマンして、ここは、本来の受取人である、我が家の本好き小学生が読み終わるのを待ってから手にしました。すると、我が子もパパも一気読み。親子で楽しめる物語でしたよ。もちろん、装丁・造本に関する予備知識などはまったく要りませんし、本好きならば誰でも楽しめる物語ですが、装丁・造本に興味のある人ならば、より深く物語を楽しめそうな感じでした。


作者の村山さんは、今回の作品のために、装丁・造本関連の資料をたくさん集めたと「あとがき」に書いていますが、わたくし空犬も、もともと、本、とくに物としての本にはひとかたならぬ思い入れのあるほうで、装丁・造本関係は昔から関心があり、目に付く関連本はたくさん買い集めてきました。そのような趣向の持ち主ですから、この作品で描かれている、本が自分だけの1冊に仕立て上げられる過程、壊れかけていた本が魔法のように甦る過程が楽しめないはずがありません。愛蔵の古書のいくつかを抱えて、自分でも黒猫工房(本書に出てくる製本工房)を訪ねてみたい気分にまでさせられました。(ただ、実際には、子どもの頃からの愛読書で、経年により、古び傷んでしまった本はあまりなくて、手元で、状態の悪いものは、どちらかというと大人になってから古書で買い求めたものが多いんですよね。その点は、(修復を要するものがなければ、それはそれでいいことなので、変な話ですが)自分でもちょっと残念な気がします……。)


「ルリユール」自体、お話のテーマとして、素材として、とても魅力的なものだと思うのですが、それをストレートに扱った児童書・絵本・YAは、そんなに多くはありませんね。このテーマで人に本をすすめる機会があったら、これまでは、絵本なら『ルリユールおじさん』、コミックなら『白い本の物語』をあげていましたが、これからは、YA〜一般の読み物ならばこの『ルリユール』をおすすめしたいと思います(ちなみに、『ルリユールおじさん』については、以前にこんな文章を書いたことがあります。「大人が読んでもおもしろい!理論社本 その6 『ルリユールおじさん』他」(吉っ読日記)


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