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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

新世紀、これを読め……ノンフィクションのガイド2種を紹介します

昔……というのは、20代のころまでかなあ……は、ほんとに、フィクションばっかり読んでいました。今でも好きな、本の本、書店の本などの出版・書店関連本や、生物・天文など、ごく限られた自然科学の本も読んではいたのですが、割合としては、ごくわずか。自分の読書生活の多くが、小説に占められていた、そんな時期がありました。


今でも、小説は好きですが、でも、現在の読書生活における、フィクションとノンフィクションのバランスは、完全に逆転とまではいきませんが、小説の数がぐっと減って、その分、ノンフィクションを手にとる率が高くなっています。とはいえ、手にするのが自分の関心のあるごくかぎられたジャンルだけであるのはあいかわらずなんですけどね。


さて、今年は、そんな、薄口のノンフィクション読みにとって、気になるガイドが2冊刊行されています。紹介しそこねていたので、まとめてふれます。



前者は、連続インタビュー、書き下ろし原稿、ブックガイドなどからなる、《石井光太責任編集によるノンフィクション・ガイド》。版元の内容説明に、《この1冊で、ノンフィクションの過去・現在・未来、その全てが見えてくる》とあるように、1980年代以降30年の動きをカバーするという意図で編まれたもの。1980から2011年のノンフィクション年表も掲載されています。


映画監督/作家の森達也さん他による「ノンフィクション連続講座」、稲泉連さん、高野秀行さん、柳下毅一郎さん他による「ノンフィクション・ベスト30」、「若手訳者競作! 海外ノンフィクション新潮流」などを収録。個人的に興味深かったのは、石井光太さん自身による書き下ろしルポ「雑誌編集者の軌跡 〜ノンフィクションが生まれる現場で働く〜」。


版元のサイトに掲載されている序文の一部を引きます、《ノンフィクションはジャーナリズムの延長でもなければ、インテリの知的玩具でもなければ、評論家や政治家の屁理屈でもない。学生から大人まですべての人間が夢中になって読めて、しかも真実の力によって人生観や世界観を変えていくだけの力を持つものでなければならない》。


この1冊でノンフィクションのすべてを、という意気込みが伝わってくる造りなのですが、「ノンフィクション・ベスト30」のなかには、フィクションに分類されている作品をあげ、これが自分にとってのノンフィクションだ、などとしているセレクトも見受けられ、このような造りである以上、しかたないことだとはいえ、多少書き手によるでこぼこが目に付く部分があるのもたしか。


それでも、ぼくのような、自分の興味のある限られた分野の本のことしか知らないノンフィクション読みには、参考になるところが大きく、そのようなでこぼこを補ってあまりある本であることは間違いなく、資料として手元に置いておきたい1冊だと思いました。


一方、『ノンフィクションはこれを読め!』は、おすすめ本紹介サイト(サイトの説明で、「書評サイト」ではない、とされています)HONZで、《1年間で紹介した500冊余りから150冊を厳選したユニークな書評集》(11/16付読売新聞書評「「HONZ」の書評集を刊行」より)。


インタビューにガイドに年表にと盛りだくさんだった『ノンフィクション新世紀』に比べ、こちらは、基本的に紹介文・書評を集めたものとシンプルな造り。取り上げられた本は、「世界史」「生物・自然」「サイエンス」などのジャンル別になっていて、それとは別に、巻頭に、ベスト3があげられています(収録の座談会によれば、《この1年で印象に残った自分以外の人のレビュー10本を、みなさんに選んでもらい集計し》たものだそうです)。ちなみに、1位は『理系の子』、2位は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』、3位『ナチスのキッチン』。


個人的に、ふだん縁の薄いジャンルの「日本史」や「医学・心理学」などで取り上げられている本に知らないものが多いのはともかく、「生物・自然」や「サイエンス」など、好きでそれなりにチェックしているはずのジャンルにも、未読というだけでなく、存在自体知らなかった書名があがっていたりして、見落としをチェックするのに、参考になりました。


ガイドとして参考になる本ではあると思うのですが、読んでいて気になった点も。先にあげたベスト3のうち、2位は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で、力の入った紹介文だとは思うのですが、ちょっと力が入りすぎているのか、この一文で完結してしまっている感じ。このような紹介文を読んでしまうと、それで満足してしまい、実際に本を手にとらなくてもいいと感じてしまう人もいるのではないか、そんなことが心配になりました。この本は、ぼくはすでに読んでいて、非常に感銘をうけた1冊なんですが、読了後だったからよかったものの、実物を手にする前にこの紹介文を読んでいたら、ちょっと興をそがれたような感じを持ってしまっていたかもしれません。


本書に収録されている紹介文全部がそういう問題をはらんでいるということではもちろんありません。そのような印象を受ける場合もあるかもしれない、ぐらいのつもりでお読みになるといいかもしれません。


すべての書評・紹介文・感想文について言えることだと思いますが、取り上げる本のあらすじなどの詳細についてどこまでふれるかは非常に難しい問題ですよね。ぼくもこの空犬通信では、基本的に、本の紹介に他愛のない感想を添える以上のことはしていません。いわゆる「書評」はしないし、できない。要するに技術的に自分の手にはあまるからで、こんな本があるよ、おもしろかったよ、以上のことはうまく言えないからなんです。だから、上の感想も、その程度のものだと思ってください。


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