空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

今年のこと、来年のこと

会社の仕事納めは28日だったんですが、し残しがあったので、それを昨日片づけ、無事に年内の仕事にひと区切りつけてきました。年末年始の休み数日は、ゆっくり本を読んだり、ギターを弾いたり、お酒を飲んだりして、のんびり過ごすつもりです。


さて、だらだらと長いこの駄ブログに今年も付き合ってくださったみなさま、ありがとうございました。今年、最後の記事のつもりなので、読書量がそれほどでもない身がそんなことをするのもどうかという気がしないでもないのですが、今年のパーソナルベストをあげてみたいと思います。


  • ノンフィクション:増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)
  • フィクション:多和田葉子『雪の練習生』(新潮社)
  • 本の本:『世界の夢の本屋さん』(エクスナレッジ)
  • 文庫:渡辺温『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』(創元推理文庫)

うち、『世界の夢の本屋さん』についてはこちらに、『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』についてはこちらに書きましたので、よろしければ。


本の本、とくに書店本は、論叢社の「出版人に聞く」シリーズや、石橋毅史さん『「本屋」は死なない』(新潮社)、仲俣暁生さん『再起動せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)など、重要な本が出ています。ただ、「ベスト」としてあげるなら、やはり、書店、とくにリアル店舗の力、楽しさを、ビジュアルで伝え、見る者を楽しく圧倒してくれた、この『世界の夢の本屋さん』を選びたい。


複数の人が言ったり書いたりしていますが、ここ数年の出版・書店関連本って、タイトルが暗め、マイナス志向のものが多いですよね。そのような出版傾向のなかにあて、あえて書名に「夢」を冠した点にも、書店好きとしては拍手を贈りたいところ。


文庫については、ダントツのトップです。(親本や作品自体の)希少性、資料性、装丁の美しさ、内容……これぞ、本来の意味での「文庫」であると言いたくなるような、そんな1冊でした。


小説は好きなんですが、好みがちょっと古めなもので、新作が出たら必ず読む買うという現役作家のひいきは実はそれほど多くはないのですが、多和田葉子さんはその数少ない1人。多和田ワールドを堪能させてくれる1冊でした。このほか、円城塔さんの『これはペンです』(新潮社)、先の記事で紹介した、異色の「辞書小説」、三浦しをんさんの『舟を編む』(光文社)も印象に残りました。


思わぬ収穫だったのは、『木村政彦』。とにかく、圧倒的。2段組700頁超の大作で、最初は、そのボリュームにややひるみ気味だったんですが、読みだしたら、これがもうおもしろくて、とまらない。中だるみなし、読んでいて、まったく飽きませんでした。


ぼくは格闘技好きですが、本書に描かれている世界のことを事前によく知っていたわけではありません。どころか、次から次に知らない人名や知らない出来事が出てきます。それでも、引き込まれてしまう。このあたり、昨年のベストにあげた黒岩比佐子さんの『パンとペン』(講談社)にも通じるノリを感じました。


格闘技、とくに柔道・プロレス・総合格闘技に興味のある方におすすめなのは言うまでもないですが、この分野にあまり興味のない方が読んでも、人間ドラマ的に楽しめそうな気もしますが、さすがに分野外の人にはこのボリュームはちょっとしんどいかな。それはともかく、興味はあるんだけど、このボリュームが……と迷っている方は、だまされたと思って最初の1章を読んでみてください。


格闘技好きとしては、内容についても、いろいろふれたいところはあるんですが、かわりに書評をいくつかあげておきます。



なお、ノンフィクションとしては、今年たくさん出た震災関連本も、ビジュアルものに新書に単行本にと、たくさん買い、そして読みました。心穏やかに読めないものも多く、すべてを読了したわけではありませんが、いま読んでいる最中の『遺体』(新潮社)ほか、ひとことふれておきたい本はいくつもあります。ただ、今年の「ベスト」などと軽々しくあげることがどうしても気分的にできず、ここでは、震災関連本はのぞいて考え、ピックアップしたことを付記しておきます。



出版物以外の件も簡単に振り返ります。出版・書店の世界にかぎったことではないですが、3月の震災以降、いろいろなことが一変してしまったこの1年。6月には吉祥寺書店員の会「吉っ読」のイベント「ブックンロール」を開催、わずかではありますが、集まったお金を、仙台で支援活動をしている「こどもとあゆむネットワーク」に寄付しました。


【“今年のこと、来年のこと”の続きを読む】
スポンサーサイト

「舟を編む」人たち、辞書のこと、そして『新明解国語辞典』

書店に足繁く通っている話ばっかり書いているもので、出版営業が本業だと思われたりすることがしょっちゅうあるんですが、本業は編集です。


「お仕事は?」
「編集を」
「じゃあ、有名な作家さんとかに会えたりするんですか?」
「……いえ、文芸の担当じゃないので……」
「そうなんですか」(←棒読み+がっかり感丸出し)


この仕事について20年ぐらいになりますが、このような経験は1度や2度ではありません。編集=文芸と思っている方が世間にたくさんいるらしいことは、この間に思い知らされたことの1つ。相手の方の好きな本や関心のあるジャンルによって、この「文芸」が「コミック」や「雑誌」に置き換わることはあるかもしれませんが、それ以外の多くのジャンルになることはあんまりなさそう。そもそも、その他のジャンルは、編集者が関わっているとは思われていないのかもしれません(苦笑)。


だから、このような小説が出たときには、ちょっとびっくりしてしまいました。



版元のサイトによれば、このようなお話。《玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。/定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。/個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく――。/しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか――。》


そう、出版社、それも辞書編集部が舞台で、主要登場人物が辞書編集者で、テーマが辞書作りという作品なのです。辞書に取り組んだ人たちを描いたノンフィクションは、高田宏『言葉の海へ』他、過去にそれなりに例がありますが、辞書の世界が設定のメインに据えられたフィクションというのは、きわめてめずらしいケースではないでしょうか。


辞書とか編集はただの設定、ただのお飾りで、本筋は別にある話、それも恋愛ものだったりしたらちょっとやだな、と、読み始める前は不安もゼロではなかったんですが、でも、杞憂でした。きちんと、本作りというものに、そして、ことばというものに対峙しながら、それを小難しい話、地味なだけの話に終わらせることなく、読んでおもしろい物語にまとめられていました。


ぼくはこれまで三浦しをんさんの作品のいい読み手では決してなかったのですが、この作品を読んだいま、ふだん日のあたりにくいジャンルの編集に携わっている編集者の1人として、三浦しをんさんには、ありがとうと、お礼を言いたい気分です。「本」にはこんな世界もあるんだよ、ということを、おもしろい読み物のかたちで、こんなふうに世に問うてくれたことに、心から感謝したいのです。


お話のくわしいことや感想は、もうすでにあちこちにあがっていますから、控えます。代わりに、「辞書」のことを少し。辞書なんてどれも同じだと思っている人は多いだろうと思います。一般の本読みはもちろん、たとえば、辞書のような、ことばのツールを日常的に自在に使いこなしていそうなプロの文筆家も例外ではありません(たとえば、角田光代さんは本書の書評「字間と行間と人間と世間」(サンデー毎日 2011年11月13日号「サンデーらいぶらりぃ」)のなかで、《ある種地味な世界だ。辞書を読むのが好きな人もいるにはいるが、私はてんで興味がなかった。日常的に使うのに何か思うことすら、なかった。あまりにも興味がないものだから、果たして最後まで読めるかと心配で本を開いた》そうだが、またたくまに引き込まれ、書評の最後を《辞書のおもしろさを知らずに過ごしてきたことが、じつに悔やまれる》と結んでいる)。


そんな方々のうち、もしも本書がきっかけで、辞書の世界に多少なりとも興味を引かれた方がいたら、こんな本たちに手をのばしてみてはいかが。


【“「舟を編む」人たち、辞書のこと、そして『新明解国語辞典』”の続きを読む】

もしも新刊書店で買った本が破損していたら……

先日(記事にしようと思ってメモをしながら、忘れていたので、実際には数か月前のことなんですが)、ある書店で買い物をしているときのこと。隣のレジで、お店の人が、破損本のクレームと思われるお客さんの対応をしているところにあたったことがありました。


買った本の一部に、破損があったらしく、店員さんとお客さんとの間で、買ったときからこうでしたか?、そうだよ、などと言ったやりとりが。お客さんは、きれたり激高したり、というほどではなかったけれど、声色はあきらかに不機嫌で、わざざわ遠くから重いのを抱えて云々という感じのことを繰り返し口にしていました。


最後まで聞いていたわけではないので、この件がどうなったのかわかりませんが、双方にとってあまり大事になることなく、交換や返金などで問題が解決されていればいいなあと、本の仕事に関わる身としては思わずにはいられません。


本の破損は、難しい問題ですよね。買った本に何か問題があった場合、書店さんにクレームがいく場合と、版元に行く場合とがあります。ぼく(念のため、版元の人間です)も、お客さんが買われた本のことでクレームの電話を受けたことが何度もあります。なかには、ほんとに申し訳ないような、気の毒としか言いようのないものもありましたし、なかには、そんなことでクレームをつけてくるのかと、驚いたり悲しくなったりするものもありました。


本の破損は、いろいろな原因で起こります(ここでは、誤植や乱丁・落丁はのぞき、本が物理的に傷むケースの話をします)。本の印刷・製本といった製作過程で起こるケースは現在ではそれほど多くはないと思いますが、ゼロではない。その後の、流通の過程で本が傷ついてしまうことももちろんあります。それから、小売店の店頭に並ぶ過程で、破れや擦れが発生することもあります。また、店頭に並んでいる間に、多くのお客さんの手にふれることで、本が自然に傷んでしまうこともふつうにあります。


また、傷むとひとくちにいっても、どこまで許容できるかにはかなり個人差がありますよね。新品同様の状態しか認めない、といった、本の状態にとても神経質な方もいれば、多少の折れ・擦れ・破れ・しわその他は気にしない、という人もいます。


いずれの場合も、問題になりやすいのは、購入時に気づかず、後になって気づくようなタイプのものですよね。先のお客さんも、どうやら、本の外ではなく中の一部に問題があったようで、本を開いて、その箇所を店員さんに見せていました。


ぼくが過去に実際に受けた例ですが、書店で買った本に不具合があったと、あるときお客さんが電話をしてきました。電話に出たとたん、相手がかんかんであることがわかる激烈としか言いようのない調子で、おまえんとこの商品管理、どないなっとんねん!と、頭ごなしにどなりつけられ、ことばをはさむすきもありません。よくよく聞いてみると、ある頁に、しわがよっていた、ということなんですが、そういう問題が、いろいろな過程で生じうるために、100%出版社で管理するのはむずかしいことを説明することさえ、させてもらえません。本を大事にされるお客さんだからこそ、なんでしょうから、悪くは言えませんし、実際、買った本がそのような状態だったら怒る気持ちもわかりますが、それでも、さすがに、こんなふうに、知らない人から数分にわたって一方的に怒鳴られ、責められ、というのはへこみますよね……。


あるときは、こんな電話もありました。おたくの本を買った。長く愛読愛用している。先日、持ち歩いているときに、雨にふられ、濡れてしまった。だから、取り替えてほしい。……そ、それ、全面的にあんたのミスじゃん……。これ、実話ですよ。出版社に電話をかけてきて、何の疑いも迷いもなくこのようなリクエストをする人もいるわけです。


今度はお店での出来事。ある書店の店頭で棚を眺めていたときのこと。近くで、びりっ、と、あきらかに紙が破けるような音がしました。少し離れたところで本を手にしていた人が、本を置いて立ち去りました。気になって、その本を手にとって、ぱらぱらやってみたら、ああ、やっぱり、スリップをずらす手間をはぶいて、無理に頁をめくろうとしたのでしょうか、ちょうどスリップの入ったところで、ある頁が破れていました。


このような本が、書店員さんやお客さんが気づかないままに売れてしまったら、トラブルになる可能性が大ですよね。トラブルにならないまでも、お客さんががっかりするのは確実です。こういうときに、知り合いのいるお店だとラクなんですが、たまたまそのときは、知り合いのいないお店。ちょっと迷ったのですが、実はおまえがやったんじゃねーの?と疑われるリスクも込みで、お店の人に本がこれこれこういう状態で、と伝えました。感謝されたのか、不審に思われたのか……そのときの書店員さんの反応ではよくわかりませんでしたが……。


この駄ブログをご覧になっている方で、とくに本に関わる仕事ではないお仕事の方で、かつ、本好きの方、書店をよく利用される方がいらっしゃったら、ぜひお願いです。このように、店頭の本の状況にはいろんな要素がからんでいて、いちがいに誰のせい、誰が悪いとは言えない場合も多々あります。欲しく欲しくて、読みたくて読みたくて買った本、とくに、決して安くはない値段を出して買った本に、何かトラブルがあった場合、がっかりしたり悲しくなったりはもちろんのこと、怒りを覚えたりは当然で、それはいち本好きとしてよくわかります。よくわかりますが、いきなり、書店にどなりこんだり、版元に電話をかけてどなりつけたりせずに、できれば、お店や出版社から、本の破損とその対応について、きちんと説明するだけの余裕をいただければと思います。


本を売る側も作る側も、破損本を出していい、売りつけていいなどとは思っていません。本の破損が原因でお客様が悲しい思いをされたのであれば、なんとかしたいと、必ず思うはずです。そのことをきちんと伝えられる程度に、話を聞いていただければと、そんなふうに思うのです。交換・返金・修理、その他、ケースに応じた適切な方法で、必ず対応してもらえるはずですので。


……と、偉そうに書いてますが、自分も気をつけないとなあ。自分だって、買った商品に何かあった場合、こんなもの売りつけやがってごらー、みたいな気分になることって、やっぱりありますからね。これからはいっそう気をつけようと、そんなふうに思ったりしたのでした。


往来堂書店の名物フェア、「D坂文庫」が始まりました

残業を少しだけ早めに切り上げ、帰りに往来堂書店へ寄ってきました。このところ連日の深夜残業なので、会社帰りに書店に寄る時間がほとんどとれません。こういうとき、遅くまでやっている本屋さんはいいですね。


今日のメインの目的は、もちろん、昨日26日に始まったばかりの同店の名物フェア「D坂文庫2012冬」のチェック。残念ながらHさんも、店長の笈入さんもいなかったので、フェアの話は聞けなかったんですが、お店の人に断って、写真だけ撮らせてもらってきました。


D坂文庫2012冬 棚1D坂文庫2012冬 棚2D坂文庫2012冬 棚3

全点にかけられた、シンプルなデザインの共通帯がいつもながらすてきです。こういう帯がかかっているだけで、フェアのスペースがきゅっとしまって見え、ここでフェアをやってるよ、というアピール度が強まりますよね。


この空犬通信では何度も取り上げているおなじみのフェアですが、一応、フェアの内容を紹介しておきましょうか。お店のツイッター(@ohraido)によれば、こういうフェアです。《お客さま参加型文庫フェア「D坂文庫2012冬」スタートしました! 選書はお客さま・仕事上お付き合いのある方・ご近所さんにお願いし、オリジナルの帯を巻いてさきほど並べ終えました。今回も2冊以上ご購入の方には「乱歩メモ帳」をプレゼント。》


お店のサイトのフェアページでも、フェアの全貌や選書コメントは見られます。遠方で来られない方はそちらでお楽しみいただくとして、近隣の方は、サイトだけで済ませず、ぜひ店頭を見に行ってくださいね。本が実際に並んでいるのを見ながら、気になった本を手にとり、本をひっくり返して、帯の表4(裏表紙)側に載っている選者のコメントを参考にしながら、あれこれ選ぶ、これにまさる楽しみはありませんからね。


ちなみに、わたくし空犬も、選書に参加させてもらっています。どんな本を選んだかは、店頭で、お店に来られない方は、サイトで、ぜひ見てみてください。3点、選びました。


D坂文庫2012冬 冊子

↑前回は残念ながら作られなかった小冊子。今回はちゃんとありますよ。この冊子をぱらぱらやってるだけでも楽しい。


往来っ子 93

↑「往来っ子新聞」、第93号。おお、100号まであと少しではないですか! 100号までいったら、合本にしたいんだという話を笈入さんから聞いているんですが、どうなるんでしょうか。楽しみだなあ。


買い物もたくさんしてきましたよ。うち一部をご紹介。ちなみに、今回は、D坂文庫以外の本を買いました。


【“往来堂書店の名物フェア、「D坂文庫」が始まりました”の続きを読む】

一頁堂、丸善松本、山下ドーム、くまざわカリヨン……新刊書店の開店・閉店いろいろ

今日は、以前に取り上げた新刊書店開店情報のフォローと、閉店情報の追加を。まずは、22日、岩手県大槌町にオープンした一頁堂書店の話題から。「被災夫婦が自ら書店経営 大槌、「子どもたちの力に」」 (12/22 岩手日報)。Webのリンクがありませんが、朝日新聞にも取り上げられていましたね。「本で子どもの心支える 脱サラ夫婦、書店開く」(12/25 朝日新聞)。


一頁堂 朝日新聞

↑朝日の紙面。


岩手日報の記事から引きます。《木村夫妻は津波で自宅が流失。薫さんは勤務先も被災し、新たな仕事に決めたのが書店経営。町内には書店が2店舗あったが流失しており「親を失った小中高生が80人もいる。未来を担う子どもたちに本で夢を与えたい」と一念発起した。》自らも被災、仕事も自宅も失った人が、子どもたちのために書店経営に立ち上がるなんて……。こうして文章を引用しているだけで、涙腺が刺激されています。何ができるわけでもありませんが、書店好きとしては、全力で応援したくなりますね。


被災地での、新しい業種・仕事での出発、決して余裕はないはずだと思われますが、《児童書コーナーを充実し、売り上げの一部を津波で親を失った子どもたちのために活用する》ともあります。2つの新聞記事、どちらにも、「子どもたち」のために、という主旨のことばが入っていますが、エリアの子どもたちが安心して長居でき、本に親しめる、そんなすてきな場所になるといいですね。ぜひいつか訪ねてみたいお店です。


朝日の記事によれば、一頁堂書店は約60坪。同じ22日、長野県松本に、その10倍以上の大型書店、丸善松本店がオープンしています。報道から関連記事をいくつか。「丸善書店:県内最大規模、駅前に22日開店--松本 /長野」(12/17 毎日新聞)、「松本駅前に大型書店「丸善松本店」-3フロア、蔵書100万冊」(12/22 松本経済新聞)、「松本駅前が「書店激戦地」に 消費者歓迎、供給過剰の声も」(12/23 信濃毎日新聞)。


同店の出店場所は、毎日の記事によれば、《22日に開業する「congloM」の地上1、2階と地下1階の3フロア。アリオ松本や、井上百貨店に近い駅前商店街の一角にある》とのこと。そのアリオ松本には、16日に宮脇書店が約120坪で新規店を出したばかり。ほか、既存店にも大型店が複数あり、毎日の記事には、《県内の大型書店の規模は、長野市の平安堂長野店が約1320平方メートル、松本市のリブロ松本店が約600平方メートル》と紹介されています。それぞれ坪換算で、約400坪、約180坪。


信濃毎日の記事には、《「インターネットでの本選びは、本の良しあしが分からない。丸善が来るなんて興奮。きょうは1日いるつもり」》という地元の利用者の喜びの声が紹介される一方、《消費者は選択の幅が広がると歓迎するが、中小の書店からは悲鳴も漏れている》というくだりもあります。競争の激しい、厳しい書店事情がうかがわれます。書店事情が活発になるのはいいのですが、そのために土地の小さな本屋さんたちがマーケットから追い出されるようなことにならないことを祈ります。うまく共存できるのがいちばんいいのですが……。


開店の話だけで終われればいいんですが、昨日の記事で、書店の閉店を取り上げることについて、いろいろ書いちゃったこともありますし、やはりふれておきたいと思います。今回は2件とも都内の書店です。まずは、山下書店。サイトに「東京ドーム店‘閉店のお知らせ」があがっています。


《旧後楽園時代に営業を開始させていただいてから、はや半世紀。誠に勝手ながら東京ドーム店はこの度、2012年1月29日の営業を最後に閉店させていただく運びとなりました。これまでの皆様のご愛顧に感謝致しまして、改めまして厚く御礼を申し上げます。なお、年明けからお客様への感謝を込めたフェアを開催いたします。》


ぼくは、スポーツを観にいく趣味がないし、ライヴもここ数年はすっかり足が遠のいてしまったため、ドーム店を利用する機会自体が非常に少なかったのですが、それでも近くを通るときは必ず寄るお店でした。イベントに合わせてにぎやかに関連本が展開される店頭の様子は、たとえそれがあんまりよくわからないスポーツやアーティストの関連のものだとしても、眺めているだけで楽しいものでした。


【“一頁堂、丸善松本、山下ドーム、くまざわカリヨン……新刊書店の開店・閉店いろいろ”の続きを読む】

三鷹のりとる最終日、おすすめ本処最終号……そして、書店の閉店を記事にすることについて

仕事が忙しかったり、子どもがけがをしてしまったり(足首を骨折;泣、でも幸い軽症…)、風邪で体調を崩してしまったりで、ちょっと間が空きました。今日は、先日記事で取り上げた、年内に閉店するお店2軒のことを少し。


クリスマスの今日、JR三鷹駅北口、玉川上水沿いのすぐそばにある、小さな児童書専門店「りとる」がお店を閉じました。先の記事にも書きました通り、外商は続けるとのことで、「りとる」の名前は残りますが、お店の営業は今日が最後です。


先日、なんとか時間を捻出して、短時間独りでおとずれ、店主のNさんとおしゃべりしたり、買い物をしたり、お店の写真を撮らせてもらったりしたんですが、やっぱり最後は、子どもも連れて家族で買い物をしたかったので、今日、まだふらふら気味のからだを引きずり、松葉杖の子どもも連れて、お店に駆けつけてきました。


りとる111225 1

↑今日の、そして、最後の「りとる」、お店入り口の様子。


お店の姿を見ておきたい、買い物をしておきたいというファンの方でしょう、決して広くはない店内には何人ものお客さんが集まっていました。数日前に訪れたときは、まだ什器もそのままで、減ってしまったとはいえ、棚ががらんと空いているところもなかったのですが、この日はさすがに最終日ということで、什器の一部もなくなり、棚の本も残りわずかになってしまっていました。


りとる 111222 1りとる 111222 2りとる 111222 3

↑数日前の棚の様子。ぜひ記録を残しておきたかったので、店主のNさんに断って店内の写真を、それこそ隅から隅までという感じで撮らせてもらいました。人が写っているため、あれこれ見せられないのが、残念。中央は、外観。お店の前にも、雑貨や紙芝居や大判の本、新刊などが並び、いつもにぎやかでした。右は、「りとる」の看板。ぼくはいつも閉店間際に訪ねることが多かったので、暗がりにこの看板が明るく浮かび上がっているのが目に入ると、ほっとさせられたものです。


たくさん本を買って、店主のNさんともたくさんおしゃべりしてきました。別れ際、いつものように、「また来ます」と言えないのが、ほんとにさびしいです……。


りとる 111222 4ビビ

↑数日前に訪問したときと、今日のを合わせると、ずいぶんたくさんの本を買いましたが、うち1冊が右のこれ。たがわいちろう作・中村みつを絵『ビビ』(ポプラ社)。猫好きにはたまらないであろう1冊。お店の外には、木彫りの大きなビビが。


りとるの袋

↑りとるのビニール。ふだんはカバーやビニールは断るんですが、今回は記念に入れてもらいました。


ちなみに、「りとる」の跡地ですが、居抜きで、カフェギャラリーになるのだとか。くわしいことはよくわからないそうですが、古書の扱いもあるかもしれないとか。絵や、古書とはいえ「本」を扱うなど、「りとる」と決して遠くはないタイプのお店が跡に入るのは、「りとる」を利用してきたファンとしては、喜ぶべきなのかもしれません。


もう1軒は、これも何度か取り上げている、年末に閉店予定の、大阪・梅田、旭屋書店本店。先の記事で、同店で発行しているフリーペーパー「おすすめ本処かわら版」の最終号を送っていただけることになったので、届いたら紹介するとしましたが、無事入手できました。ご担当のYさん、閉店直前でお忙しいところ、わざわざありがとうございました。


おすすめ本処かわら版66おすすめ本処かわら版65&64

↑左が最終号、66号。その前の、64、65号も送っていただきました(右)。


このフリペについては、以前、お店でYさんのお話を聞けたときに、記事に書いたことがあるのですが、その部分を引用しておきます。


《使い回しのきかないオール手書きで、しかも、ところどころ文字色を変えているわ、地にすかしのように絵をしいてあったりするわ、その絵がお手製のはんこだったりするわ、書影もそれ以外の写真もカラーになってるわと、文庫版でわずかに12頁の冊子ですが、どう見ても手がかかりすぎではないかと思われるほどに、手がかかっています! これを、6、7人で作っているとのことです。いやはや。》


最終号は、増頁で、いつも以上にパワーアップした内容とボリュームとになっています。年末の閉店まで、あと1週間ほどになりました。現時点で、このフリペの店頭在庫がどうなっているかはわかりませんが、お店に行ける関西エリアの本好きのみなさんは、ぜひ、このすてきなフリペの実物を、そして、このフリペが並んでいるすてきなおすすめ本コーナーをチェックしにいってください。同店の1階、エスカレータの裏というか下あたりにあるはずです。


好きだったお店の閉店の話を取りあげるのは、本当につらいですが、でも、こういうすてきなお店があったことは記録に残したいし、閉店前に記事にすることで、そのお店を利用していた方、ファンだった方が閉店前に訪ねるチャンスを作れるようにしたい、そんなふうに思いながら、書いています。


そうだ、その書店の閉店の記事のことについて、知り合いの書店員さん、それもたまたま複数の方から同じような質問や相談を受けたので、ちょっと補足しておきます。(「ちょっと」といいながら、例によって、以下、だらだらと長いです……。)


【“三鷹のりとる最終日、おすすめ本処最終号……そして、書店の閉店を記事にすることについて”の続きを読む】

旭屋書店名古屋ラシック閉店のこと、名古屋の書店のこと、旭屋書店のこと

先日取り上げた閉店ニュース追記2件のうち、今日は旭屋書店名古屋ラシック店の件をあらためて。


名古屋は栄にある旭屋書店名古屋ラシック店が、来年、2012年1月15日に閉店することになりました。旭屋書店は、この空犬通信でも何度もふれているように、大阪・梅田の本店がこの年末に閉店することがすでに報じられています。短期間に続けて、大都市圏での閉店……。それぞれのお店の利用者、そして、旭屋書店のファンにはショックですね。


旭屋書店名古屋ラシック店は、2005年のオープン。当初は、大型店としてオープンしたようですが(すみません、開店当初の広さ、きちんと調べればわかるのかもしれませんが、正確な数字がわかりません)、2006年に売り場面積をほぼ半分に縮小、リニューアルとなったとのこと。縮小後の面積が約610坪。リニューアルを伝える報道記事などを見ると、約半分になってこの数字ですから、オープン当初は1000坪クラスだったんでしょうか。


旭屋ラシック

↑旭屋書店名古屋ラシック店、外観。閉店が報じられてから、知り合いの書店員さんが、代わりに(というわけでは別にないのですが、結果的に)お店を見てきてくれました。(写真は、撮影者の方と、お店の方の両方の許可を得て掲載しています。)


この旭屋書店名古屋ラシック店オープン以後の数年間の名古屋の書店事情は、何やらすごいことになっていますね。ふだん出入りしているエリアではないため、自分の目で実際に見ていませんので、過去の報道からのピックアップになりますが、こんな感じでしょうか。ラシックオープンの前、ジュンクのオープン以降の開店・閉店をざっとまとめてみます。


  • 2003年【オープン】ジュンク堂書店名古屋駅前店(300坪)
  • 2005年【オープン】旭屋書店名古屋ラシック店
  • 2006年【リニューアル】旭屋書店名古屋ラシック店(*売り場面積を半減)
  • 2006年秋【閉店】紀伊国屋ロフト店が閉店(約650坪)
  • 2006年11月【オープン】あおい書房名古屋本店(700坪)
  • 2007年3月【オープン】紀伊國屋書店名古屋名鉄店
  • 2007年11月【閉店】マナハウス(約907坪)
  • 2009年6月【オープン】ジュンク堂書店ロフト名古屋店(600坪)
  • 2009年12月【リニューアル】ジュンク堂書店ロフト名古屋店(*増床;1200坪)
  • 2010年9月【閉店】三省堂書店名古屋テルミナ店
  • 2011年2月【閉店】あおい書房名古屋本店
  • 2011年3月【閉店】紀伊國屋書店名古屋名鉄店
  • 2012年1月【閉店】旭屋書店名古屋ラシック店

もちろん、網羅的に調べたものではありませんので、漏れや間違いなどがあるかもしれませんが、主なところはこのような感じでしょうか。ひとくちに名古屋といっても、名古屋駅周辺と栄周辺があって、上はそれらをまとめたものですが、ご覧の通り、大変な出入りですよね。大手チェーンが次々に500坪以上のお店を出したり増床したりが続きましたが、閉店・撤退に追い込まれているケースも複数あり、さらにこのリストに名前の出てこない書店に、ほかにも丸善、リブロ、三洋堂などがありますから、相当な激戦区であることがエリア外の身にも想像されます。今回のラシック店の閉店はそのような状況下でのこと、ということですね。


ぼくが最後に名古屋に足を踏み入れたのは、ずいぶん前のこと、もう10年ぐらい前かなあ。出張で名古屋にいったついでに、名古屋駅周辺と栄のお店を駆け足で回りましたが、まだ空犬通信も始めていないころのこと、詳細な記録を取ったわけでもなく、もう記憶も薄れてしまっていて、名古屋の書店事情については、ほぼまったくわからないという感じです。


ラシック店は2005年オープンなので、ぼくが書店回りをしたときにはなかったので、残念ながら、一度も訪れる機会のないままの閉店となってしまいました。ほんとに、ほんとに残念です。閉店まであとひと月を切りました。閉店までの一連の作業はただでさえ大変なはずなのに、それが年末年始の時期に重なり、同店の関係者のみなさんはさぞ大変な思いをされていることと思います。くれぐれもご無理のないようにしていただきたいものです。


ところで、このように書店事情の動きがやけに激しい名古屋エリアですが、最近になって、また一件、書店関連の情報が飛び込んできました。「名古屋駅新ビル:三省堂書店入居へ…16年度完成予定」(12/16 毎日新聞)。記事を引きます。


《JR東海は15日、16年度完成予定の名古屋駅新ビル(高さ220メートル、地上46階、地下6階)に、三省堂書店が入居すると発表した。面積3300平方メートル、販売書籍100万冊で、東海地区最大級の書店になるという。三省堂書店はJRセントラルタワーズから移転する。面積は現在の1.7倍、書籍数は2倍と大幅にリニューアルされる。新ビルにはヨドバシカメラが東海地区で初出店し、ジェイアール名古屋タカシマヤが増床する。JR東海は、フィットネスクラブや保育施設などを設ける方針も明らかにした。》

【“旭屋書店名古屋ラシック閉店のこと、名古屋の書店のこと、旭屋書店のこと”の続きを読む】

古本道、和本、美しい書物……最近買った本たち。

最近買った本のうち、「本の本」を紹介します。


  • 岡崎武志『古本道入門 - 買うたのしみ、売るよろこび』(中公新書ラクレ)
  • 中野三敏『和本のすすめ 江戸を読み解くために』(岩波新書)
  • 栃折久美子『美しい書物(大人の本棚)』(みすず書房)
  • 『BRUTUS』No.723 2012年1月1・15日号(マガジンハウス)

岡崎さんの古本エッセイ新刊は、カバーのフォーマットを一新した中公新書ラクレから。版元のサイトによれば《古本カフェ、女性店主の活躍、「一箱古本市」--いま古本がおもしろい。新しい潮流と古きよき世界を橋渡しする著者が、その味わい方を伝授する。店主との交流、個人の日記が売られる理由、神保町案内、さらにブックオフ活用法や古本屋開業の鉄則まで、この一冊で神髄がつかめる!》というもの。帯の《敷居は低いが奥は深い》という文句もいいですね。


岡崎さんの古本エッセイはこれまでに何冊も出ていますが、全部購入して読んできました。そのような岡崎読者には、入門的な1冊はちょっといまさらな感じかなあという気もしたし、実際、読むと岡崎さんがこれまでに書いてこられたことと重なるところもたくさんあるのですが(ご本人もあとがきに、「過去に書いた本との重複があるかもしれないが」と断っておられます)、でも読み始めるとぜんぜん気にならず、最後まですらすらと読めてしまいました。岡崎さんのいい意味で「敷居の低い」文章で、「奥の深い」古本の世界の入り口を開いて見せてもらうのは、それが初めてでなくても楽しいものなのです。


2冊めも新書。帯には《和本リテラシーの回復のために》とあります。ふだん、この空犬通信で取り上げていることからすると、和本?と思われてしまいそうで、実際、いくら本が好きとはいえ、和本にまで手を広げているわけではないのですが、この本、目次には、出版文化史・書店史に関しのある身には気になる項目がたくさん並んでいるんですよ。


たとえば、第一章「江戸の出版事情」から項目番号を略して引くと、「日本の出版略史」「本屋の誕生」「本屋の実体」「出版に関わる経費」「版権・著作権」「原稿料について」、などなど。空犬通信を読んでくださる読者のみなさんなら、本屋さんの「誕生」だとか「実体」だなんて文言が目次にある本は気になりますよね。


3冊目は、創刊10周年を迎えた「大人の本棚」シリーズの新刊から。装丁・ブックデザイン全般に興味のある者にとっては、栃折久美子さんの著作はぜったいに見逃せませんよね。残念ながらというかなんというか、このシリーズの1冊ですから、もちろん純粋な新刊ではなく、過去の著作からのセレクトで、『製本工房から』『装丁ノート』の2冊から選んだものに展覧会図録から1編を加えた、とあります。どちらもすでに持っている本ですが、でも、栃折さんの著書からのベストセレクションがこの「大人の本棚」の造本で読めるのなら、やっぱり買わないわけにはいきませんね。


こちらも、中身を下手に要約するよりも、目次に並ぶ文言をあげるほうが、この本の魅力をストレートに伝えられそうです。「鐘の音と装幀」「装幀の美」「吉岡実さんの装幀」「記憶の容器」「本と意匠」「 私と文庫本」「手かがりの版元製本」「職業製本家」……。ね、気になるでしょ? あなたが、モノとしての本を愛する本好きならば、この本が手元にあれば、とても幸せな読書時間を過ごせることになるでしょう。まさに、「大人の本棚」シリーズにぴったりの1冊です。


ところで、みすず書房の「大人の本棚」シリーズ、先に書いた通り、創刊10周年とのこと。もうそんなになるんですね。おめでとうございます。読書家には大歓迎されても、派手に売れるとも思えない(失礼)、いい意味で、地味なシリーズが、こうして10年も続いてきたこと、しかも、当初のカラーや質を落とすことなく、次々にすばらしいタイトルを追加してきたことを、あらためてうれしく思います。そして、このようなすばらしい本たちを世に送り出してくれたみすず書房に感謝したい気持ちでいっぱいになります。


1冊目は、『素白先生の散歩』、でしたよね。シリーズで個人的に好きなのは、やはり野呂邦暢の3冊『愛についてのデッサン』『夕暮の緑の光』『白桃』かなあ。小沼丹や長谷川四郎もいいし、『天文台日記』の石田五郎さんの『天文屋渡世』も好きな1冊。探偵者としては、谷穣次が入っているのもうれしい。『本についての詩集』も本好きには題名からしてたまらない1冊ですよね。ぜひぜひ、20年、30年と続いてほしいシリーズです。


パブリッシャーズレビューみすず2011冬

↑「パブリッシャーズ・レビュー」の「みすず書房の本棚」No.1 2011冬号。


パブリッシャーズレビューみすず2011冬 案内

↑中に、「『パブリッシャーズ・レビュー』のご案内」という一文が。終刊となってしまった「出版ダイジェスト」に代わるものとして創刊されたとのこと。東京大学出版会・白水社の3社のPR紙だとのことです。体裁は、「出版ダイジェスト」と同じ。


パブリッシャーズレビューみすず2011冬 大人の本棚

↑「大人の本棚」についても、シリーズ10周年ということで、ご覧のとおり、大きく扱われています。新刊の紹介のほか、記念フェアの開催店一覧や、既刊の紹介など。


最後の『BRUTUS』、特集は「本。 2012年、世の中が変わるときに読む263冊。」。何が悪いということではぜんぜんないのだけれど、こうしてずらりとテーマと本とを並べられると、なぜだかぜんぜん頭に入ってこない。雑誌から本の情報を得るよりも、やっぱり書店の店頭をあちこちに眺めて回るほうが向いているみたいです。


乱歩彷徨書評、朗読少女、名張、正史没後30年……乱歩関連ニュースです

先日書いたばかりですが、そして、空犬通信のレギュラーネタのなかでは特撮関連と並んで反応の薄いネタなんですが、でも、いきます。乱歩ニュースです。まずは、『乱歩彷徨』の書評が各紙に出ましたので、そちらから。すでに紹介の日経も合わせて。



評者ですが、日経は有栖川有栖さん、東京は郷原宏さん、産経が権田萬治さん、となっています。書評はリストアップだけでいいですね。次は、書評以外の一般ニュースから。見逃していたために紹介し損ねていたけっこう前のもの、それから、正史関連のもまとめて。



iPhoneアプリ「朗読少女」については、もう説明不要ですよね。この「乙葉しおりの朗読倶楽部」というのは何かというと、《「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する》ものなんだとか。ちなみに、このコラム自体も朗読されているそうで、《iPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして配信が始まりました。1話約20分で250円。》とのこと。


で、その第38回に取り上げられたのが、江戸川乱歩の「怪人二十面相」、というわけです。ストーリーの紹介があり、最後は、《少年探偵物の作品はこのお話以前にもあったものの、「非現実に徹しきれないために盛り上がりに欠ける」と考えた江戸川乱歩さんは、名探偵と怪盗の対決という思い切った非現実を描くことで大成功を収めました。》《このお話から始まった「少年探偵団」シリーズはその後1962年まで続き、今も時代を超えて多くの子供たちを夢中にさせているのです……。》とまとめられています。


乱歩作品を、「朗読少女」、乙葉しおりさんの声で読むというのは、なんというか、アンバランスというか、ミスマッチというか、妙に倒錯的な感じで、いいですよね。でも、少年ものだから、そうでもないか。ここはぜひ、彼女の声で、幻想怪奇系の作品の朗読を聞いてみたいものだなあ。倒錯度は一気に上昇(笑)。しかし、40過ぎのオヤヂがこんなこと書くと、なんかやらしいですね。すみません……。


次は乱歩の生地、名張からのニュース。《名張出身の小説家、江戸川乱歩をテーマにした教養講座が17日午後2時、市武道交流館いきいき(同市蔵持町里)で開かれる。生後のわずかな期間しか過ごさず、乱歩にとって見知らぬ故郷の名張。作品にも登場する「路地」「幻影」をキーワードに、名張の町が乱歩文学に与えた影響について、三品理絵・皇学館大准教授が解説する。》……「路地」と「幻影」がキーワードだなんて、なんかおもしろそうですねえ。


【“乱歩彷徨書評、朗読少女、名張、正史没後30年……乱歩関連ニュースです”の続きを読む】

三鷹の児童書専門店、「りとる」がまもなく閉店です

新刊書店の開店閉店ニュースのうち、閉店のそれを取り上げるのはなかなかつらいことで、しかも、閉店するのが、自分の利用しているお店や、知り合いのいるお店だったりすると、それがさらにつらいものになります。今回のも、本当に、こうして取り上げなくてはいけないのが、残念でしかたありません。昨日、ざっと紹介しましたが、あらためて。


JR三鷹駅北口、玉川上水のすぐ近くにある、その店名の通り、小さな小さな児童書専門新刊書店、りとるが、この12月で、店売りを閉めることになったそうです。


りとるのいす 201112

↑同店のフリーペーパー「りとるのいす」。12月号には、閉店を知らせるお知らせが。


「店舗」としての「りとる」が閉店になるということで、今後も外商(学校関係・幼稚園・保育園などへの納品)業務は継続するとのことです。昨年から今年にかけて大ブレイクした感のある書店発のフリーペーパーですが、この「ブーム」の何年も前から、地道に続けてこられた、児童書の新刊情報満載の「りとるのいす」も継続発行されるとのこと。倒産などのように完全になくなってしまうわけではないとわかり、同店のファン・利用者としてはちょっとほっとさせられますが、でも、やはり、あの小さな、すてきな、居心地のいいお店がなくなってしまうのは、とても、とてもさびしいです。


決して大きくはない空間に、ぎっしりと子どもの本が並び、店頭にまではみ出しています。でも、窮屈な感じはしません。店内、中央には平台があり、その周りには、子ども用の小さな椅子がいくつか置かれています。この椅子に、本を抱えてちょこんと座ったまま本に夢中で動かなくなってしまった我が子の姿がなつかしく思い出されます。


最終営業日は、「りとるのいす」によれば、12/25とのこと。同店を利用されてきた方はもちろんですが、お近くや中央線沿線にお住まいの児童書好きや子持ちの方で、利用したことがないという方は、ぜひ閉店までに駆けつけて、このすてきなお店で買い物してみてください。とても幸せな時間を過ごせることになると思いますので。ぼくも閉店までに何度か機会を作って、機会を逃していた本を、たくさん買っておこうと、そんなふうに思っています。


りとるチラシ 201112

↑12月のイベントのチラシ。小さなお店ですが、こうしたトークイベント・読み聞かせ会などを熱心に行っていたお店でもありました。


(以下、ちょっと個人的な思い出をつらねます。)


【“三鷹の児童書専門店、「りとる」がまもなく閉店です”の続きを読む】

三鷹の「りとる」、名古屋の旭屋書店名古屋ラシック店……新刊書店閉店ニュース、追記です

今日は残念なニュースの紹介です。先日、新刊書店、12月の開店閉店関連ニュースをまとめたばかりですが、その後にわかったもの、これまでオープンにできなかったものなどがありますので、閉店のニュースを2件追加で紹介します。


まずは、東京の話題から。JR三鷹駅北口徒歩数分のところにある児童書専門店「りとる」。中央線沿線の児童書好き・絵本好きにはおなじみのお店ですが、この12月で、店舗を閉めることになったそうです。同店発行のフリーペーパー「りとるのいす」でその旨、告知されています。


同店は、学校・保育園などに本を納品する外商にも熱心なお店でしたが、今回閉めるのは店舗のみで、外商は継続するとのことです。完全になくなってしまうわけではないようでちょっとほっとさせられますが、でも、あのこぢんまりしたすてきなお店がなくなってしまうのは、やっぱりさびしいです。


お店の営業は12/25までとのこと。それまでは休みなしで営業とのことです。同店のファンの方は、ぜひそれまでに駆けつけてください。そして、クリスマス本の買い物はぜひ「りとる」でお願いします。「りとる」については、書きたいことがたくさんあるので、明日以降、あらためてくわしく紹介します。


もう1件は名古屋から。旭屋書店名古屋ラシック店が、来年2012年の1/15で閉店することになったようです。同店のサイトには、現時点では告知は出ていないようですが、店頭には貼り紙がされているようで、写真をアップされている方もいるようです。


旭屋書店と言えば、この空犬通信でも何度もふれていますが、大阪・梅田の本店がこの年末に閉店となります。それに続く、大都市圏での閉店となるわけで、梅田の本店、そして東京に来てからは銀座店、水道橋店などにも親しんできた身としては、とても、とてもさびしいです。


この件についても、明日以降、もう少しくわしいことを補足した記事を上げたいと思います。



東京堂書店でポイントカードのサービスが始まります

神保町利用の本好き書店好きなら、もうご存じの方が多いかと思いますが、東京堂書店でポイントカードのサービスがまもなく始まりますね。


東京堂 ポイント チラシ表東京堂 ポイント チラシ裏

↑「お待たせしました」ではなく、「やっと会えたね…」という、誰の視点なのか、という感じのコピーがなかなかすてきです(笑)。先週半ばにずいぶん冷えた日がありましたが、そんなときも、スタッフの方がすずらん通りでチラシ配りをしていましたよ。


開始は、12/14から。来年、1/9まではスタート記念で、ポイントが2倍になるそうです。そのほか、システムなど、ポイントカードの詳細はこちらをどうぞ。


以前にも書いたことがありますが、個人的には、書店のポイントカードというのは実質値引き制度であることを考えると、書店への負担の点がどうしても気になってしまいます。ふだんよく出入りしている書店でポイントカードがあるところは、ひと通り作って持ってはいますが、実際に使うときには、ちょっと申し訳ない気分になってしまい、出すのを忘れたり(レジで聞かれないお店もある)、紀伊國屋書店のように期限があるものだと、使わないうちに切れちゃったりも(苦笑)。


そもそも、ポイントカードがあるかどうかで、そのお店を使うかどうかを決めることはまずないんですよね。多くのお店では、1ポイント=1円だと思いますが、1円単位を気にして、お店を選ぶより、やはり、そのお店での出会いを大事にしたいし、条件が同じなら、やはり仲良しがいる店や、個人的に応援したくなるお店、地元のお店、つまり、そのときにその本を買いたいお店、ということで選びたい。


ところで、東京堂書店、ここ1年ぐらいでずいぶん雰囲気が変わりましたよね。最近ではツイッターも始められたようだし(@books_tokyodo)、いつのまにか、サイトも垢抜けた、見やすいものになっています。以前は、なんというか、ひと昔前のデザインというか、そもそもデザインがあまりされていないというか、非常に垢抜けないデザインでしたもんね(失礼なことを書いていますが、でも、そのように感じていた利用者はぼくだけではないはず)。


雰囲気が変わったといえば、本店・ふくろう店とも、店内の様子もずいぶん変わりました。サイン本の棚の位置が変わり、メインの平台が文芸を置いていた側と自然科学・人文などを置いていた側で奥行きが入れ替わりになったり、窓際の棚で、小さいけれどユニークな出版をがんばっている出版社の全点フェア(*後述)をやったり……こまかなものも含めて変化をあげていくときりがないぐらい、あちこちが変わっています。


古くからのファンには、「前のほうがよかった」と感じる方もいるようで、実際に、周りでそんな意見も見聞きしますが、でも、「いかにも本好きのための本屋さんという感じで敷居が高かった(あくまで、その方の意見です)のが、入りやすくなった」という主旨の意見も複数聞きました。


変化、といえば、さらに大きな変化が控えているようですよ。上のチラシの写真のうち、裏側(右)を見ていただくと、下段に「Coming up next!」とあるのが見えますでしょうか。《東京堂書店はもっと愛される書店を目指して、来春リニューアル致します。ご期待下さい》とあり、写真が2点あがっています。1つには、Book & Cafe「Paper Back」とあり、カフェのカウンターのようなものが、イメージだとの断りつきで写っています。もう1つは、本店のファサードで、入り口が濃いグリーンを基調にしたものになっていて、LodonのDAUNT BOOKSみたいで、なかなかかっこいい。うわー、これは楽しみだなあ。


神保町を代表する大型店と言えば、三省堂書店、書泉グランデ、そして、この東京堂書店。いずれも、神保町の顔みたいなお店ですが、3店とも、ここ最近、いろいろと変化がありました。すっかりその光景になれてしまったので、もっと前のような気もしていましたが、三省堂書店にエスプレッソ・ブック・マシンが入りオンデマンドが始まったのは今年になってからのこと。三省堂古書館が本店の4階に移り、いくつか売り場変更があったのも今年のことですね。書泉グランデとブックマートが大きく様変わりしたことは、10月にくわしい記事で報告したばかり。


上にも書きましたが、今回の東京堂書店の件にかぎらず、変化を望まない声はあるでしょう。ぼく自身も、慣れ親しんだ書店があまりがらりと変わってしまうのは、それも、方向性として、縮小だったり、今風への路線転換だったりする場合には、ちょっと残念に思ったりすることもありますが、でも、やはりこれだけ本をとりまく状況が厳しい以上、「変化」は、それも思い切った「変化」は必要なんだろうと、そんなふうに思います。それが、本の街、神保町の老舗書店であっても。いや、老舗だからこそ、よけいに変わらないといけないのかもしれません。


来年のリニューアルはとても楽しみですが、でも、不安がないわけでもありません。というのも、しばらく前に紹介した書泉2店と同じく、この東京堂書店も、よそとは違った、とてもユニークなお店で、そのユニークさゆえに、多くの本好きに支持されているからです。同店を利用されている方には説明不要ですが、メインの平台(「軍艦」と呼ばれたりします)には、よそではまず平積みになることなどないだろう、という本がいくつも、ふつうに、それも長期間並んでいます。お店のベストセラーランキングにも、よそでは考えられないような本がふつうにランクインしたりしています(とはいえ、さすがに、今年完結した筑摩書房のマラルメ全集の最終巻が入っていたときには、本気でびっくりしましたが;笑)。モダンでかっこいい店舗デザインを実現したり、カフェができたりするのは、いいと思います。でも、ぜひいまの東京堂書店のことが大好きなお客さんたち(もちろん、ぼくもその1人です)が、安心して利用できるようなお店で居続けてほしいなあと、そんなふうに願わずにはいられません。


がんばれ、東京堂! 神保町ではたらく本好き書店好きの1人として、応援しています。


【“東京堂書店でポイントカードのサービスが始まります”の続きを読む】

感じる装丁、曼荼羅、世界のブックデザイン……本に関わる展示を紹介します

本、特に装丁・ブックデザインに関わる展示・展覧会を3つ、ご紹介します。(かっこ内は開催場所)



「感じる装丁」は、手塚治虫の記事で紹介した日本図書設計家協会主催の展示。今回の展示内容ですが、サイトではこんなふうに紹介されています。


《子どもの頃、出会い、楽しんだ本。その物語からはもちろん、紙の手ざわり、表紙にあった絵、タイトルの文字の形、そのほか本を形づくっているさまざまな要素からも、私たちは多くのことを感じとったのではないでしょうか。カヴァーノチカラ5では、日本図書設計家協会の装丁・装画家68人が「感じる装丁」をテーマに、ファインペーパーと特殊印刷を用いて、『星の王子さま』、『クリスマス・キャロル』、『竹取物語』の児童文学3作品でオリジナルブックカヴァーを制作いたします。》


Webの記事、「アサヒ・コム写真特集「感じる装丁」」(12/9 朝日新聞)で、展示作品が見られますが(ただし、「紹介しているものは画像加工したもので、完成品ではありません」との断りつき)、装丁作品の展示は、やはり実物を見たくなりますよね。


次の、gggでの杉浦さんのは、《杉浦氏が手がけた膨大なブックデザインの作品群の中でも、格別の光彩を放ち、その系譜の頂点に位置する「マンダラ」を主題にした豪華限定本》を展示するイベント。関連記事としては、こちらをどうぞ。「ブックデザインの先駆者・杉浦康平さん、銀座で「曼荼羅」主題に限定本展」(12/6 銀座経済新聞)。


豪華本、限定本よりは、ふつうの本の、ふつうの装丁に興味があるもので、そういう趣向の持ち主にはやや敷居の高い展示なんですが、でも、やっぱり気になりますね。Webの写真で見るだけでも、この迫力ですから。


次の「世界のブックデザイン2010-11」は、本好きならば展示タイトルだけでうれしくなりますね。サイトによれば、《毎年3月のライプツィヒ・ブックフェアで公開される「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書とともに、日本、ドイツ、オランダ、スイスと中国、今年はじめてご紹介するカナダとオーストリアを加えた7カ国の優れたデザインの書籍およそ240冊を展示》するというもの。本好き、とくに、モノとしての本を愛する向き、装丁好きには、最高の展示ですよね。関連記事はこちら。「「世界で最も美しい本」を一堂に展示」(12/1 朝日新聞)。


「感じる装丁」同様、こちらもWebの特集記事、「アサヒ・コム写真特集「世界で最も美しい本2011」(朝日新聞) で、書影の一部を写真で見ることができますが、でも、こういうのを見ちゃうと、よけいに実物を見たくなりますよね。


会期は「感じる装丁」が11月25日(金)から12月26日(月)、「マンダラ発光」が12月1日(木)から12月24日(土)、「世界で最も美しい本」が11月12日(土)から2012年2月19日(日)まで。時間や会期中の休日など、詳細は、それぞれのサイトをご覧ください。


年末にもこんなにたくさん……新刊書店の開店閉店ニュースいろいろ

先日の記事で、被災地での書店オープンのニュースを3件、紹介しましたが、その後、また新たな情報を教えていただきましたので、紹介します。(かっこ内は坪数)


  • 12/19(月)ブックランドいとう(20)
  • 12/24(木)宮脇書店気仙沼本郷店(95)

前者は、岩手県陸前高田市のお店。この情報をくださった方によれば、仮店舗で営業再開とのことです。後者は、同チェーンの気仙沼店に時間がかかっているとのことで、それに代わる仮店舗のようなものではないか、とのこと。いずれも、これ以上くわしいことがわかりませんので、もし事情をご存じの方がいらっしゃったら、また、内容の誤りや違いにお気づきの方がいらっしゃったら、ご教示ください。


それにしても、ただでさえ大変な開店作業を、この年末のおしせまったときに、しかもこの寒さのなか、されるのは、我々素人には想像もつかない苦労があるかと思います。先に紹介した3店含め、関係者のみなさま、からだに気をつけてがんばってください。地元のお客さん、とくに本好きの方にとっては、最高のクリスマスプレゼントになるはずですから。


それ以外のエリアの、まずはオープンから(以前の記事と、上で紹介した東北のお店はのぞいてあります)。


  • 12/1(木)精文館書店新豊田店(600)
  • 12/1(木)BOOK EXPRESS六本木ヒルズ店(60)
  • 12/2(金)三洋堂書店磐田店(212)
  • 12/3(月)蔦屋書店代官山(300)
  • 12/7(水)コメリ書房新潟NEXT21店(380)
  • 12/9(金)TASCHEN Store in BALS TOKYO GINZA(31)
  • 12/16(金)宮脇書店アリオ松本店(120)
  • 12/22(木)丸善松本店(850)

うち、松本の丸善は、当初「ジュンク堂書店」として、出店が報じられたもの。その後、名称変更になったようで、サイトにも正式に、「丸善」としてあがっていますね。


ジュンクは、我々、本好き書店好きには当たり前の名前でも、「ジュンク堂書店」と「丸善」とでは、一般的な知名度には大きな差があります。とくに、ある年齢層から上の方だと、ジュンクの名を知らない人もふつうにいそう。その点、「丸善」という名を聞いたことのない方は、本好きかどうかにかかわらず、まあ少ないでしょうから、エリアによっては、「丸善」の名前、ブランド力を活かしたほうがいい、という判断なんでしょうか。


このリストのなかで、異彩を放っているのは、やはりTASCHEN Store in BALS TOKYO GINZAでしょう。「独アートブック「TASCHEN」、銀座に国内初常設店-バルスに併設」(12/8 銀座経済新聞)。記事には、《ドイツのアートブック出版社「TASCHEN(タッシェン)」の国内初の常設ショップ「タッシェン ストア」が12月9日、インテリアショップ「BALS TOKYO GINZA」(銀座ベルビア館4階、TEL 03-5524-1218)内にオープンした》とあります。


【“年末にもこんなにたくさん……新刊書店の開店閉店ニュースいろいろ”の続きを読む】

三省堂、往来堂、ICタグ、万引き……書店関連ニュースのいろいろです

書店と本のネタばっかりのこんなblogをやっているぐらいですから、出版・書店関連ニュースの収集は、ふだんから割に熱心にしています。とくに、平日の朝(と一部、深夜にも)にはチェックしているサイトを巡回、目にとまったニュースを、自分のメモもかねて、ツイッターで連投しています。そんな、最近、メディアで報じられた書店関連ニュースのなかから、いくつかご紹介します。



偕成社から、なにやら楽しそうな新刊絵本が出ましたよ。文は詩人の石津ちひろさん、絵はなかざわくみこさん。どんな本かというと、《舞台(ぶたい)は、昔ながらの商店街(しょうてんがい)。見開きの左ページには、計50のなぞなぞを収録(しゅうろく)。右ページには、本屋や八百屋(やおや)などが細部まで丁寧(ていねい)に描(えが)かれており、答えを探(さが)すのが楽しい》とあります。


お店のなかに、本屋さんが含まれているのがうれしいではないですか。昔ながらの商店街にあった、昔ながらの本屋さん。どんなふうに描かれているのか、そして、どんななぞなぞが載っているのか、書店好きとしてはチェックしたくなりますね。



記事のリードには、《三省堂書店とBookLiveが事業提携および戦略的パートナーシップを構築していくことで合意した。「電子書籍ストア」と「リアル書店」の連携による新たなバリューチェーンの構築で、読者と書籍の接点を最大化する魅力的な施策が出てくるだろうか。》とあります。


リアル書店のこうした動きについては、紀伊國屋書店などの先行例もあります。記事にも、そのあたりについて、こんなふうにふれられています。《書籍における紙と電子を連携する動きは各社が模索している。紀伊國屋書店やCCC、丸善やbk1、ジュンク堂などを傘下に持つ大日本印刷もこうした書店とネットの融合を進めている。これらが基本的にグループ内で行われているのに対し、今回のBookLiveと三省堂書店の事業提携は、独立する企業が提携した点がポイントとなる》


で、肝心の具体的な中身ですが、詳細の発表はまだ先のようで、記事でも以下のように、ごく簡単な紹介になっています。《会員サービスの連携を図るとともに、両社会員への情報提供や販促プロモーションの連携により相互送客を推進したい考え。また、三省堂書店内での電子書籍販売と決済システムの連携、購買情報の一元管理なども予定されている。具体的な施策については2012年春をめどに順次実施するとしている》。


記事タイトルに「書店の未来は?」だなんて、大文字の副題がついていたので、もっと踏み込んだ内容の記事なのかと思ったら、そこまでのものではなく、あっさりした中身だったのはちょっと残念。



以前の記事でも紹介しましたが、毎日新聞の連載、「街の本屋さん」に往来堂書店が登場です。文脈棚やD坂文庫、往来っ子新聞など、同店の様子、特徴がコンパクトにまとめられています。


記事の最後には、店長、笈入さんのこんなことばが引かれています。《「『あの店、小さいけどわかってる』と言われたいですね」》。大丈夫ですよ、笈入さん。すでに、とてもたくさんのお客さんが、そんなふうに思っているはずですから。



《凸版印刷は書籍やCD、DVDといった商品に直接張り付け、在庫管理の効率化や店員のいないセルフレジでの支払いを可能にする小型ICタグを開発したと6日に発表した。12月中旬に発売する。》ICタグの話自体は、これまでにも出てきていましたが、今回の商品のポイントはこの「直接張り付け」られる、というところにあるんでしょうか。


効果や利用方法については、こうあります。《アンテナを取り付けた棚に書籍などを陳列すると在庫管理や商品検索ができ、カゴに入れた商品を読み取り台に載せるだけで購入・貸し出しも可能》。


《在庫管理の効率化や店員のいないセルフレジでの支払いを可能にする》とあれば、なんかいいことばかりに思えますが、でも、一方で、なんだか、ちょっとさびしい感じもしますね。無人のセルフレジのお店での買い物が、はたして楽しいものなのかどうか。まあ、そういうアナログなことを言うから、オヤヂは……とか言われてしまいそうですが、でも、やっぱり、本は、書店員さんのいるお店で買いたいなあ。


レジでの便や在庫のことももちろん大きいでしょうが、やはり、万引き対策にこそ、その威力を発揮してほしいですよね。書店好きにとって、そして、毎日、書店関連ニュースを収集している者にとって、いちばん悲しいのが、書店がらみの事件報道。その多くが、万引き、そして盗撮です。後者はICタグとは別種の問題かと思いますが、前者については、何かできるんじゃないかと期待してしまいますよね。


とにかく、万引きは、書店を愛する者として、そして、本にかかわる仕事をしている者として、許せないものですが、報道されているだけでも、けっこうな数で、埋もれているものも含めれば、どれだけの額、件数になっているのか、想像するだけで暗澹たる気分にさせられます。最近でも、こんなのが報道されてましたね。



産経の記事では、被害は《漫画本10冊(計4490円相当)》で、すぐに転売しようとしたのでしょう、《東近江市内の古本も扱う別の書店から「他店の防犯タグのついた本を売りに来ている」との連絡があり、犯行が発覚した》とあります。「防犯タグ」がちゃんと役に立っている例ですね。


47の記事には、1校で70数人だなんて、信じられないことが書いてあります。これはひどいなあ。くわしいことは書かれていませんが、被害にあったお店には、書店も含まれているとあります。


最近でいちばんひどいのは、3つめの記事のものですよね。都立高校生が、《都内の書店などで万引きした》商品を大量に処分しようとしたところ、お店が不審に思って通報するなんてことをするどころか、もっと持ってきて、という主旨のことを言ったというのだから、まったく、あきれてことばが出てきません。お店は、《東京都日の出町のレンタル店「TSUTAYA(ツタヤ)イオンモール日の出店」》で、「ゲオ」でも似たようなことがあったとか。


電子書籍とか、なんとかタブレットとか、なんかすごい情報機器がいっぱい出てきて、あっちこちが無線でつながって、デジタル的に便利になるのはいいけど、そういうテクノロジーを少しでも、この業界でもっとも頭の痛い問題の1つ、この昔ながらの問題をつぶすほうに向けられないのかなあと……こういう、ため息しか出てこない記事を続けて読むと、そんなことを思ってしまいます。


また例によって、だらだらと長くなってるので、次のは紹介だけ。これらの記事は、書店に関心のある方は目を通しておかれるといいと思いますよ。なかなか興味深いデータと分析です。



最後に、海外の書店関連ニュースを少しだけ紹介して終わります。


【“三省堂、往来堂、ICタグ、万引き……書店関連ニュースのいろいろです”の続きを読む】

TSUTAYA代官山は12月5日オープンとのこと(再掲)

先日、新刊書店の開店・閉店関連をまとめた際に、開店日がまだ未定のようだとしたTSUTAYA代官山ですが、12/5(月)で決定のようですね。



……代官山の件、という記事を先日上げたんですが、その後、本日、12/3(土)オープンだという情報があったので、いったんは記事を訂正したんですが、結局、5日オープンが正しいとのこと。二転三転、失礼しました。あらためて、記事をあげておきます。


サイトもリニューアルされていますね。代官山T-SITE サイト。フロアプランや外観の写真などが見られます。


先日、内覧会があったそうで、それに参加したという方が、お店の印象など、複数の情報を教えてくださいました。いつもありがとうございます。ここでそれらをご紹介してもいいのですが、開店前からこれだけ話題になっているお店です。やはり、お店の印象については、自分の目で見てから紹介したいと思います。いま忙しくて、なかなか時間がとれず、少し先になるかもしれませんが、お店を訪問できましたら、あらためて空犬通信でレポートしたいと思います。



芋虫仏語版、乱歩彷徨、タロット、谷崎記念館……乱歩関連ニュースいろいろ

乱歩ニュースです。紹介のタイミングを逸してしまった、ちょっと古いのもありです。



サイトの案内にはこんなふうにあります。《江戸川乱歩原作、丸尾末広画の『芋虫』フランス語訳版。装丁、口絵が美しく、本編に加えて、訳者でもあるミヤコ・スロコンブによる、乱歩および丸尾末広に関するイントロダクションもついています。》


日本語版もってるし、それに、フランス語版だなんて、辞書引き引きでないと読めないし……いくら表紙が日本語版と違うからって、《装丁、口絵が美し》いからって、《本編に加えて、訳者でもあるミヤコ・スロコンブによる、乱歩および丸尾末広に関するイントロダクションもついてい》るからって、さすがに買わないよね。たぶん。おそらく……。(たった2,310円なのか……。ふむふむ。)


  • 「紀田順一郎著『乱歩彷徨―なぜ読み継がれるのか』(春風社)刊行に寄せて」(「週刊読書人」11/18号)

乱歩彷徨刊行に寄せて

紀田順一郎・戸川安宣・平井憲太郎3氏の鼎談です。書評も出始めましたね。「乱歩彷徨 紀田順一郎著 作家人生を貫く壮大なトリック」(11/27 日経新聞)。評者は有栖川有栖さん。《乱歩ファンもミステリーファンも必読の一冊である》と書いています。



乱歩とタロットの組み合わせはおもしろいですね。内容は《「江戸川乱歩」作品をテーマにしたタロットカード作品・大アルカナと表紙、カード裏デザイン含めた24枚を展示します。》というもの。ただ、会期が11/11~11/17ということで、紹介しそこねているうちに、残念ながら、過ぎてしまいました(泣)。


次も、残念ながら終わっちゃったもの。



《江戸糸あやつり人形「結城座」が、人形と写し絵による「乱歩・白昼夢」を11月8、9日、東京都渋谷区文化総合センター大田和伝承ホールで再演する。2009年の初演作で、作・演出の斎藤憐への追悼公演となる。》人形と写し絵による乱歩かあ。どんな感じだったんだろう。


内容については、《江戸川乱歩の小説「芋虫」「屋根裏の散歩者」など4作をモチーフにオムニバス的な展開を見せる。大正ロマンや関東大震災も劇中に描き出す。》とある。けっこうおもしろそうだなあ。再演、ないかしら。


次のはまだ開催中のもの。芦屋市谷崎潤一郎記念館で開催中だという特別展示「妖しの世界への誘い」の紹介記事です。



《ミステリーを通じて交流していた谷崎、江戸川乱歩、横溝正史を紹介するという異色の企画》とのこと。この組み合わせは、乱歩ファンには見逃せませんよね。記事を引きます。


《「こんなのを読まされると、たしかに自分で創作するのがいやになります」。1925年(大正14年)7月、当時23歳の横溝は、乱歩にこんな手紙を送っている。その3か月前に乱歩と初めて出会い、若手小説家らで親睦団体「探偵趣味の会」を発足させた時期。乱歩の短編ミステリー「屋根裏の散歩者」を読んだ横溝が作品を称賛する一方で、自信喪失に陥っている様子がよくわかる。》


気になる展示内容・展示品はというと。《展示では、谷崎の初期作品「金色の死」を読んで作家を志した乱歩や、中学生の頃から谷崎作品に親しんでミステリーを学んだ横溝など、3人の内面も垣間見ることもできる。「謎の骨格に論理の肉附(づ)けをして浪漫の衣を着せましょう」(横溝)や「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」(乱歩)などの直筆の色紙、谷崎が乱歩に宛てたはがきなどを公開。乱歩の8ミリカメラや少年探偵団のグッズ、横溝のすずりなど展示品は約100点に上る。》


うわー、これは見たいなあ。でも、このために芦屋にはなあ……(泣)。関東に巡回、ないかなあ。図録があるなら、それだけでも欲しいなあ。



ユニークな「古書店」が3軒、オープンです

今回は、書店のオープンネタですが、新刊書店ではなくて、久しぶりに古書店をピックアップ。まずは、こちら、しばらく前の朝日新聞、BOOK TIMESで見かけて気になっていたお店から。


  • 「アンティーク・ブックの展示場が日本橋にオープン「ワールド・アンティーク・ブック・プラザ」(朝日新聞 BOOK TIMES)

ワールド・アンティーク・ブック・プラザ

11/25に、丸善日本橋店の3階にオープンした「ワールド・アンティーク・プラザ」。正確には「古書店」ではないのかな。「展示場」となってますからね。あちこちで紹介されているようですが、紹介記事はたとえばこちら。「11/25【開店】雄松堂書店ワールド・アンティーク・プラザ」(11/24 開店・閉店)。「世界の希少本がずらり 日本橋にアンティーク本専門店オープン」(11/25 映画.com)。


後者から引きます。《「ユリシーズ」英国版初版、「風と共に去りぬ」マーガレット・ミッチェルサイン入りの初刷り初版など、世界中の老舗書店から集めた愛書家垂涎の貴重な古書を販売する「ワールド・アンティーク・ブック・プラザ」が11月25日、丸善日本橋店(東京都中央区)3階にオープンした。》


古書といっても、扱うのは洋書稀覯書のみのようですね。「アンティーク」とあるから当然か。続いて記事にあがっている目玉商品というのがすごい。《現在出品されている目玉商品は、先にあげた2点以外にキルケゴール初版本コレクション33点(340万円)、「チャタレイ夫人の恋人」私家版、初版サイン入り(147万円)、「ペリー提督日本遠征記」特別版(65万円)など。そのほか、アンディ・ウォーホル「ブルー・ムービー」フォトブック、ガス・バン・サントの写真集など映画関連の初版本も数多く並ぶ。》ひえー。


信じられない商品の例はまだ続きます。《セルバンテス「ドン・キホーテ」版画集(75万円)、シューベルト自筆楽譜(900万円)、漢字廃止を唱えた前島密による、特殊なひらがな金属活字で印刷した「ひらがなしんぶん」(50万円)など、古書のほかにも資産価値の高い商品が展示・販売されている。》「資産価値の高い商品」ねえ。なんだか、ぼくのような雑本好きにはまったく無縁な感じですなあ(苦笑)。


運営は、洋書の扱いで知られる雄松堂書店。《オーストリア人で国際古書籍商連盟元会長のミヒャエル・シュタインバッハ氏が、日本に移住し総支配人を務め、商品の選定を行う》とあります。日本に移住して、というところがすごいですよね。気合いの入れようが伝わってきます。


見てはみたいけれど、まあ、買うものはまったくないだろうなあ(笑)。


もう1件も朝日新聞に載っていたもの。いま紹介した我々庶民には無縁そうな大文字の「古書」を扱うお店とは、まったく別世界の、小さな小さな古書店の話。


  • 「「日本一小さな古本屋」を継いだ宇田智子さん(31)」(11/26 朝日新聞「ひと」)

ひと 宇田智子さん

「日本一狭い(小さい)」と言われてきた沖縄は那覇の古書店「とくふく堂」がお店を閉めることになり、店舗を継いでくれる人をネットで募っていたことは、いろいろなところで取り上げられたり話題になったりしていましたから、古本に興味のある方なら経緯はよくご存じでしょう。


その「とくふく堂」が10月に閉店、その跡地に古書店「ウララ」をオープンしたのが、この記事で取り上げられている、元ジュンク堂書店の宇田智子さん。本好き、古本好きなら、彼女のブログ、「本屋繁昌節 沖縄の本屋から」を読んでいる人もいるでしょう。


宇田さんのこと、開店までの経緯、お店の詳細などについては、朝日の記事「ひと」や、その他の紹介記事、たとえば、これを読むのがいいでしょう。「那覇の「日本一狭い古書店」跡に古書店-大手書店辞め女性店主が出店」(11/14 那覇経済新聞)。ご本人のblogにも、開店前から、開店後の経緯まで、いろいろ興味深いことが書かれていますよ。


こんなふうに書店のことばっかり書いているblogを好きでやっているぐらいですから、訪ねてみたいお店やエリアはたくさんあって、お会いしたい書店員さんもあちこちにたくさんいます。この前、数年来の懸案であった福岡をやっと見てくることができたばかり。ほかにも、行きたい店・場所のリストはまだまだ順番待ち状態。沖縄に足をのばす機会を、近い将来作れる可能性はゼロに近いんですが(純粋な旅行で南の島に行く、ということをしないタイプなもので)、でも、見てみたいなあ、このお店は。実際に、自分の目で。


次のこれも、新刊書店にいた女性が古書店を開いたというニュース。


【“ユニークな「古書店」が3軒、オープンです”の続きを読む】

FC2Ad