先日、千葉方面の書店を少し回ってきましたので、うち、初訪問となる山下書店南行徳店 を紹介したいと思います。(以下、写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。12月半ばごろの様子で、店内の様子は変わっている場合があります。)
最寄りは地下鉄東西線の南行徳駅で、南口を出てすぐです。以前、ブックス英光堂があったところに居抜きでオープンしたお店で、43坪。サイズといい、立地といい、店構えといい、まさに駅前の本屋さん、という感じですね。
このお店、一見、ふつうの駅前本屋さんですが、本八幡にあった、椿書房(現、ときわ書房)のUさん(現在は、ご結婚されてTさん。以下「Tさん」とします) が働いているお店だと言えば、書店好きや出版関係者には反応される方も多いのではないでしょうか(ここで、彼女の店頭での姿を撮影させてもらってくればよかったと思い当たり、我ながらがっかり) 。Tさんと、店長さんにお話をうかがいました。
お店は、11月半ばのオープンで、ぼくが訪問したのはちょうどひと月少しがたったところ。店長さんもTさんも、お店がようやく落ち着いてきた、というところ、まだまだこれから、と謙遜していましたが、とてもオープンしたてには思えない感じに、売場ができていましたよ。
↑レジに貼られたフロアマップは、店長さんの力作だとか。(この後、まさに実例を目にすることになるのですが) それほど大きなお店ではなくても、棚になれていないお客さんは気づかずに帰ってしまったりするもの。こまかくジャンルが書き込まれたマップがあるのはいいですね。中は、レジにいるサンタ。右は入り口入ってすぐ脇のフェア+新刊棚。TさんのPOPもありました。
↑ちょうどクリスマス前の時期だったので、児童書棚はクリスマス仕様。こちらにも、サンタがいて、折り紙製です(残念ながら、ピンぼけ……) 。棚3本ほどの、決して大きくはないスペースですが、こまかなディスプレイが効いています。
↑文芸平台で、いちおしの1冊だという本とその周りを撮ろうとしたのですが、お客さんが入らないよう引いているうちに、なんだか妙なアングルでピントもダメダメ(泣)。写真には撮れませんでしたが、文芸の棚には、1段だけですが、本の本・書店の本のコーナーもあり、Tさんが取材に協力した『本屋さんで本当にあった心温まる物語』も並んでいました。右は、お店に来てくれたという作家さんの色紙。
↑山下書店での買い物は久しぶりだったので、カバーをかけてもらいました。購入本は、店長さんのいちおしとPOPの立っていた、第8回酒飲み書店員大賞受賞作『キネマの神様』。
Tさんは、前のお店を離れてから今回のお店で働き始めるまでに、少し間があいているんですが、とても書店員ブランクのある人とは思えない丁寧な接客。しかも、仕事をしている様子が、本当に楽しそうで、傍で見ているだけで、なんだかうれしくなってしまうような感じでした。「感じのいい書店員さんがいるお店」と地元のお客さんたちにお知られるようになるのは時間の問題でしょう。(Tさんの接客については、またあとで少しふれます。)
店長さんとのやりとりもなんだかあったかい感じで、お店全体の雰囲気がとてもいいのが、短時間いただけで伝わってきました。駅前にこういう雰囲気で、しかも夜遅くまであいているお店があると、地元の本好きの方はうれしいのではないでしょうか。
店長さんの話によれば、(新規店にはよくある悩みですが)まだまだ認知が十分にされていない感じだとのこと。同じ場所に書店があり、屋号切り替えの期間も短かったため、まったく異業種の店舗の跡地などにできた新規店よりはお客さんの認知という点では有利だと思うのですが、それでも、あらこんなところに書店が、というお客さんはいるようです。お店の周囲を歩いてみた感じでは、看板もわかりやすく出ていますし、「本」の大きな字も目に入ってきます。ふだんの人の流れがわからないので、なんとも言えませんが、お店自体にこれといって改善すべき点など見当たりませんから、地元の方に浸透していくのを地道に待つしかないのかもしれません。
南行徳駅は、北口側、駅からちょっと離れているようですが、TSUTAYA南行徳店もあります。位置関係的に、どの程度競合するのかよくわかりませんが、品ぞろえ的にはやはり意識しているとのことで、たとえば、沿線に高校もあり、周囲に塾などもある、駅前のこの立地で、あってもおかしくない学参がないのは、競合店との関係も考えての絞り込みのようです。
駅前の本屋さんらしいたたずまいと、学校・会社帰りに寄ってひとまわりするのにちょうどいいサイズ、バランスのいい品ぞろえ、感じのいい書店員さんたちと、ふだん使いのお店にぴったりの要素がそろったお店です。
今回は、千葉方面の書店回りということで、この後、西船橋、船橋、津田沼を回りました。この後は、残念ながら、タイミングが悪かったようで、行く店行く店で、ことごとく担当の方にふられ、さんざんな結果となってしまいました。でも、山下書店での短時間の訪問が効いていて、それもぜんぜん気になりませんでした。まあ、仕事的にはそんなことでは困るんですけどね(苦笑)。
↑丸善津田沼店とTSUTAYA津田沼店でもらってきた書店フリペたち。いっときは、あちこちで見られた書店フリペコラボも、波が少し落ち着いてしまったのか、やめてしまったお店もありますが、こちらの2店は今も大きく展開中。2店で、これだけの種類(他にも、まだありました) が手に入ります。
ここで、ちょっと山下書店や今回の千葉の書店回りからはずれますが、Tさんのことをもう少し。
【“山下書店南行徳店で、すてきな出会いが”の続きを読む】
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今年も残すところあとわずかということで、本の本・書店本のうち、紹介しそびれていたものや最近購入したものを、いくつかご紹介します。
発売前に、紹介記事 を書いた『わたしのブックストア あたらしい「小さな本屋」のかたち』。書名の通り、新刊・古書を問わず「小さな本屋」さんにスポットをあてた1冊で、《店主が3人もいる京の町家書店、亀が八匹&望遠鏡もある本屋、呑みながら読む古本酒場……店というより友人のような、新しくも懐かしい「小さな本屋」を全国を渡り歩いて紹介する、新感覚ブックストアガイド》という内容の本です。
著者の「小さな本屋」さんへの思いは、帯の文言《街の小さな本屋がおもしろい》や、著者にとっての「小さな本屋」さんがどういうお店なのか、新刊書店と古書店を区別せずに取り上げたのはなぜか、といったことがわかる「はじめに」によくあらわれています。
そういう、「小さな本屋」さんへの思いに満ちたいい本なだけに、もったいないなあと思われる点も目につきました。1つは、この書名でこの分量なら、中途半端に(と、あえて書きます) ブックカフェを取り上げることはなかったのではないか、その分、あと数店「小さな本屋」さんを紹介できたのではないか、ということ。もう1つは、雑誌の特集やムックではないのだから、ピースの又吉直樹さんのインタビューはいらなかったのではないか、ということ。本と言えば、書店と言えば又吉さんという感じになってしまっているので、そうした新聞・雑誌・Webの記事などとの差異化という点でも、特別対談に登場している岡崎武志さん&小山力也さんのような、本のプロパーの人、または書店人を登場させたほうがよかったのではないでしょうか。
ブックカフェは単独の本・ムックなども出ていますし、又吉さんもこのテーマでは現在もっとも頻繁に目にするお名前です。それよりも、まだ知られていない「小さな本屋」さんたちに、より頁を割いて欲しかった、さらにスポットをあててほしかった、そんなふうに思いました。
ちなみに、ブックカフェのパートでは、西荻窪のブックカフェ、beco cafeまで取り上げられています。取材がリニューアル前だったようで、リニューアル後の、書籍販売が始まってからの様子にふれられてなかったのは、お店にとっては残念でしたね。
気になる点もあげましたが、「小さな本屋」さんだけでまとめられた貴重な書店ガイドであることはまちがいなく、書店の紹介パート自体は充実していますから、書店好きにはおすすめです。本書については、刊行記念の期間限定ブログ「『わたしのブックストア』とわたし」 もありますので、そちらも併せてどうぞ。
ちょっと気取った感じの英文だらけの目次やレイアウトといい、内容といい、ふだんはまったく縁のないというか興味対象外の雑誌だと思っていた講談社の『HUgE』。これまで一度しか購入したことないんですが(ちなみに、アナログレコード特集号) 、今回の書店特集「GO! BOOKSTORE! 本屋が呼んでいる」はいいですね。図版も読むところも多いし、取り上げられている書店もエリアも幅広く、よくある雑誌の書店特集とは一線を画しています。こんなにしっかりした特集だとは思いませんでした。
神保町や下北沢など、日本の書店街だけでなく、ポートランド、ブルックリン(以上、アメリカ)など、海外の書店が紹介されているのもうれしいところ。これで、780円は安い。書店好きにはおすすめの1冊です。
東京メトロの車内の吊り広告で「書店」の文字が目に入りました。「TOKYO METRO NEWS 」は、東京メトロの駅で無料配布されている冊子で、12月号の特集は「書店のいごこち。」。オールカラーで、特集は6頁。SPBS、ユトレヒト、Jスタイルブックス、ブルックリンパーラーなど、7店が紹介されています。メトロ利用の書店好きは、配布物のラックのチェックを忘れずに。ちなみに、サイト でe-bookが公開されていますから、東京近郊以外の方はそちらをどうぞ。
『BOOKS ON JAPAN 1931-1972』は、副題にある「日本の対外宣伝グラフ誌」をまとめたもので、ビジュアルのすばらしさに圧倒される1冊。朝日新聞 、読売新聞 他の書評でも取り上げられているので、くわしくはそれらをどうぞ。少し前の号ですが、『週刊読書人』11/30号に、本書の刊行記念対談として写真評論家の金子隆一さんと森岡書店店主で、この本の著者である森岡督行さんとの対談が掲載されています。
【“わたしのブックストア、HUgE、たそがれ堂……最近買った本の本・書店本たち。そして来年のも少し”の続きを読む】
明日から冬休み。今年はなんと9連休です。遠出もせず、のんびりの予定でおります。小売りの現場はそうはいかないでしょうから、書店員の知り合いが多い身としては、ちょっと申し訳ない感じもするのですが……。
冬休みの予定を簡単に。毎朝連投している出版・書店関連の業界情報ツイートですが、12/29から1/6までの間は、お休みします。その間、よほど大きな業界関連ニュースが出てきたときは別ですが、平日の朝やっているような、業界情報をまとめて連投するのは、年明け、仕事始めまでお休みにしたいと思います。
冬休みぐらいは、読書の時間をたっぷりとらなくちゃ、ということで、この空犬通信も、12/31から1/6まではお休みします(途中、あけましておめでとうございます、とか、年初の1冊に何を読んだ、ぐらいは書くかもしれませんが) 。
来年の予定も少しだけ。空犬通信の記事のうち、1〜2か月に1度ぐらいのペースで案件がまとまると記事にまとめていた、新刊書店の開店・閉店・改装などに関するレポート記事ですが、閲覧数も反応もあまりないので、前回の記事で最後にするつもりで、そのように書いたところ、たくさんの撤回・継続リクエストをいただくことになってしまいました。
ただの一覧に簡単なコメントを添えてあるだけに見えるかもしれませんが、裏取りや関連記事のチェックなどもひと通り行っていますので、あのかたちにまとめるのは、実はけっこう手間がかかっているのです……。開店閉店情報の収集自体は継続していますので、その扱いについては、もう少しうまいやり方がないかどうか、考えてみます。
なお、予告だけしておきながら、なかなかあげられずにいる熊本・盛岡・仙台の書店回りレポートについては、冬休みの期間を利用してフィニッシュしますので、年明けに「必ず」アップします。(取材にご協力くださったみなさま、遅くなってしまい、申し訳ありません。)
というわけで、だらだら書きで言い訳の多い駄ブログにお付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。どうぞ良いお年を。2013年が、出版・書店業界にとって、本に関わるすべての人にとって、すばらしい1年になりますよう。来年もよろしくお願いします。(って、これで終わりみたいな書き方になってしまいましたが、明日あさっても、たぶん更新します;苦笑)
今日は仕事納めでした。少し早めに会社を出て、いくつか懇意の書店さんに寄って年末の挨拶をしていこうと思ったら、途中で雨にふられてしまい、書店回りはほとんどはたせなかったんですが、今日で閉店の流水書房青山店だけは、なんとか時間を作り、訪ねてきました。(以下、いつものようにお店の方に断って撮影させていただきました。お客さんを避けながら短時間で撮ったため、写真がいつも以上にぼけぼけですみません……。)
↑地下鉄・青山一丁目駅直結の新青山ビル(青山ツインビル)、西館2階のお店。50坪ほどでしょうか。商業ビル内のお店としては、使い勝手のいいサイズですね。コンパクトなお店ながら、品ぞろえはなかなか個性的で、棚の様子が印象に残るお店でした。
↑文芸の棚の様子。段ボールが積まれていたり、ごっそり空いている棚があったりなど、店内外のあちこちに閉店直前の光景が見られましたが、この文芸の棚だけを見ると、とても、この日に閉まってしまうような感じには見えませんでした。
たしかに棚は冊数的にはゆるめではあるのですが、棚の空きと本のバランスを考え、面を多用しつつ、POPなど紙類をうまく配し、1冊1冊をとても丁寧に並べているのがわかるディスプレイになっているためです。棚が、なんというか、すごく立体的に見えるのです。
単なる偶然でしょうが、冊数的には限られた本が並ぶ文芸の棚に、ぼくが大好きな「星」の本や、「鳥」の本がたくさん並んでいるではないですか。うれしくなってしまいました。それぞれの関連本から1冊ずつ購入。
右の本は、『鳥の意思、それは静かに』。詩集で、版元は港の人。厳密な意味では「鳥」の本ではないのですが、この書名と、装画、そしてこのたたずまいを見て、中も確かめずに買ってしまいました。この後、文芸のご担当のAさんにもお会いできて、ごあいさつしたんですが、そのAさんと初めてお会いしたのが、港の人のTさんが吉祥寺で開いた会だったのです。Aさんが手がけた棚から、そのAさんにお会いするきっかけになった会を主催した版元の本を選んだことになるわけですね。短時間で選んだにしては、我ながら、いいセレクトだったんじゃないかと、後になって、あらためて思いました。
しかし。こんなにいいお店が、青山のビル内という好立地で、しかも、周囲に強力な競合店・大型店があるわけでもないのに、やっていけないとは……。本当に残念です。ふだんは別のところにいらっしゃる商品部のYさんが、閉店業務のためでしょうか、お店にいらっしゃったので、久しぶりに再会、ごあいさつできたのは、幸運でした。お店の話を少しうかがうことができたのですが、やはりビル自体にかつてのようなにぎわいがなく、お客さんがなかなか上にあがってきてくれない、という感じだったそうです。青山といえば流水書房というイメージの、昔からの利用者や書店好きはともかく、一般のお客さんにとっては、地下鉄の駅を出てから、2階までの動線が、慣れていないとややわかりにくいことも、ふらりと気軽に寄れるのが重要な、駅近くの書店としては、マイナスに作用してしまっていたのかもしれません。
流水書房青山店の関係者のみなさま、おつかれさまでした。30数年間の長きにわたって、青山で、このようなすてきなお店を続けてこられたのは、本当にすごいことだと思います。ありがとうございました。
最近(といっても、しばらく購入本の紹介、読了本の紹介をちゃんとしていなかったので、けっこう前に読了したものも混じっていますが、ともかく) 読んだ本のなかから、ポピュラーサイエンスものでおもしろかったものを3冊、紹介します。
『理系の子』の子は、先に紹介した、『ノンフィクションはこれを読め!』でも、1位にあげられていた1冊。版元の内容紹介によれば、《科学に魅せられた少年少女の感動の実話/世界中から優れた中高生の自由研究が集まり、競うコンテストISEF。出場するのはどんな子どもたちなのか? 天才少年少女のドラマ》というもの。紹介文にあるISEFは、国際学生科学フェア(International Science and Engineering Fair)の略で、Intelがスポンサーになった世界最大の科学コンテスト。「科学のオリンピック」などと呼ばれているそうです。
その科学界のオリンピックに挑んだ少年少女たちを取材したノンフィクションなんですが、とにかく、登場する子どもたちのアイディアやバックグラウンドがドラマに満ちていて、理系的な知識がまったくない読み手であってもあきることなく読めてしまいます。下手なまとめをして予断を与えたくない内容ですので、これ以上書きませんが、興味を持たれた方は、ぜひ実物にあたっていただきたいです。個人的には、今年の、ポピュラーサイエンスジャンルのなかでは、ベストの1冊です。
次の『世にも奇妙な人体実験の歴史』も文藝春秋ですね。文藝春秋は、意外に、というと失礼かもしれませんが、早川書房と並んで、文系の読者でも楽しめる科学読み物を、読みやすい翻訳と手に取りやすい価格で出してくれる、ポピュラーサイエンス好きには貴重かつうれしい存在ですよね。
『理系の子』にも、やや変人がかった登場人物はいましたが、こちらの登場人物は、もう変人ばっかり、どいつもこいつも絵に描いたようなマッドサイエンティストで、笑ってしまいます。
《性病、コレラ、寄生虫……人類の危機を救った偉大な科学者たちは、己の身を犠牲にして果敢すぎる人体実験に挑んでいた! 自身も科学者である著者は、自らの理論を信じて自分の体で危険な実験を行い、今日の安全な医療や便利な乗り物の礎を築いた科学者たちのエピソードを、ユーモアたっぷりに紹介します》という内容です。「ユーモアたっぷり」とありますが、文章も内容も、ほんとにおもしろいです。次々にマッドな連中が出てきて、次々にびっくりなことをやらかしてくれるので、最後まであきさせません。
引用したいエピソードや文章だらけなんですが、最初のほうから少し引いてみましょうか。《生前どんな立場にあった人であれ、私が解剖したいと思えば、手に入らない人物はいません》。なんかすごいでしょ。これが、《外科を商売から科学へと変えた》とされている人物の台詞ですから。全編この調子で、ほんとにすごい本です。
ただ、マッドはマッドでも、SFなどに登場する、宇宙を征服したいなどと妄想するタイプのマッドサイエンティストではなく、この本に出てくるのは、人間を、病気や事故から救いたいという、徹底した利他主義に貫かれている人物ばかりであるのがすごいところ。科学の歴史が、陰のヒーローたちによるチャレンジの歴史であったことが、ようくわかる1冊。
最後は、天文好きなら、書名と表紙だけでもわくわくさせられる『金星を追いかけて』。内容は、《100年に一度の天体観測イベント、金星の日面通過。1761年、150人もの天文学者による人類史上初の地球規模の共同研究の顛末を描く感動のドキュメント》というもの。
科学的ミッションのために、敵艦にいつ遭遇するともしれぬ戦時の海を、観測地まで、何千何万キロも、安全性も設備も万全とは言い難い当時の船で渡っていき、当時の不十分な機器類で観測する天文学者たちの姿には、うたれます。とくに前半は、書名からは想像もつかないような、ドラマチックな冒険談が展開されていて、圧倒されること必至。
『世にも奇妙な人体実験の歴史』や『金星を追いかけて』のような本を読むと、図鑑や入門書では一行で説明されているようなこと(たとえば、金星までの距離) 、我々が当たり前だと思って受け入れていることの多くが、実は、傍からみると、愚行や奇行にしか見えないような、すさまじくも強烈な試行錯誤の積み重ねの歴史の上に成り立っていることが、ようくわかります。
そして、『理系の子』のような本を読むと、そうしたチャンレンジが過去のものではなく、今もなお現在進行形で進んでいること、そして、そのチャレンジャーたちのなかには、中高生のような若者が含まれていることもわかります。
個人的なおすすめ、という意味では、1冊だけなら、『理系の子』をすすめたいですが、科学に関心のある方には、3冊すべてをおすすめしたいです。別に、それぞれに関連のある話ではありませんし、個々に読ませる力を持った本たちなので、セットである必然性はないのですが、続けて読むと、さらに発見や感動も増すかもしれませんよ。
ブックファーストの件、事前の噂がまったく聞こえてこなかったので、報道を見て驚きました。まずは、目に付いた関連記事をあげます。
うち、日経の記事を引きます。《出版取次大手トーハンが、書店チェーンのブックファーストを買収することを発表した。資本・業務提携を前提に、阪急電鉄が保有するブックファーストの全株式を取得。ブックファーストは、トーハン傘下で最大の書店チェーンになる》。出資、ではなく、全株式の取得、なんですね。なんと。
新文化の記事から、ブックファーストの歴史と近況にかかわる部分を引きます。《1996年、阪急グループの書店部門として1号店の川西店を開店。現在は42店舗をチェーン展開、売上高は約200億円(2011年度決算時)である。今年4月には阪急リテールズから独立し、(株)ブックファーストとして再スタートしていた》。
ブックファーストは、店舗によって帳合いが異なったり複数だったりしますが、帳合については、同じく新文化の記事によれば、《帳合取次会社はトーハンほか、日販、大阪屋などであるが、今後トーハンに帳合変更される見通し》。
Business Newsの記事には、今回の買収の目的と今後について、こんなふうに書かれています。《トーハンは今後、ブックファーストと協力して新たな書店像を描き、またノウハウの活用で既存の取引書店のサービスを向上。出版業界の発展に貢献すると発表している》。「新たな書店像」、ですか。うーむ。
報道で気になったのは、MSN産経の以下のくだり。《トーハンが本格的な書店チェーンを傘下に収めるのは初めて》。今年の夏ごろに一般紙でも報道されていますが、ブックファーストの前に、トーハンがらみではすでに、明屋書店の件がありましたね。関連記事「明屋書店、トーハンから出資 4割で筆頭株主に」 (6/7 日本経済新聞)から引きます。
《愛媛県地盤の書店チェーン、明屋(はるや)書店(松山市)は出版物取次大手のトーハンと資本・業務提携することを決めた。6月下旬にトーハンが約4割の株を保有する筆頭株主となる。明屋書店は経営体質の強化と同時に、トーハンの情報網を生かして好立地場所への出店につなげる》。
ブックファーストは株式100%譲渡の「買収」で、明屋書店の件は株式4割保有の「資本提携」、ということで、だから話は別だ、ということなのでしょうか。記事の真意が、事実誤認なのか、明確な区別によるものなのかがちょっとよくわかりませんが、いずれにしても、記事中の《本格的な 書店チェーンを傘下に収めるのは初めて 》というくだりは、関係者の方々にしてみれば、ちょっと穏やかではないですね。
ブックファーストは全42店舗で、首都圏近郊と大阪・兵庫他の関西圏中心の展開。対する明屋書店は、フランチャイズを含めると96店舗、九州・四国・山口が中心のローカル展開ではありますが、店舗数こそ多くはないもの東京・静岡・北海道にもお店があります。もちろん明屋には、ブックファーストの新宿や梅田のお店のような大型店こそありませんが、これらの数字と展開エリアを見るかぎり、ブックファーストが本格的で、明屋書店が本格的でない、というのはちょっとどうかな、という気がします。明屋書店をトーハン傘下の書店と考えるとすれば、《本格的な 書店チェーンを傘下に収めるのは初めて 》は不正確だし、かつ明屋書店の関係の方にも失礼にあたるのでは、と気になってしまいました。ちなみに、日経の記事では、《トーハンは現在、明屋書店(松山市)など書店数社を傘下に抱える。ブックファーストが最大の書店子会社になる》となっています。
電鉄系出自の書店が、電鉄資本を離れ、経営形態の変更を経て、取次傘下に、という流れは、リブロのそれを思わせるところもありますね(ちなみに、リブロは、2003年に日販(日本出版販売)が株式をパルコから90%取得し買収) 。リブロは、池袋本店の人文書で、ブックファーストは旧渋谷店の(J文学時代の)文芸書で、と、一時はそれぞれのフラッグシップ店がジャンルの代名詞となるほどの隆盛を誇った、という共通点もあります。
ブックファーストについては、新宿店は仕事でもプライベートでも定期的に顔を出しているお店の1つですし、梅田店も、大阪に行くときには必ず訪問するお店です。我が地元、吉祥寺には駅ビル、アトレに2つのお店があり、何かと縁のあるチェーンの1つです。知り合いの書店員さんもいます。なので、個人的に、ブックファーストという書店チェーンに、今回の件どのような影響をもたらすのかは、とても気になります。門外漢には報道にある以上のくわしい事情はまったくわかりません。ただ、店頭で働く書店員のみなさんに、経営形態の変更に伴うしわ寄せや負担がいかないこと、また、取次の傘下になることにより、チェーンとしての独自性が失われたりすることがないことを祈るばかりです。
昔……というのは、20代のころまでかなあ……は、ほんとに、フィクションばっかり読んでいました。今でも好きな、本の本、書店の本などの出版・書店関連本や、生物・天文など、ごく限られた自然科学の本も読んではいたのですが、割合としては、ごくわずか。自分の読書生活の多くが、小説に占められていた、そんな時期がありました。
今でも、小説は好きですが、でも、現在の読書生活における、フィクションとノンフィクションのバランスは、完全に逆転とまではいきませんが、小説の数がぐっと減って、その分、ノンフィクションを手にとる率が高くなっています。とはいえ、手にするのが自分の関心のあるごくかぎられたジャンルだけであるのはあいかわらずなんですけどね。
さて、今年は、そんな、薄口のノンフィクション読みにとって、気になるガイドが2冊刊行されています。紹介しそこねていたので、まとめてふれます。
前者は、連続インタビュー、書き下ろし原稿、ブックガイドなどからなる、《石井光太責任編集によるノンフィクション・ガイド》。版元の内容説明に、《この1冊で、ノンフィクションの過去・現在・未来、その全てが見えてくる》とあるように、1980年代以降30年の動きをカバーするという意図で編まれたもの。1980から2011年のノンフィクション年表も掲載されています。
映画監督/作家の森達也さん他による「ノンフィクション連続講座」、稲泉連さん、高野秀行さん、柳下毅一郎さん他による「ノンフィクション・ベスト30」、「若手訳者競作! 海外ノンフィクション新潮流」などを収録。個人的に興味深かったのは、石井光太さん自身による書き下ろしルポ「雑誌編集者の軌跡 〜ノンフィクションが生まれる現場で働く〜」。
版元のサイトに掲載されている序文の一部を引きます、《ノンフィクションはジャーナリズムの延長でもなければ、インテリの知的玩具でもなければ、評論家や政治家の屁理屈でもない。学生から大人まですべての人間が夢中になって読めて、しかも真実の力によって人生観や世界観を変えていくだけの力を持つものでなければならない》。
この1冊でノンフィクションのすべてを、という意気込みが伝わってくる造りなのですが、「ノンフィクション・ベスト30」のなかには、フィクションに分類されている作品をあげ、これが自分にとってのノンフィクションだ、などとしているセレクトも見受けられ、このような造りである以上、しかたないことだとはいえ、多少書き手によるでこぼこが目に付く部分があるのもたしか。
それでも、ぼくのような、自分の興味のある限られた分野の本のことしか知らないノンフィクション読みには、参考になるところが大きく、そのようなでこぼこを補ってあまりある本であることは間違いなく、資料として手元に置いておきたい1冊だと思いました。
一方、『ノンフィクションはこれを読め!』は、おすすめ本紹介サイト(サイトの説明で、「書評サイト」ではない、とされています) HONZ で、《1年間で紹介した500冊余りから150冊を厳選したユニークな書評集》(11/16付読売新聞書評「「HONZ」の書評集を刊行」 より)。
インタビューにガイドに年表にと盛りだくさんだった『ノンフィクション新世紀』に比べ、こちらは、基本的に紹介文・書評を集めたものとシンプルな造り。取り上げられた本は、「世界史」「生物・自然」「サイエンス」などのジャンル別になっていて、それとは別に、巻頭に、ベスト3があげられています(収録の座談会によれば、《この1年で印象に残った自分以外の人のレビュー10本を、みなさんに選んでもらい集計し》たものだそうです) 。ちなみに、1位は『理系の子』、2位は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』、3位『ナチスのキッチン』。
個人的に、ふだん縁の薄いジャンルの「日本史」や「医学・心理学」などで取り上げられている本に知らないものが多いのはともかく、「生物・自然」や「サイエンス」など、好きでそれなりにチェックしているはずのジャンルにも、未読というだけでなく、存在自体知らなかった書名があがっていたりして、見落としをチェックするのに、参考になりました。
ガイドとして参考になる本ではあると思うのですが、読んでいて気になった点も。先にあげたベスト3のうち、2位は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で、力の入った紹介文だとは思うのですが、ちょっと力が入りすぎているのか、この一文で完結してしまっている感じ。このような紹介文を読んでしまうと、それで満足してしまい、実際に本を手にとらなくてもいいと感じてしまう人もいるのではないか、そんなことが心配になりました。この本は、ぼくはすでに読んでいて、非常に感銘をうけた1冊なんですが、読了後だったからよかったものの、実物を手にする前にこの紹介文を読んでいたら、ちょっと興をそがれたような感じを持ってしまっていたかもしれません。
本書に収録されている紹介文全部がそういう問題をはらんでいるということではもちろんありません。そのような印象を受ける場合もあるかもしれない、ぐらいのつもりでお読みになるといいかもしれません。
すべての書評・紹介文・感想文について言えることだと思いますが、取り上げる本のあらすじなどの詳細についてどこまでふれるかは非常に難しい問題ですよね。ぼくもこの空犬通信では、基本的に、本の紹介に他愛のない感想を添える以上のことはしていません。いわゆる「書評」はしないし、できない。要するに技術的に自分の手にはあまるからで、こんな本があるよ、おもしろかったよ、以上のことはうまく言えないからなんです。だから、上の感想も、その程度のものだと思ってください。
(すぐに記事にするつもりが、書き始めてみると、思ったよりもむずかしくて、ずいぶん時間が経ってしまいました……。)当blogを読んでくださっているという方から、コメント欄で質問をいただきました。
「編集という仕事とって大事なことはなんだと思いますか」 「これからの出版業界はどんなふうになっていくと思いますか」
「出版とは」「編集とは」といった大文字の話はどちらかというとあまり得意ではないほうで、むしろぼくが聞いてみたいぐらいなんですが、出版界を志望されているという方からの質問だったので、これはちゃんとお答えしたいなと思い、少し考えてみました。
さすがに、コメント欄では長文は厳しいし、ふだんここに書いているようなこととも関わることなので、本文の記事にしました。出版関係者の方々、とくに先輩のみなさんが見たら、何を青臭いこと、ばかなことを、と言われそうなことを書きますが、あくまで個人の意見ということでご勘弁ください。
「編集という仕事とって大事なことはなんだと思いますか」
おもしろい人に会ったり、おもしろい話を聞いたり、おもしろそうなテーマを思いついたりしたときに、そのこと、その人ことを、いろんな人に知らせたいなあ、とか、このおもしろい話をいろんな人に聞いてほしいなあ、読んでほしいなあ、とか、そんなふうに思える感覚とか気持ち、ではないかと思います。
それは、ブログやツイッターなどのSNSで、本の感想や自分の思いを拡散したりシェアしたりするのとどう違うのか。そんなふうに聞かれそうですが、自分の感想や思いを、一方的にネットに流すのと、あるテーマにもっともふさわしい書き手を見つけ、その書き手の主張なり思いなりにもっともふさわしい形態の書物にまとめて、商品として(これが重要です) 世に問いたい、というのとはまったく別の行為だと思います。
どちらがいい悪いの問題ではもちろんありません。ぼくも両方やってますからね。こんなふうに、blogやツイッターに何事かを書き散らしても、編集者としてのやりたいことが充足されるわけではありません。この2者はまったく別の行為だということです。
「これからの出版業界はどんなふうになっていくと思いますか」
どうなっていくのかなあ。この秋には、AmazonのKindleもとうとう発売され、最近では、電子書籍リーダーやタブレット関連のニュースをWebで見かけない日はない、というような状況になっていますね。
いまはまだ、純粋に商売として成立していないかもしれないけれど(電子「だけ」で食べていけている著者や出版社がどれだけいるか/あるかという意味で) 、電子化はさらに進んでいくでしょう。「本を読む」という行為のもっとも一般的なかたちが、「小型の電子機器類で電子書籍を読む」になるのは、もしかしたら本好きの我々が考えていたよりも早いのかもしれません。
ここで、電子書籍の市場予測とか、紙の書物の生き残りのことを、素人のぼくが論じるつもりはありません。というか、そんな大きなこと、よくわからないし(苦笑)。
個人的な意見として、確実に言えるのは、どのような出版形態・読書形態になろうと、「本」と「本」をとりまく世界は、自分にとってはおもしろいものであり続けるだろう、ということです。
何がどのようなかたちで読まれたり消費されたりするにせよ、その「何か」の中身を作ったり、複数の人が同じ条件で同じ環境でふれられるようにするための仕事はなくならないと思います。だから、出版業界は、規模もかたちも大きく変わるだろうけれど、そこで行われている出版の本質のようなものはなくならないと思います。というか、そのように信じて仕事をしています。
2問とも、ぜんぜんちゃんとした答えになってませんね……。大きな問題を簡単にまとめるのに、向いてないもので、これぐらいでカンベンしていただきたいと思います。
話はこれで終わってもいいんですが、以下、ちょっとだけ補足します。(だいたい想像がつくと思いますが、この「ちょっと」が長いんですよねえ(苦笑)。以下、長ーい妄言、独り言のようなものですので、いつものだらだら節が大丈夫な方だけどうぞ。)
【“「編集という仕事とって大事なことはなんだと思いますか」”の続きを読む】
書店員のみなさま
本日、クリスマスイブを含む3連休の最終日。書店員のみなさんは、ギフトラッピングの嵐で、きっと大変な思いをされることだろうと思います。1年でもっとも大変な1日になるかもしれませんね。みなさんが包装を手がけたその本を手にする人たちの幸せな表情を想像しながら、大変な一日を切り抜けていただければと思います。
本作りにかかわる出版関係者の1人として、そして、本好きの一人として、みなさんには心からありがとうと言いたい気持ちです。
明日はクリスマスイブですね。イブを含むこの3連休、書店員のみなさんは、きっとギフトラッピングでてんてこまいでしょうね。ほんと、おつかれさまです。
本好きのみなさんは、この季節、家族や友人や恋人に本を贈ったりするんでしょうか。ふだんから本の話を書いたり話したりばっかりしているせいで、おそらく、プレゼントなんてしなくても本をたくさん買ったり読んだりしているのだろう、下手にプレゼントなんかしたら重なってしまうに違いない……そんなふうに思われているからでしょうか、本をもらう機会は昔からあんまりありません。でも、いいんです。本はもらうよりあげるほうが好きなんです。昔から、本をあげるのは大好きなんですよね。
そんな、本をあげるのが好きな身には、クリスマスは最高の機会の1つ。家族持ちなので、クリスマスと言えば、やはり我が子へのプレゼント。誕生日と並んで、1年の最大の関心事の1つです。娘の好みや欲しいものについて、ふだんの会話からヒントを収集しつつ、早くから、今年は何をあげようかと、あれこれ考えながら過ごします。
ところで、クリスマスと言えば、この季節、毎年読み返している本があります。その本のことを、夏葉社の新刊『冬の本』の、「吉っ読」参加店の特典として配布している「ブックトラック」増刊に寄せた文章に書きましたので、以下に引用します。
毎月が十二月であってほしい
十二月生まれなので、誕生日とクリスマスという、子どもにとっての二大イベントがいっぺんにやってくる十二月は、子どものころから一年でいちばん好きな月だ。毎月十二月だったらいいのになと、小学生のころなど、本気で思っていたものだ。今も少し、思う。
さすがにこの年になると、十二月になったからといって、子どものころのようなわくわく感を感じることはなくなってしまったが、子を持つようになって気づいたことがある。クリスマスプレゼントは、もらうのもいいが、あげる側になるのも楽しいものだということ。今年はどんな工夫を凝らそうか、何をあげようか……子どもの喜ぶ顔を見たくて、そんなことをあれこれ考えるのが、こんなに楽しいことだとは思わなかった。
そんな、にわかサンタ気分を味わうことになる十二月に、毎年、必ず読み返している本がある。トールキンの『サンタ・クロースからの手紙』だ。自分の子どもたちに向けて、トールキンがサンタになりきって書き続けた絵入りの楽しい手紙。それをまとめた絵本である。ふるえながら書いたような独特の手書き文字や、お世辞にもうまいとは言えない、しかし味のあるへたうまのイラストもすばらしいし、サンタの助手をつとめる北極熊など脇のキャラもいい。
サンタになりかわって子どもに手紙を送る……簡単なことのように思えるが、出来合のカードを買ってきて、サインしておしまい、ならともかく、この分量この内容の手紙を送り続けるのは並大抵のことではない。子どもが幼いときに数年続けるだけだとしても、子どもたちを楽しませようという本物の気持ちと強い意志がないとできないことなのに、トールキンはそれを二十年の長きにわたって続けたのだ。驚くほかない。書いたトールキンもすごいし、それを受け入れ続けた子どもたちもすごいと思う。
『サンタ・クロースからの手紙』を読み返しながら、さて、今年のクリスマスはどうしよう、と考える。絵入りは無理かもしれないけれど、ちょっと長めの、物語仕立ての手紙を娘に書いてみるのもいいなあ、などと思ったりする。
毎年、そのようなことを考えている気がするが、まあ、気のせいだろう。
数日前のこと、仕事中に、娘から電話がかかってきました。「パパ、あのね、前に欲しいって話した『○○○』だけど、あれ、サンタさんに頼んだから、パパ、買わなくていいからね」。
娘はまだ小学生で、サンタさんの存在を信じていたりするものですから、こういうリクエストになっちゃうのですが、サンタ=パパとしては大変です。というのも、このときの娘のリクエスト本、品切れのコミックだったんです。
こんなブログを書いているぐらいで、しかも本業は出版関係者ですから、本を探すのは得意なほうです。でも、やっぱりジャンルによっては、得意不得意があります。今回のリクエストは、当方に縁の薄い少女もののコミック。超のつく人気作や有名作品ならまだ探しやすいのですが、そういう作品ではありません。しかも、品切れになったのも割に最近で、中途半端な古さ。つまり、すごく探しにくい作品なのです。猶予は1週間。パパサンタにはかなり厳しい注文です。この1週間は、古書店のマンガコーナーと、ブックオフのコミック棚、そればっかり見てた気がします(苦笑)。
クリスマスには、毎年、本はプレゼントしています。もちろん、ふだんは市販の本からよりすぐりのものを選んでプレゼントしているのですが、毎年同じやり方だとつまらない。というわけで、今年は、いくつか用意したクリスマスのプレゼントの1つに、自作の本を入れてみました。
娘と動物(わが家にいるぬいぐるみたち)を主人公にした、オリジナルのストーリーです。それを自分で書いて、書籍用紙にプリンタで刷って、自分で製本しました。表紙は仮フランス装で、スピンもついています。本業のそれとは違って、文字通り「ゼロ」からの本作りは大変だったけど、でも、本を手作りするのは、とても楽しい作業でした。
親からのプレゼント、それも、手作りの品を喜んでくれるなんて、今だけのことでしょう。毎年、プレゼントを用意しながら、今年が最後かもなあ、と、そんなことを思ったりしています。
明日の晩は、多くのお父さんたち同様、ぼくもサンタ役をつとめます。去年のクリスマスはどんなだったかなと、昨年娘がサンタさんに書いた手紙を読み返してみました(娘は、毎年、サンタさんに、手紙とプレゼントを用意しているのです。もちろん、それをパパが持っているのは内緒です) 。その手紙には、プレゼントへのお礼のことばなどとともに、帰り道、寒いから気をつけてくださいね、などと、帰路を気遣うことばが書いてありました。昨年のクリスマス以来何度も読んでいる手紙なのに、あらためて読み返すと、思わず涙が出ます。帰り道も何も、サンタ=パパは、すぐ隣の部屋に帰るだけなんだけどね……。オリジナル本を作るのは、けっこう大変だったけど、でも、このような手紙を読むと、苦労して作ってよかったなと、そんなふうに思えました。
ちなみに、娘がサンタさんにリクエストした、品切れコミック、なんとか無事に入手できました。きれいにクリーニングして、かわいいカバーをかけて、包装紙にくるんであります。明日、枕元に届けます。きっと、またサンタさんへの手紙が用意されていると思うのですが、今からそれを読むのがとても、とても、楽しみです。
クリスマス、たくさんの子どもたちが、すてきな本を手にすることができますように。
昨日に引き続き、夏葉社の新刊『冬の本』、新刊書店店頭での展開の様子を紹介します。今回は、神保町から。
東京堂書店神田神保町店の3階で、「『冬の本』フェア」が開催中です。早速見てきましたよ。(写真は、すべてお店の方に断って撮影したものです。写真は12/19のもので、フェアの様子は変わる場合があります。)
↑入り口の案内は、12/19の昼時点では、「近日開催」となっていましたが、すでに始まっています。
↑こちらが「「冬の本」フェア」。エスカレーターを上がり、右に曲がって、すぐのところです。『冬の本』と、なかでふれられている「冬の本」たちがずらりと並んでいます。
↑パネル・POPなどのディスプレイにも工夫がこらされ、美しく仕上がっています。
↑台の下には、ご覧のように、冬にまつわる詩と写真をプリントアウトしたものが下がっています。
↑フェア台には、夏葉社のこれまでの刊行物も並んでいます。
『冬の本』の世界と夏葉社の魅力をぎゅっとまとめた、すてきなフェアになっていますので、神保町にお越しの際はぜひのぞいてみてください。
夏葉社の新刊『冬の本』、BOOKSルーエで購入しました。
以下に、吉祥寺・三鷹の書店4店の集まりである「吉っ読」参加店の店頭での、『冬の本』の展開の様子をご紹介します。内容や特典については、先日の記事 をご覧ください。(啓文堂書店吉祥寺店・三鷹店の写真は、先日の書いた『冬の本』の紹介記事 に追記としていたものですが、切り出して、こちらにまとめ直しました。)
↑『冬の本』の店頭展開、「吉っ読」参加店のいちばん乗りは、啓文堂書店吉祥寺店。ご覧の通り、特典のフリペ「ブックトラック増刊号『吉祥寺の冬の本』」と一緒にシュリンクされた状態で並んでいます。(12/13の様子です。)
↑啓文堂書店三鷹店の様子です。文芸エンドと、三鷹・吉祥寺関連書籍や地元在住作家の作品などを集めた、同店が力を入れている地元棚の2か所で展開中。文芸のほうでは特典フリペ「ブックトラック増刊号『吉祥寺の冬の本』」でふれられた本も一緒に並べられているようです。(12/15の様子です。)
どちらの棚からも売れているそうで、早くも2桁を売り上げたとのこと。すでに追加をしたといいますから、いいペースですね。
↑リブロ吉祥寺店の様子。発売からまだ1週間足らずですが、こちらもすでに2桁を売上げたとのこと。ということで、ご覧の通り新刊台の在庫があとわずかになっていますが、この撮影をしているときに、ちょうど夏葉社の島田さんが納品に来ていましたから(偶然過ぎる(笑)) 、しばらくは在庫も大丈夫そうです。
『冬の本』、文芸のランキングに入っています。夏葉社の本をランキングの棚で見ることになるとは。感慨深いです。
↑リブロ吉祥寺で「冬の本」と言えば、こんなフェアも開催中。「FROM BOOKBOOK TO YOU 『ぶくぶく』が選ぶギフトにオススメの本」。ギフトラッピングされた本や、本に添えるのによさそうな小物などが並んだ、楽しい棚になっています。フリペ「ぶくぶく」もお忘れなく。
↑流通の関係で、入荷が「吉っ読」参加店のなかでは最後になってしまったBOOKSルーエもがんばっています。本は、2階文庫の新刊台(左中)、1階入り口脇の新刊棚(右)の2か所で展開中。1階のほうは、写真にはありませんが、POPもつけるそうです。
神保町の東京堂書店でのフェアも始まっていますし、他にも決まっている書店フェアがあるといいますから、まだまだ数字は伸びそう。自分が作った本でもなんでもないのですが、うれしいことです。
最近、書店関連本が続けて刊行されているのは、この空犬通信でも何度もふれてきたことですが、時期を前後して出版されることはあっても、同じ版元から同時に3点が刊行される、というのはかなりめずらしいケースではないでしょうか。
書店好きとしては、書店のことをきちんと紹介してくれる本、書店の魅力を伝えてくれる本は大歓迎です。多少、刊行が続いても、内容が重なっても、別にいいと思います。
今回の3冊、内容を見ると、新刊書店だと、東京堂書店、往来堂書店、山陽堂書店など、大好きなお店の名前があがっていますし、古書店やブックカフェにも、気になるお店好きなお店が取り上げられています。個々にはそうなんですが、ただ、全体の印象としては、なんというか、既視感があるセレクト、という感じがどうしてもしてしまいます。
知り合いの書店員さんとこの本の話になったとき、その書店員さんは、「またか……」と漏らしていました。この反応が、すべて、という気がします。まさに、「またか」という感じをどうしても受けてしまう、そんなお店のセレクトに思えてしまうのです。東京堂書店、往来堂書店、山陽堂書店はともかく、その他のセレクトを見ると、どうしても、こういうタイプのお店だけが「本屋」さんではないのになあ、と、そんなことを思ってしまうのです……。
3冊のうち、『TOKYO BOOK SCENE』は、書店本の切り口としてはおもしろい本だと思うのですが、でもやはり、B&Bなど、3冊のうち複数で取り上げられているお店があったりするのが、疑問に思えてしまい、どうも本そのものを純粋に楽しむことがしづらい感じです(お店がどうこう、ではなく、取り上げ方の問題として) 。ほかにも紹介したくなるような本屋さんは、いっぱいあるのに……。
ただ、これはあくまで個人の感想なので、書店に関心のある方は、ぜひ実際に店頭で本を手にして、どのようなお店が、どのように取り上げられているかを、見てみてください。
それぞれの内容にこまかくふれることはしませんので、サイトの内容紹介だけ引いておきます。
まず、『TOKYO本屋さん紀行』は《この本では、本をより多くの人に見てもらうために工夫を凝らした棚作りをしたり、他所にはない本が置いてあったり、居心地のよさにこだわったりと、「ここに来たらきっと何かに出合える」と感じられる新刊書店&古書店22店を紹介しています。丁寧に作られた本屋さんに足を運んで、棚に並んだ本を眺め、手にとって選ぶという時間が、とても豊かなものだと気づかせてくれる1冊です》。
『TOKYOブックカフェ紀行』は、《本とコーヒー。この2つの組み合わせは、多くの人々を魅了します。本の街、神保町にすてきな喫茶店がたくさんあるように、本と喫茶は昔から静かに結ばれていたのでしょう。とりわけ、コーヒーでなくてもいいのです。本とチャイ。本とビール。あなたを満たすお気に入りの1杯と、1册。それらが与えてくれる至福の時間は、目まぐるしく過ぎ去る日々の中で、何ものにも代えがたいものになるはずです。この本では、そんな時間を演出する、素晴らしいブックカフェ25店を紹介しています。至福の時間へといざなう大人のガイドブックです》。
『TOKYO BOOK SCENE』は、《本書は、“新しい読書体験のビギナー”に向け、東京近郊の「本を介したコミュニケーションの場」を紹介するブックカルチャーガイドです。気になる個性派本屋、おしゃれなブックカフェはもちろん、それぞれ課題図書を読んできて、感想を話し合う読書会、珍しい本との出会いに誘う古本市など…。これまでは読書と言えば、個人で楽しむものでしたが、最近はSNSなどを通じて“みんなで本を楽しむ”新しい読書スタイルの提案などもしています。本好きの方はもちろん、新しいブックカルチャーに触れてみたい方、知的な趣味を探している方などにも、ぜひ手とっていただきたい一冊となっています》。
西荻窪beco cafeで、ほぼ毎月開催している出版・書店関連テーマのトークイベントbeco talk、第5弾のご案内です。来年2月に、こんなイベントを開催します。
beco talk vol.5 公開講座こんな店、知ってる? 「本屋さんか」とミニコミの時代 日時:2013年2月15日(金) OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30) 出演:どむか(書店マニア) 、空犬(吉っ読・空犬通信) 80年代に発行されていた幻の書店ミニコミ『本屋さんか』。その作り手に、現代版&blog版「本屋さんか」=空犬通信の主催者が、書店テーマの情報発信の「これまで」と「これから」の話をうかがう、そんな内容のトークイベントです。
『本屋さんか』については、以前にこんな記事 を書いていますので、よろしければ、そちらもご覧ください。
今回のトークイベントは、以下のような三部構成を考えています。 1)「本屋さんか」の時代 2)あちこちの書皮、あちこちのお店 3)書店ミニコミの今後
「「本屋さんか」の時代」では、ミニコミ「本屋さんか」が発行されていた時代、1980年代の書店と書店をとりまく状況についての話を、現在blogで似たようなテーマを扱っている立場から、わたくし空犬が、当時、どのように取材したり、情報発信したりしていたのか、あれこれ質問をしながら、どむかさんから聞き出したいと思います。
どむかさんといえば、書皮(=書店のブックカバー)コレクターとしても有名です。「あちこちの書皮、あちこちのお店」では、書皮マニアでもあるどむかさんに書皮コレクションの一部を見せていただきながら、「本屋さんか」時代、どのように書皮を収集したのか、収集のために訪問した書店、思い入れのある書店の思い出を混ぜて語っていただきます。
「書店ミニコミの今後」では、「本屋さんか」のようなミニコミと、現在我々が行っているようなFacebookやTwitter、blogなどのデジタル媒体での情報発信、さらに、一部の書店で熱心に行われている書店フリペなどを比較し、こうしたミニコミ・ブログ・フリペなどで書店関連情報を取り上げることの意味や、今後そのような紹介方法がどうなっていくのか、について、お互いの「書店情報発信観」のようなものを語り合います。
企画した自分が言うのもなんですが、書店に関心のある書店好きのみなさんには、非常に興味深い内容になるのではないかと思います。また、blog他で書店についての文章を書いてみたいという情報発信側の立場の方にとっても、いろいろと参考にもなるかと思います。そして、こうした書店マニアの訪問を受ける書店の立場のみなさんにとっても、書店マニアが、お店のどこをどんなふうに見ているかを知る、貴重な機会になるのではないかと思います。
予約は、本日、12月16日(日)から受付開始です。beco cafe に、電話・メール・ツイッターなどで直接お申し込みください。(追記:予約終了しました。)
イベント終了後は、いつものように、お店の閉店まではドリンクタイムとして、出演者とお客さんのみなさんでお酒を飲みながらおしゃべりを楽しめる時間ももうけています。イベントでは、質疑応答の時間はもうけませんので、ぜひトーク後の時間に出演者に話しかけたり質問したりしてください。また、beco talkは、出版・書店関係の方が来てくださることが多いようですので、ぜひ同業同士、会場で楽しく情報交換していただけるとうれしいです。もちろん、業界外の方も大歓迎です。
それでは、2/15(金)、西荻窪beco cafeで、みなさまのお越しをお待ち申し上げております。
予定のない週末というのはいいものです。今日は終日、このようなクリスマスアルバムを聴きながら、家でのんびりと過ごしましたよ。
3枚とも今年の新譜。まずは、昨日ディスクユニオンで購入した鈴木祥子さんの《キャリア初》だというクリスマス・アルバム『Merry Christmas From BEARFOREST RECORDS〜ベアフォレストのクリスマス〜』。いいなあ、これ。1曲目からぞくぞくします。
↑ジャケはこんな感じ。若々しい祥子さん、とても年上の女性には見えません。裏ジャケも、封入ポストカードもやさしい表情でgoodです。
クリスマス音楽好き(って、そんな人種がいるのかどうか知りませんが) ならすぐにぴんとくると思いますが、このジャケ、ブルーノートのクリスマスアルバムのオマージュですね。
↑こちらが、『Yule Struttin': A Blue Note Christmas』。Chet Baker、Dianne Reeves、Lou Rawls、ブルーノートアーティストがずらり。ギタリストには、Stanley JordanとJohn Scofieldの参加がうれしいところ。
↑2枚を並べてみた。
曲目などの詳細は、公式ブログ 他をご覧ください。ちなみに、鈴木祥子さんは、最近はAmazonなどの大型ショップの流通はなしで、限定生産、限られたショップだけで扱う、というスタイルになってきているようで、このアルバムも初回プレスのみ、取り扱いはディスクユニオン他数店となっています。取り扱い店の一覧はこちら 。
以前に取り上げた鈴木祥子さん関連の記事 をお読みくださったという祥子さんファンの方がコメント欄で教えてくださったおかげで、無事に購入することができましたが、こうして紹介するよりも前に、早くも完売になってしまったそうです。まだ店頭在庫があるかもしれませんので、気になる方は、急いだ方が良さそうです。
ちなみに本盤、上の、CDと並べた写真でもおわかりの通り、ジャケがシングル盤(ドーナツ盤)サイズで、昔なつかしいソノシートが封入されています。もちろん、CDに未収録のものが入っています。アナログ好きとしてはこういう趣向もうれしいところです。
次のTracey Thorn、こちらも初のクリスマスアルバムで、先日、タワーレコード吉祥寺店で購入したもの。
ぼくは輸入の通常盤を買ったんですが、アナログ重量盤を含む、こんなデラックスエディション もあるみたい。
Tracey Thornはいいですね。派手さはまったくない、というか、はっきり言って地味なくらいの声であり歌い方であり、なんですが、それでも、というか、だからこそ、いつまでも聴いていたくなりますね。
最後のMindy Gledhillもタワーレコード吉祥寺店の視聴コーナーで聴いて知り、購入したもの。この声、この歌い方……ものすごく好みでした。たしか、お店のPOPには、カーディガンズが好きな人はぜひ、みたいなことが書いてあったんだったかな。まさにそんな感じ。ウィスパーボイス系の女性ヴォーカルが大好きな者としては(その意味では、カーディガンズのファーストは私的殿堂入りの1枚です) 、ほんと、たまらんです。『Anchor』も手に入れましたが、こちらもgoodでした。ジャケのセンスもいいですね。
ウィスパーボイス好きには強くおすすめのシンガーです。
12/27:メール他で情報をお寄せくださったみなさま、ありがとうございました。会場、無事に決まりました。後日、あらためて「ブックンロール2013」の詳細につき、この空犬通信でご案内します。
今年の6月に荻窪のライブハウスで開催しました、本と書店と音楽のイベント「ブックンロール」。おかげさまで、たくさんの方にお集まりいただき、盛会となりました。ご参加くださったみなさま、応援してくださったみなさま、あらためて、ありがとうございました。
来年2013年も、今年と同じ6月に、ブックンロールを、同様の主旨、同様の規模で開催したいと考えております。イベントの内容や出演者、スタッフは問題なさそうなんですが(とはいえ、出演者は未定、交渉すらしていないのですが;苦笑) 、会場をどうするかで頭を悩ませています。
今年のブックンロールは、キャパ50人の会場に、主催者の予想を大幅に上回る150人超(関係者・出演者含めての数字) の方がお集まりになり(!)、多くの方が、会場に入れない、トークや演奏が聞こえないという事態になってしまいました。
来年は、そのような事態を避けるため、広めの会場をと思っていますが、予算や、イベントの内容の関係で、なかなか適当なところを見つけられずにおります。
ブックンロールの会場は、以下のような条件に見合うところということで探しています。
キャパは、着席で100〜150人程度 場所は、できれば中央線沿線、中野〜三鷹間で(中央線以外の場合でも、新宿・渋谷などから乗り換え1回程度で行ける都内近郊) バンド演奏・トーク・飲食が可能な場所 PAなど音響機器・ギターアンプ・ドラムセットなどの楽器が持ち込みではなく、会場に用意 されている 平日夜のレンタル料が上限で15万円ぐらい(安ければ安いほどうれしいです) 来年6月の金夜が空いている これまで「ブックンロール」を開催してきた荻窪のライブハウス、ルースターノースサイドは、夕方から深夜の閉店まで貸し切りで、3万円弱という、超破格&超良心的な値段の場所でした。ここまで安価な場所はなかなかないにしても、できるだけ同じような条件で、サイズだけ大きいところが見つかれば……そんなことを思いながら、あちこちを探している状況です。
これまでにもblogには何度も書いてきました通り、ブックンロールは、自分たちのお金もうけのためにやっているイベントではありません。スタッフはもちろん、出演のみなさんにもただでご協力いただいていて、入場料も経費をのぞいた全額を寄付に回している、そんなイベントです。来年もそのような運営形態を維持したいと思っているのですが、そのためには、どうしても安価に借りられる場所が必要です。
場所は、演奏がありますので、ライブハウスが最適かと思いますが、貸し会議室、パーティルーム、公民館、レストラン、書店などに併設のセミナールームやホールなどで、上の条件を満たせるところがあれば、業態は問いません。
適当な会場が見つからないと、今回と同じ荻窪のライブハウスを利用することになりますが、その場合、今年のような事態を避けるには、予約制にするなど、ご参加いただくお客さんの人数を制限するやり方をとらざるを得ません。もしくは、最悪中止か。そのどちらかを検討しなくてはならないのですが、できれば、どちらも避けたいと思っています。いろいろな方に、気軽に、自由に来ていただけるようなイベントにしたいと思っております。
もしも適当な場所をご存じの方、または、ご自分の関係する場所などを提供いただけるお貸しいただけるという方がいらっしゃいましたら、ご一報いただけませんでしょうか。
これまでのブックンロールに関しては、こちら をご覧ください。
みなさまからの情報、切にお待ちしております!
昼休み、いつものように東京堂書店の「軍艦」を眺めていたときのこと。なぜか、香山滋の本が新刊台に、それも2冊も並んでいます。探偵者として反応しないわけにはいきません。
この『妖蝶記』『海から来た妖精』、タイトルを見ただけで香山ファンはすぐにピンとくるでしょうから説明不要かと思いますが、元は、今なき牧神社から「異色絵本叢書」という叢書の2巻目、3巻目として、函入りの上製本で出ていたものですね。セレクトも造本もいいので、たまに開きたくなる本です。
↑これが、牧神社版。B5判函入り上製で、篠田栄子さんの絵が表紙と本文に使われています。
好きな作家の復刊は、もちろんうれしいもの。とくに、香山滋は、主要作が手に入りにくく、いま手軽に読める文庫や単行本となると、出版芸術社の「ふしぎ文学館」の1冊『月ぞ悪魔』ぐらいしかありませんからね。だから、復刊は歓迎です。でも……。
それにしても、この装丁は、いくらなんでも、あんまりじゃないでしょうか……。上の書名に、紀伊國屋書店BookWebのリンクを入れてありますので、書影を見てみてください。要するに、元の版の本体のカバーから装画と編者・版元の表記をとっただけのもので、イラストがあった中央部から下があいてしまってバランスが悪いことこのうえない。元は、円に近いイラストが入っていたので、書名がアーチを描いているのは、イラストに呼応させる意図だったと思われるんですが、それを考えずに、単にイラストをとってしまったから、書名のアーチもなんだか妙な感じ。
タイポグラフィだけで処理するにしたって、もうちょっとやりようがあったろうし、なにより、なんでこんな色にしてしまったんだろう。牧神社版も本体のカバーの地は青だけど、ボールの箱に入っていて、そのボールに青系の紙がかかっているのと合わせてあったのに、そういうのを一切無視して、元のカバーの色だけ残すのは乱暴すぎ。しかも、下巻のオレンジはいったいどういう意図で選ばれたのか(牧神社版のカバー、書名の色がオレンジだが、もしかしたら、そこからとったとか……うーん) 。やる気がないにもほどがあると言わざるを得ません。店頭で手にして、くらくらしてしまいました……。
版元は沖積舎。ついこの前まで、東京堂書店の1階でフェアをやっていましたね。初版オリジナルの覆刻もいくつも出している版元で、それこそ、足穂・乱歩・久作といった探偵ものの重要作家・重要作品の覆刻を出しています。この本の場合は、牧神社版は作品としては厳密な初版オリジナルではないものの、このような中途半端なかたちで覆刻でする理由がよくわかりません。造本やイラストの扱いなど、(牧神社版の)元のかたちが採算的に難しかったのかもしれませんが、それにしたって、もう少しなんとかできたんじゃないでしょうか。だって、ふつうのミステリー読みが気楽に手を出すような本ではないわけで、香山の名前に反応する、それなりの読者(つまり、マニアっぽい人) を相手にすることになるのは間違いないのだから。
もうひとつ気になることが。今回の沖積舎版、店頭で手に取った際に、あきらかに牧神社版がベースになっているのがすぐわかったので、クレジットを確認してみたんですが、元版が牧神社「異色絵本叢書」であることが奥付にも、その対向ページにも記載されていなかった気がするのです。ぼくの見落としかもしれませんから、再度確認して、もしこちらの間違いであれば、後で修正しますが(翌日あらためて確認してみましたが、やはりどこにも記載がないようでした) 、もし本体のどこにもまったくふれられていないとしたら、問題はないんでしょうか。編者も装画も収録作品もタイトルも、あきらかに同じなのに……。
大好きな作家の本、それも、それが復刊であれ、新刊など出ることがあまり期待できない作家の本だっただけに、ほんと、残念です。空犬通信では、あまり楽しくない話題は取り上げたくないのですが、香山滋のファンとして、また探偵小説読みとして、あまりにも残念な復刊のされ方だったので、抗議の意をこめて、あえて記事にしました。不快に思われた方がいたら、すみません。
(以下の記事は、「SFミュージアム」が始まって、割にすぐに書き、ちょっと整理してからアップしようと思ったまま、失念していたものです。同じフロアで開催されていた「どうぶつ社」のフェアも紹介したかったのに、終わってしまいました……。全部書き直すのもなんですし、どうぶつ社のことにもふれたいので、少しだけ手直しして、アップします。2か月前に見たときのことと、ごく最近見たときのことが混じった、妙な文章になっていますが、どうかご勘弁ください。)
今回は、新刊書店のユニークなフェアを紹介します。楽しみにしていたSF好きも多いことでしょう。いよいよ始まりましたね。「SFブックミュージアム」 (MARUZEN&ジュンク堂書店)。
場所は、ジュンク堂書店池袋本店の7階、特設会場。SFのレギュラー棚がある3階ではありませんのでご注意を。いつも「作家書店」をやっている場所ですね。
内容については、上の公式サイトのほか、関連の記事を見ていただくのがいいでしょう。
朝日新聞の記事を引きます。《会場は「日本SF巨匠の部屋」「海外SFスタンダード」「サブカルSFの標本」「SFコミック往年の名作」などテーマごとに陳列され、オンデマンド出版のため書店ではほとんど見られない『小松左京全集完全版』(城西国際大学出版会)や『しずおかSF 異次元への扉』など地方の出版物も並べられている》。記事に、知らない本があがっていたりして、気になります。
《夢枕さんは「これだけSF関連本が集まると壮観です。まだ読んでいなかった名作もあって、改めてSFのすそ野の広さを感じました」と話した。山田さんは「若い世代がSFを読むきっかけになって欲しい」と話した》。
ダ・ヴィンチの記事には、《池袋本店7階特設会場にびっしりとSFの本が並ぶという、点数、量ともに、国内では過去最大規模のSF書フェアとなる》とあります。「過去最大規模」というのがうれしいですよね。
産経の記事からも。《米のロバート・A・ハインラインやフィリップ・K・ディックの近未来SFのそばに、日本の小松左京の長編群や星新一のショートショート。ジュンク堂書店池袋本店(東京都豊島区)に10月から設置された「SFブックミュージアム」には、SFWJ会員らが選んだ約1千点の本が並ぶ。「SFの世界を一望できる品ぞろえ。長時間滞在する熱心なファンも多い」(同店)。目を引くのは、手塚治虫の「鉄腕アトム」といった漫画やライトノベル系の作品まで網羅していること。50周年企画として来年以降、全国の書店を巡回するユニークな棚はそのまま戦後の文化史と重なり合う》。
実際に見てきましたが、7階奥の一角がSFだらけになっていて、圧巻です。SF好きならうれしくなることまちがいなしのスペースになっていましたよ。最近のSF関連刊行物はもちろん、定番を集めた棚もあるし、ビジュアルの棚ももちろんあり。ホラーやファンタジーなど周辺ジャンルへの目配りもきちんとされています。ショーケースがあって、ひと昔前の、ジュブナイルSFの古書が展示されていたりします(展示は非売品) 。展示は月代わりだそうですから、一度見たファンも、行くたびにのぞいてみるといいかもしれません。
ぜひ実際の店頭の様子をご覧いただきたいところですが、遠方で見られない方もいるでしょう。開催当初は準備中とされていた電子版もオープンしていて、店頭の様子を見られない方でも、このフェアの雰囲気を十分に味わえる、情報量の多いサイトになっています。こちら 。時期をずらして他店舗でも開催されるようです。他店の開催時期などについては、先の朝日新聞の記事のほか、チラシにも詳細があります。サイトからもPDFをダウンロードできるようです。
会場には、SF関連の葉書やらチラシやらがいろいろ置いてあったので、片端からもらってきました。
↑『SF挿絵画家の時代』(本の雑誌社)の葉書。本(右)も、もちろん並んでいましたが、すみません、ジュンク堂書店ではなく、BOOKSルーエで買いました……。発売前から楽しみにしていた本で、SFアート好きにはたまらない1冊です。ジュンク堂書店のPR誌『書標』 12月号の「著書を語る」には、『SF挿絵画家の時代』の著者、大橋博之さんが登場しています。ちなみに、特集は「祝 開店! 大竹聡書店」。
↑写真にも書影が見えていますが、今年刊行された、彩流社の「現代作家ガイド」シリーズ、『カート・ヴォネガット』の表紙イラストを手がけたYOUCHANさんのチラシ。YOUCHANさんのサイトには、「SFと文学」 というコーナーもありますよ。
↑そのYOUCHANさんが表紙イラストを手がけている、瀬名秀明さんの『SF作家 瀬名秀明が説く! さあ今から未来についてはなそう』のチラシ。ぼくが最初に行ったときにはサイン本が置いてありました。
↑創元SF文庫が50周年を迎えることを伝えるチラシ「創元SFも50周年ですよ、奥さん。」おめでとうございます。
↑「第52回日本SF大会 こいこん」 の案内チラシ。詳細は公式サイトをどうぞ。
↑こういう本が置いてあるところがさすがですよね。先の朝日新聞の記事でもふれられていた『しずおかSF 異次元への扉』(財団法人静岡県文化財団)。今年6月に出た本ですが、地方出版ということもあり、この本も、叢書「しずおか文化新書」の存在自体も知りませんでした。いかめしい版元名ですが、こうした地方で刊行されている地元密着型の叢書のなかにSF関連のタイトルが含まれている、というだけでもめずらしいですよね。
というわけで、ジュンク堂書店池袋本店の「SFブックミュージアム」。SF者はもちろん楽しめると思いますし、SFのことはよくわからない知らない、というビギナーがSFってどんなものかのぞいてみよう、という感じで気軽に立ち寄ってみるにもいいと思います。並んでいる本はもちろんですが、上に紹介したような配布物なども忘れずにチェックしてみてください。池袋店でのフェアは4/30まで。SF者はぜひ、一度と言わず、何度も駆けつけてください。おすすめです。
ジュンク堂書店池袋本店、同じ7階では、もう1つ、気になるフェアが展開中でした。「どうぶつ社の36年」(12/10で終了) 。
【“SF者には至福の空間……ジュンク池袋の「SFミュージアム」”の続きを読む】
先日の記事 で少しふれましたが、夏葉社の新刊が、本日発売になりました。
↑先日の写真は束見本と色校でしたが、こちらは、実物です。
夏葉社と言えば、一般にはおそらく渋い復刊ものを手がける出版社というイメージが強いのではないかと思いますが、今回は、全編書き下ろしのワンテーマアンソロジー。それだけでも新鮮ですね。執筆者は84人。このタイプの本を初めて手がける人が集めたとはにわかに信じがたいような、とにかくすごいメンバーが目次にずらりと名をつらねています。執筆陣の詳細は、夏葉社のサイトには一覧がないので、上の書名のリンク先を見てみてください(CINRA.netの紹介記事) 。
内容ついては、夏葉社のblogから島田さんの文章の一部を引かせてもらいます。 《冬の日に、書店で本を買い、抱えるように、寒い夜の中、家に持って帰る。 本をテーブルの上に置くと、外の冷気で、本の表紙が少しだけ冷たい。 ストーブの火をつけ、あたたかい飲み物を用意しながら、パラパラとページをくる。 お湯が沸く。 コーヒーを読みながら、本を読み始めて、眠たくなる。 なんというか、こういうのが幸せだと思います。 「冬」と「本」はよく似合うし、冬は、よりいっそう、「1冊の本」が愛おしくなります。 「冬」と「1冊の本」にまつわるエッセイが84本。 84とおりの「冬の本」。
島田さんによれば、本日、12/12が取次(JRC)の搬入日なので、JRCと契約している書店だと早ければ翌日に、それ以外だと1週間ぐらいかかるだろう、かかるだろうとのことです。
↑書店向け注文チラシ。
刊行記念ということで、いくつかイベントやフェアも予定されているようです。いちばんの話題はこちらでしょうか。
閉店後のフロアを使ってのスペシャルライヴ。出演は、島田さんが大好きだというシンガーソングライターの前野健太さん。いいですねえ。「冬の本」の刊行を記念するのにぴったりの、冬の夜のイベントになりそうですね。
↑チラシ。
三省堂書店はイベントにも熱心な書店で、ときどき、こうした閉店後のフロアを使ったイベントをしていますね(って、書きながら、今回のライヴが、フロアを使うものなのかどうか、よく知らないのですが) 。以前に、ある作家さんのトーク&朗読イベントに参加したことがありますが、周りの照明が落ちたフロアの、通路を使ったイベントスペース部分だけに控えめな照明があたっていて、周りを見ると、うっすらと書棚が見えている……そんななかでの朗読は、とても雰囲気があって最高でしたよ。この、本棚がなんとなく見えている、というのがいいんですよね。
すみません、脱線しました。まだ空きはあるようですが、そんなに席数がないそうなので、夏葉社ファン・前野健太さんファンの方はお急ぎあれ(12/13追記:予約満数になったそうです) 。島田さんのツイッターによれば、《古書往来座さん、ビビビさん、ほうろうさんで、前野さんのカッコいいチラシを配布しています》だそうです。
フェアでは、なんといっても、東京堂書店神保町店で予定されている、「「夏葉社」presents 「冬の本」フェア」が楽しみですね。場所は2階で、フェアのくわしいことは聞いていないのですが、なんでも、『冬の本』で取り上げられた本、80数点がずらりと並ぶもののようですよ。これは楽しみですね。このフェアは、始まりましたら、店頭の様子を取材させてもらって、記事で取り上げたいと思います。
神保町の書店が夏葉社本の拡販にがんばっているのに、夏葉社の地元、吉祥寺にいる我々が何もしないでいられるわけがありません。この本をぜひ吉祥寺・三鷹でたくさん売りたいね、ということで、島田さんも顔を出してくれている、吉祥寺書店員の会「吉っ読」拡大版で、こんな応援ペーパーを作りました。『「ブックトラック」2012年冬増刊号「吉祥寺の冬の本」。
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新刊書店、開店・閉店関連、今年最後のまとめです。今回は、都内のお店で、支店名などから場所がわかりやすいもの以外は、かっこ内に地域表示・住所の一部を入れました。数字はこれまで通り、坪数です。
●オープン
12/ 1 宮脇書店ゆめタウン江田島店(広島県江田島市;104) 12/ 5 キャップ書店御堂筋本町店(大阪市中央区;70) 12/ 7 メディアライン宮城生協塩釜杉の入(宮城県塩竃市;140) 12/ 7 多田屋我孫子店(千葉県我孫子市;55) 12/ 8 ゲオ新静内店(北海道新ひだか町;78) 12/ 8 スクラム八戸店(青森県八戸市;100) 12/15 黒木書店飯倉店(福岡市早良区;120) キャップ書店は、大阪の地下鉄御堂筋線本町駅直結の御堂筋本町ビル、B1のお店。お店のブログには《開店時間も朝8時からと早いので通勤時にちょっと立ち寄ってみるのにも便利! 快適快速本屋さんを目指します》とあります。キャップ書店は、関西中心に数店を展開しているチェーン。本町と言えば、徒歩ですぐのところに、紀伊國屋書店本町店があります。
東京だと曙橋にお店があるメディアライン。情報をくださった方によれば、3年前まで八文字屋が入っていたところなのだそうです。
福岡の黒木書店は、前回の記事で、12月中旬としましたが、開店日が決まったようです。
●リニューアル
11/23 文教堂札幌ルーシー店(札幌市白石区;190) 11/29 夢屋書店ピアゴ布袋店(愛知県江南市;100) 12/6 未来屋書店水戸内原(茨城県水戸市) 12/12 夢屋書店ピアゴ可児店(岐阜県可児市;115) ●閉店
11/ 6 唐津ブックセンター(佐賀県唐津市) 11/25 Books DANTALION ブックス ダンタリオン 11/25 ザ・スタディールーム下北沢店 11/30 神文館メトロ店(兵庫県神戸市) 11/30 ブックプラザ川西山下店(兵庫県川西市見野) 11/30 福岡政府刊行物サービス・センター 11/30 平井書店(京都府京丹後市) 12/28 流水書房青山店 【“ザ・スタディールーム、流水書房青山店……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
しばらく前、8月ごろに書いた、リブロ渋谷店あらためPBCを紹介する記事 で少しふれた、タワーレコード渋谷本店の改装の件。11/23にリニューアルオープンとなった同店、Tower Booksを中心に見てきましたよ。関連記事を2つあげておきます。「「タワーレコード渋谷店」改装オープンへ-在庫80万枚、ライブ感強化」 (11/22 シブヤ経済新聞)、「タワレコ渋谷店にカフェ-併設書店と連携、「たまり場」コンセプトに」 (11/27 シブヤ経済新聞)。
↑正面入り口
↑店内で配布されているリニューアルオープンのチラシ(左)、YMOの3人他の著名人がコメントを寄せているリニューアル小冊子(中)、フロアガイド。
リニューアル前は、7階のワンフロア全部を使っていたTower Books。都内の他の洋書店とは異なるセレクトと安めの値付けで、洋書好きには人気のあったお店ですが、今回のリニューアルで、2階へ移動、カフェとフロアを分け合うかたちになりました。
↑建物正面から2階を見上げるとこんな感じ。1階入り口のところには、カフェのメニューが出ています。
フロアは、通り側にカフェがあり、それをTower BooksがL字に囲むようになっています。正面から見て、左側の壁は、背の高い書棚になっていて、音楽書や芸術書が並んでいます。雑誌は少し減ったのかな。
↑フロアガイドの冊子に掲載されている2階のフロアマップ。カフェとTower Booksの位置関係やサイズバランスがわかりますね。
売場縮小ということで、どうなるのかと心配だったんですが、今回訪問してみた印象では、想像していたよりも本は多めでした。芸術関連などビジュアルが強いのも相変わらず。7階時代は、ペーパーバックもけっこうたくさん置いてあり、しかも安かったんですが、ペーパーバックの小説類も、前よりは減っているかもしれませんが、ちゃんと棚の本数をとってあり、冊数もありました。7階時代、なぜか常設されていたビートのコーナーもちゃんと生きていましたよ。
↑店内の売場の撮影は反則ですが、どうしても雰囲気を伝えたくて、すみません、エスカレータからフロアの入り口のあたりだけ撮らせていただきました……。
全体としては在庫量もけっこうあり、以前よりも和書との混在が目立つ感じです。売場が狭くなった分、コンパクトにまとまりましたから、今のレイアウトのほうが探しやすいと感じるお客さんもいるでしょう(実際、7階時代は、隅・奥のほうの棚は、ちょっと空きが目立つものもあったりしましたからね) 。リニューアル前とはまた違う意味でおもしろい売場になっているように思いました。ちょっと安心。
同じフロアに併設のカフェですが、そちらの店内にも雑誌などが並んでいて、自由に手にとれるようになっているようです。また、先にリンクをあげたシブヤ経済新聞の記事によれば、《書店で扱っている購入前の本も2冊まで持ち込むことができる》のだそうです。
その他の階はざっと見ただけですが、それぞれの階で取り扱われているジャンルに関連する書籍の棚があるのは以前と同じ。それらも含めると、渋谷店全体としては、書籍・雑誌が減った、という感じはあまりしませんでした。フロア構成はこちら を、もう終わってしまったものも多いようですが、オープニングキャンペーンなどはこちら をどうぞ。
というわけで、今回の改装、以前からのTower Books利用者の間では、不安だ、心配だ、残念だ、という感じの声が聞こえてくることが多かったのですが、これはこれでありだと思いますし、PBCの売場「LOGOS」とも、丸善&ジュンク堂書店渋谷店の洋書売場とも差異化がきちんとはかれていて、コンパクトな、いい売場になっているように思いました。ただ、洋書店、というよりは、洋書も多めの和洋書混在の新刊書店、という感じですので、大型洋書売場を期待していくと、ちょっと物足りないかもしれません。
それはともかく、書店好きは、まずは先入観抜きで、一度ご覧になって見ることをおすすめします。
「文芸と文庫通信」時代も含めると、この空犬通信では、何度も紹介しているフリペ「青衣茗荷の文芸通信」。その作り手、青衣茗荷 さんが東京に遊びに来られたので、案内役をかって出まして、あちこちを案内してきましたよ。
↑上京の前日に完成という、まさにできたてのほやほや、最新の第8号はこちら。今回は、直接いただいたので、いつもの、それ自体が芸術作品といえそうな封筒はなし。
↑都内での配布店の一つ、啓文堂書店三鷹店へご案内。同店では、写真のように、その封筒を活かした、このようなディスプレイになっています。
↑6月に、作家・枡野浩一さんが阿佐ヶ谷にオープンした「枡野書店」 にもおじゃましました。JR阿佐ヶ谷駅からはちょっと歩きますが、丸の内線の南阿佐谷駅からならすぐです。「書原」の近くなので、書店好きはぜひ両方セットで訪問を(枡野書店訪問後に青衣茗荷さんを案内したんですが、書原の棚の独特さには青衣茗荷さんもびっくりしていました) 。
↑「枡野書店」には、フリペやミニコミがたくさん置いてあるのですが、ご覧の通り、「青衣茗荷の文芸通信」はちょっと特別扱いという感じで置かれていたのが印象的でした。啓文堂書店三鷹店同様、こちらでも、封筒がフリペ現物と一緒に並べられていました。
「枡野書店」はぼくも初めてだったんですが、枡野さんご本人が、お茶は入れてくれるわ、店内の本や品物の解説をしてくれるわ、と、とても作家さんのお店とは思えないアットホームな感じで、商品の数こそ少ないのですが、とても居心地のいい空間になっていましたよ。
この他、吉祥寺のBOOKSルーエにも案内。同店でも「青衣茗荷の文芸通信」を配布してもらうことになりました。2階への階段脇、いつものフリペ置き場にあります。
夜は、青衣茗荷さんがお店のロゴやブックカバーのデザインを手がけた、西荻窪のbeco cafeに案内。お店の二人を交えて、楽しい時間を過ごしました。
というわけで、「青衣茗荷の文芸通信」、東京での配布店も少し増えました。一読、確実に印象に残る超ユニークなフリペなので、お店で見かけたら、ぜひ手にとってみてくださいね。
↑こちらは、『シグナレス』 というミニコミ。「フリーペーパー」とありますが、デザインや造本にも手のかけられたしっかり作りの小冊子です。写真は14号。この号から、「青衣茗荷の出張文芸通信」という連載が始まりました。東京にも配布店がありますので、入手方法・配布場所などの詳細は、『シグナレス』のサイト をご覧ください。
表参道にある老舗書店、山陽堂書店。昨年5月のリニューアルで装いをあらため、ギャラリーを併設した書店として生まれ変わったのは、まだ記憶に新しいところ。
その「ギャラリー山陽堂」で、夏葉社『さよならのあとで』にすばらしいイラストを寄せている高橋和枝さんの展示「山陽堂・夏葉社企画展『さよならのあとで』」 が、12/3から始まっています。早速見てきましたよ。
↑表参道の「顔」の1つですよね。この立地に、このような小さな街の本屋さんがあるだけで、本好き書店好きはほっとしますよね。山陽堂書店と言えばこの壁画。表参道がどんなに装いを変えても、その存在感が変わっていないのがうれしいですね。
↑お店は3階立てで、2階・3階がギャラリーになっています。
↑お店の周り、裏側にも側面にも、店の前にも、このような案内が出ています。
↑お店のフリペ「山陽堂だより」と、ショップカード。
本で何度も見ているのですが、やはり展示されている絵を見るのはいいものですね。同書に収録の絵だけでなく、他の絵も展示されています。島田さんがツイートで紹介していましたが、展示されている高橋和枝さんの絵は購入も可能で、しかも、素人にも十分に手の届く価格になっているのがうれしいところ。
ふつう、展覧会などで気に入った絵があっても、よほどの美術好きでもないかぎり、なかなか原画やオリジナルプリントには手が出ませんよね。それが、今回は、ちょっと「えいや」とがんばれば手の届くような値付けになっています。展示がすごくよかったので、思い切って1枚、買ってしまいました。
いくら、ふつうの美術品と比べて求めやすいとは言え、書籍ならばちょっと迷ってしまうような値段であることには変わりないのですが、そこは、応援している出版社の、大好きな本の絵です。ちょうど時期的にギフトシーズンなので、自分へのクリスマスプレゼントのつもりで決めちゃいました(ちなみに、今月は誕生月でもあるので、誕生日プレゼントとWだと思えば、安いものですよね) 。
絵もすばらしいんですが、この展示に寄せた夏葉社島田さんの文章もすばらしいので、そちらもぜひ会場で忘れずにお読みください。同書のファンの方はもちろんですが、まだ読んだことがないという方も、ぜひこの機に、このすてきな本の絵と島田さんの文章にふれてみていただければと思います。展示は、12/21まで。
『さよならのあとで』企画展の会期中に、島田さんのトークショーも行われるようです。12/14(金)、19時より。参加費は1500円で、事前の申し込みと支払いが必要とのことです。くわしくは、山陽堂書店のサイト をご覧ください。
思えば、『さよならのあとで』のことは、島田さんに初めて会ったときに、ご本人から直接話をうかがったのでした。それこそ本が、まだ原稿の段階のころで、訳稿やイラストのラフの一部を見せてもらいながら、この本を出したいと思った経緯などを聞いたりしたのを思い出します。
初対面だったというのに、なんだか話が盛り上がってしまって、こちらがまだどんな者かもよくわからなかったはずなのに、島田さんは、訳のこととかレイアウトのこととか、いろいろ相談してくれて、楽しい時間になったことを思い出します。そんなこともあって、個人的に、刊行前からずっと応援している本の1つでもあるのです。
なので、島田さんのトークショー、ぜひ聞きに行きたいところなんですが、12/14(金)は、その島田さんもいつも参加してくれている吉祥寺書店員の会「吉っ読」拡大版の集まりがあるので、駆けつけることができないのです……残念。幸い、ぼくはこの本への思いを直接ご本人から聞く機会もあったので、今回は、吉祥寺の書店仲間と一杯やりながら、吉祥寺から応援していることにします。
というわけで、『さよならのあとで』の愛読者の方、気になるけどまだ買ってない、という方は、ぜひ今回の島田さんのトークを聞きに行ってください。本自体の力も大きいですが、この本にかける島田さんの思いもそれに負けないぐらい大きいものであることが伝わってきて、きっと、この本のこと、この本を出版した夏葉社という出版社のこと、そして島田さんのことが、好きになると思いますので。
【“山陽堂書店で「山陽堂・夏葉社企画展『さよならのあとで』」が開催中です”の続きを読む】
先日の、新刊書店開店・閉店・改装関連の記事 で、《東京の大型改装2件、三省堂書店有楽町本店と丸善丸の内本店につきましては、記事をあらためてふれたいと思います》とした2店、今日見てきましたので、ごくごく簡単に紹介したいと思います。
まずは、11/30にリニューアル、グランドオープンとなった丸善丸の内本店。公式サイトの案内はこちら、「丸善 丸の内本店リニューアル! 11月30日(金)グランドオープン」 。
↑店内のあちこちに貼り出されている、グランドオープンの告知ポスター。中と右は改装後の様子がわかるフロアマップ。
1階入り口を入ると、奥にレジ、右側に棚が並ぶ配置は同じながら、以前とは色味の違う什器が目に飛び込んできます。2階は、レジの位置が変わりました。知り合いのSさんに会えたので、聞いてみたら、在庫量などに大きな変化はないものの、文芸の棚は少し通路側にのびたそうです。レジが奥になった分、棚が前面に出て、整然とした並びになりました。
3階は、奥の理工書・医学書などの専門書が並ぶエリアはレイアウトなどに変更があったと聞きましたが、そちらはちょっと時間切れでチェックできず。児童書や語学書のあるあたりは、ぱっと見た感じは、レイアウトなどに変更はないようですが、児童書はけっこう入れ替え・並べ替えをしたそうですよ。今日はじっくり見てくる時間がなかったので、後日あらためて見に行きたいと思います。
そして、松丸本舗があった4階へ。既報の通り、4階には、HMVが入りました。関連記事をいくつかあげておきます。「HMVが7年ぶりに都内へ新規出店、「HMV PREMIUM 丸善丸の内」が11月末オープン」 (11/5 CDジャーナル)、「「HMV PREMIUM丸善丸の内」が11/30オープン」 (ぶらあぼ)。
↑店内の様子は撮影できませんので、フロアマップだけ。
いろいろ思惑あってのことだろうと思うので、個人の印象で批判的なことは書きたくないのですが、正直なところ、なぜ今、CDショップを?!という気がどうしてもしてしまいます。もともと、書店とCDショップは併設されるケースも多く、利用者も重なっていて、親和性の高い売り場同士ではあると思います。組み合わせとして悪いわけではありません。
ただ、もともとあるものならともかく、わざわざ誘致するような、それも、丸善丸の内本店のなかに、わざわざ誘致するようなものだったのかが、どうしても気になってしまうのです。書店に新たな客を呼び入れてくれるような、元気で勢いのあるショップならばいいのですが、HMVは、上の記事にもあるように、都内の新店は7年ぶり、どうしても、新宿や吉祥寺といった、縮小や撤退の例が頭に思い浮かんでしまうなど、後ろ向きのイメージがぬぐえず、その点でもやや?がついてしまいます。
ただ、丸の内エリアには、大きなCDショップがありませんから、潜在的な需要はありそうですし、丸善の客層に合わせた品ぞろえを徹底すれば、まだパッケージ商品のよき買い手である年配層を取り込めるかもしれません。また、先に紹介した記事には、《丸善書店とのコラボレーション企画として、「作家が選ぶCD10枚、アーティストが選ぶ本10冊」コーナーの設置を予定している》ともあります。いいかたちで本好きと音楽好き両方の興味を引いたり結びつけたりできるような売場になるといいですね。
次は、11月半ばにリニューアルした三省堂書店有楽町店へ。
2フロアのお店ですが、今回のリニューアルで、2階はずいぶんと印象が変わりました。レジが、フロアの中央あたりが移動したことで、(以前のレイアウトがよくなかったということではなく、純粋にいい意味で) フロアの見通しがよくなり、動線がすっきりした感じがしました。
奥の小部屋のようなところに児童書、その手前左に文庫、手前右に芸術といったあたりは変わりませんが、それ以外のジャンルは大きく配置が変わっています。ただ、上のフロアマップをご覧いただければわかる通り、フロアのレイアウトが非常にすっきりしているので、これまでの常連さんも混乱はなさそうです。
文庫売場とレジの間あたりに文具売場が新設、売れ行きもなかなか好調だと聞きました。銀座まで行けば伊東屋がありますが、有楽町近辺には、おしゃれ雑貨ではないふつうの文具をまとめて扱っているお店が実はないことに、知り合いから指摘されて、気づきました。大きな売場ではないですが、文具売場の存在を便利に感じる同店の利用者は多そうです。
ついで、というわけではないのですが、これらのお店と商圏的に関係がありそうということで、しばらく前に見てきた、日比谷シャンテ内にできた新店、八重洲ブックセンター日比谷シャンテ店の様子を紹介します。お店の公式サイトの案内はこちら 。
【“リニューアルなった丸善丸の内本店、三省堂書店有楽町店……そして、日比谷の八重洲ブックセンター新店”の続きを読む】
金土と一泊で、盛岡と仙台に行ってきました。盛岡では、念願のさわや書店を初訪問してきましたよ。
さわや書店は、駅ビルのフェザン店、商店街の本店、郊外型の上盛岡店の3店を訪問。いずれも個性的な、すてきなお店でしたが、とくにフェザン店は圧巻。人の手が丁寧にかけられていることがわかる棚や平台は、これまでもメディアで取り上げられたものを目にしていましたが、やはり実際に見るとインパクトが違います。ほんと、感激してしまいました。以前からずっと行きたかったお店の1つで、期待でぱんぱんだったんですが、想像以上のお店で大満足。行ってよかったなあ。
仙台では、昨年の夏に訪問したときには見られなかった、あゆみBOOKS仙台一番町店、ジュンク堂書店仙台本店、ヤマト屋書店仙台三越店などを見てきました。
↑さわや書店フェザン店(左)とあゆみBOOKS仙台一番町店(右)。
盛岡・仙台の書店の様子は、後日、訪問記をまとめるつもりです(まだ熊本編が終わってないので、そちらをあげてからになります) 。
旅先では、いつも書店ばっかり見ていて、その土地のおいしいものを食べてくることさえせずに帰ってきちゃったりして、みんなから、もったいないもったいない、と言われています。なもので、今回は、さわやさんに行ったら、まず、お昼をどこで食べたらいいか聞こうと、決めていたのに、お店の様子に感激して、聞くのを忘れてしまい、結局、ぜんぜん土地の名物とは関係ないものを食べるはめに……。
夜は、さわや書店の田口さんと松本さんが一席もうけてくださったんですが、話がすごく盛り上がってしまって、ふと気づけば、あっという間に3時間、新幹線の時間が迫っていたので、結局、ここでも名物だという「じゃじゃ麺」は食べ損ねてしまいました(苦笑)。
仙台では、その失敗は繰り返すまい、ということで、ランチは牛タンを堪能。夕食は、駅の近くの郷土料理の店に入ったら、東北復興メニューというのがあったので、石巻の焼きそば(って、有名なんですか?) を食べてきましたよ。
↑左から、金港堂近くのお店で食べた牛タン、仙台駅近くの郷土料理屋さんで食べた石巻の焼きそば、仙台駅で買った「松島ビールWeizen」。
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