空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

「大人の本棚」に天文随筆が……石田五郎『天文屋渡世』

新刊案内にその著者名を、その書名を見かけたときから、ずっと楽しみにしてたんですよねえ。ようやく、という感じで発売になりました。もちろん、迷わず買い、です。


  • 石田五郎『天文屋渡世 大人の本棚』(みすず書房)

天文本・宇宙本好きには説明不要、と言っていいでしょうか、『天文台日記』(中公文庫BIBLIO)の著者、石田五郎さんの随筆集です。表4の内容紹介は、岡崎武志さんが手がけています。カバーの青もいいし、本扉裏に引用された図版(タイトルは「プラネタリウム」!)もいいし、そして、巻頭ではなく、本文の最後「ことわりがき」(「あとがき」のような文章)の後にそえられた献辞がね、またいいんですよ。

《“初代天文屋”を追贈した

抱影先生(在オリオン座)に

この本を捧げる》

引用してて、ぐっときてしまいましたよ。もちろん、抱影先生の読者でもある身としては、もうなんというか、必読の要素がずらり、という感じの本なのです。


それに、なんといってもあと、書名がいいよね、これ。「……屋」、って、今では「さん」をつけないと、差別的に響くとされてしまったりする、ちょっと注意の要る語になってしまったんだけど、ひと昔前は職業を表す一般語だったのにね。まあ、そんな、言葉のニュアンスの移り変わり、現代的な意味はともかく、その仕事に関わっているご本人が「……屋」を名乗るのって、なんだか矜持が感じられていいよね。


しかも「渡世」と続きますからね。ことばの組み合わせが実にいいではないですか。この書名のきりっとした感じ、岡茂男『本屋風情』(中公文庫)を思い出しました。これもいい書名です。(内容を知らずに見ると、むっとされる方もいるかもしれませんが、著者が《本稿の表題を『本屋風情』としたが、私はけっして卑下して用いたのではない》とまえがきで断っているこの書名については、池谷伊佐夫『書物の達人』の『閑居漫筆』の項をぜひお読みください。)


話がそれました。『天文台日記』の読者におすすめなのはもちろんですが、『天文台日記』を未読の方でも、野尻抱影のような、ちょっと文学の香りのする天文随筆、星座読み物など《理系と文系のこのうえない絶妙な結合》(岡崎さんによる内容紹介より)の感じが好きな方なら、絶対に気に入ると思いますよ。冒頭をぱらぱらやった感じでは、『天文台日記』よりも読みやすそうだしね。


それにしても、「大人の本棚」はいい本を出すなあ。毎晩寝る前に少しずつ読むのがよさそうな1冊。早速今晩から読み始めるつもり。楽しみだなあ。しかし、こうして「毎晩少しずつ読む本」が増えちゃって、なんだか枕元が大変なことになってる気もするんだけどね……(苦笑)。



天文手帳2011カバー天文手帳2011本体

↑「天文」と言えば、今日、これをルーエで買ったんだった。1月始まりの手帳をひと月も経ってから買うのもなんだけど(苦笑)。昨年は移転前の啓文堂書店吉祥寺店で買ったんだっけなあ。と、いま、過去の記事を見て、思い出しました。月齢のチェックと星座の位置の確認ぐらいにしか使ってないんだけど、持ってるとなんだかうれしくなる手帳です。左はカバーで、カバーをはずした表紙のほうがかっこいいので、カバーははずして使います。はずしたカバーのそでを切り取ると、しおりになるのもいかしてます。ちなみに、次の満月は2/18(金)。


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終了日前日夜になんですが……銀座で活字好き必見の企画展が開催中です

終了日の前日夜に紹介するというのも、なんとも気が利かないというか、タイミングが悪いというか、申し訳ないんですが、間に合う人もいるかもしれませんから、一応、紹介しておきますね。活字好きにはおすすめのこんな企画展が、銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリーで、明日まで開催中です。「ggg 第294回企画展「秀英体100」のおしらせ」(DNP)。


999秀英体

《秀英体生誕100年を記念し、DNPが創業当時から引き継いできた秀英体という文化資産の魅力を、より広く一般の皆様に親しんでいただくことがねらい》だというこの企画展。「秀英体の四季」と題された1階の展示は、《24名+一組のグラフィックデザイナーによる「四季」をテーマに作成された新作ポスターを展示》で、《平成の大改刻で開発した秀英初号明朝、秀英明朝L/M/B、そして目下開発中の秀英角ゴシック&丸ゴシックを使ったポスターで、秀英体の新たな魅力》を伝えようというもの。参加リストには、杉浦康平・祖父江 慎・原研哉・平野甲賀といった、本好き、装丁好きにはおなじみの名前が並んでいますよ。


本好きによりおすすめなのは、「秀英体の100年」という地下の展示。《秀英体の誕生から平成の大改刻まで、秀英体の100年を書籍・雑誌・新聞広告・ポスター・電子書籍、さまざまなメディアや開発資料とともにご紹介》したというもので、実際の活字棚に活字が並んでいる様子も見られますよ(残念ながら、ふれることはできませんが)。


装丁全般に関心があることは、この空犬通信には何度も記していることですが、本の文字組、活字・書体も好きなんですよねえ。本文が写植だったころは、モリサワや写研の書体見本帳を眺めるのが好きだったぐらい、活字って好きなんですよねえ。そういえば、この仕事を始めたころ、すでに活版印刷はもう印刷の主流でなくなって久しく、対応している印刷所も数えるほどになっていたんですが、堀江敏幸さんほか、自らの著書の組や見栄えにこだわりを持つ書き手の一部から熱く支持されている精興社の活版印刷の現場を見学させてもらったことがありました。自分の名前の活字をおみやげにもらったりしたんだよなあ。あれは、実に幸せな体験でした……。


すみません、話がそれました。ブックデザイン全般が好きな方、文字そのもの、とくに(狭義の)活字が好きな人におすすめなのはもちろんですが、本物の活字を見たことがないという本好きの方で、興味のある方は、活字というものを間近で見るいいチャンスかもしれませんよ。って、終了日前日に言うな、って感じですが……すみません。


終了日前日といえば、これも明日までです。「19世紀以降の"北欧絵本作品"を展示・販売-渋谷パルコ ロゴスギャラリーにて」(1/6 マイコミジャーナル)。


ヤンソン、リンドグレーン他《19世紀以降の有名作家から、いまでは絶版になった絵本を紹介》するというこの展示、出展作品のなかには超のつく稀少本・貴重本なども混じっていて、古書価数万のものも何点もあるそうですが、ガラスケースに入って眺めるだけ、というのではなく、実物にふれられるそうですよ。展示されている作品や古書価については、この記事にくわしいことがあります。「渋谷パルコで「海の向こうのふる~い絵本展」-北欧作家中心に200冊」(1/25 シブヤ経済新聞)。これを読むと、絵本好きは駆けつけたくなりますよね。


そのほか、本の周辺の(とは言いにくいものも混じっているけど)企画展を、自分の備忘録がわりの意味も含めて、いくつか紹介しておきましょう。(すみません、いずれも自分の行ける範囲のものなので、都内のものばかりです。)



西荻窪で吉祥寺の出版社のイベントが!……第49回西荻ブックマークがすごい!

吉祥寺の出版関係のイベントのご案内です。


    第49回西荻ブックマーク

    「吉祥寺で出版社を営むということ」

    ~アルテス、クレイン、夏葉社の場合

    出演:

    鈴木茂(アルテスパブリッシング

    文弘樹(図書出版クレイン

    島田潤一郎(夏葉社

    会場:今野スタジオマーレ

    開場:16:30/開演:17:00

    料金:1500円

    定員:30名

    要予約

うわあ、これ、すごいなあ。吉祥寺の出版社を集めてのトークだなんて、ほんとなら、吉祥寺で、吉っ読主催でやりたいぐらいのテーマなのになあ。さすが、《西荻窪発、本に関するイベントをほぼ毎月開催!》という西荻ブックマークさん。我々がやりたくてできなかったことを、いちはやく実現されました。ちょっとくやしいような、うらやましいような、そして何よりうれしいイベントです。


内容を西荻ブックマークさんのサイトから引かせてもらいますね。《佐藤泰志再評価のきっかけとなった『佐藤泰志作品集』の図書出版クレイン、音楽関連の書籍を精力的に出版するアルテス・パブリッシング、『レンブラントの帽子』『昔日の客』の復刊で話題の夏葉社。/この3つの出版社はいずれも吉祥寺にあり、大手出版社の苦戦が伝えられるなか、小規模ながらも読者の支持を受けている出版社です。その方々に起業までの経緯や、小さな出版社ゆえのメリットや難しさ、将来への展望などを赤裸々に語っていただきます。》


クレイン、夏葉社の刊行物については上にある通りですが、アルテスも、内田樹さんの村上本で最近話題を呼んだばかり。いずれも小規模ながら、その本を必要としていたり好んだりしている人たちに、丁寧に、そして確実に本を届けている版元です。これは、本好き、そして出版関係者としては話を聞かないわけにはいきませんよね。


この空犬通信にも書いたことがありますが、縁あって、アルテスの鈴木さん、夏葉社の島田さんとは親しくさせていただいていて、たまに吉祥寺出版関係者+音楽好きの3人でお酒を飲んだりしています。お二人の話はいつも楽しくて、同業者として刺激になることばかり。今回は、飲み仲間ではなく、客の1人として聞きにいくつもりですが、今から楽しみですよ。


予約はメール電話、fax、古書音羽館店頭で可能とのこと。興味のある方はお急ぎを。


夏葉社さん、そして西荻窪がらみでは、こんなイベントもありますよ。夏葉社主催「井上謙治先生にお話を聞く会」(1/28 beco cafe)。


内容を、becoのサイトから引きますね。《ひとり出版社である夏葉社さんが/去年出版された『レンブラントの帽子』/この本の増刷記念として、/「アメリカ文学者・井上謙治先生にお話を聞く会」/というイベントを夏葉社さん主催のもと/becoで開催することが決定しました!!》


『レンブラントの帽子』の読者の方なら、興味を引かれますよねえ。井上謙治先生と言えば、海外文学、それもひと昔前のクラシックなアメリカ文学読みには説明不要の名前でしょう、アメリカ文学の重鎮のお一人。アップダイク作品の数々の翻訳を手がけられた方で、ほかにも冨山房のフォークナー全集や、荒地出版社から出ていたフィッツジェラルド短篇集、福武文庫のスタインベック、新潮文庫のサリンジャーなどがあり(共訳を含む)、その翻訳書リストにはアメリカ文学を代表する作家や作品の名前がずらりと並びます。音楽好きなら、リロイ・ジョーンズの『ブラック・ミュージック』を思い出す人もいるでしょう。


井上先生は、長くアメリカ文学に関わってきた研究者・翻訳者であると同時に、たった2冊でブレイクした夏葉社という小さな出版社の、その出発点となった本に直接関わった方でもあるんですね。そういう方のお話をうかがうチャンスなわけです。これは、アメリカ文学好きは、そして夏葉社本の読者は、西荻窪にかけつけないわけにはいかないでしょう。


日時は、2月11日(金)20時から。参加費は1000円で、ワンドリンクが付くそうです。場所は、西荻窪のブックカフェbeco cafe。参加ご希望の方は、お店ではなく、夏葉社さんのほうに、直接ご連絡を、とのことです。

電話 0422-20-0480

メール info@natsuhasha.com

Twitterアカウント @natsuhasha


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大宮、多摩センター、新宿……書店の開店閉店いろいろと、書店関連本の新刊たち

いまの気温、東京・武蔵野あたりだと0度とかでしょうか、あまりの寒さに泣きながら帰宅した空犬です。


今日の午後は、書店回りをしてきました。ブックファースト銀座コア店、教文館三省堂書店有楽町店、文教堂書店浜松町店、有隣堂アトレ恵比寿店……寒いなか、がんばっていろいろ回ったのに、休みだったりレジが混んでたりで目当ての人にはぜんぜん会えず、空振り続き。しかも、持って出た本が気分に合わず、移動の電車中、読んでもちっとも頭に入ってこなくて、いらいらするわ、(これはあらためて記事にしようと思いますが)あるお店ではデジタル万引きを目撃しながら、何もできず、鬱々とした気分になるわ、お店や電車から出たら泣きたくなるほど寒いわで、もうさんざんでした(泣)。


仕事的には残念だったんですが、それでも店頭の様子をいろいろ見られるのは楽しいもの。今日見たお店のなかでは、フェアで印象的だったのは、教文館2階の「宇宙のはなし」、店頭の様子では三省堂書店有楽町店1階、文芸書の積み方が、ボリュームがあって、派手で印象的でした。まあ、このお店の文芸書コーナーがにぎやかなのは別に今日にかぎったことではないのですが、芥川・直木W受賞作品が動いているときだし、村上春樹や森見登見彦の新刊も出たし、本屋大賞のノミネートも発表になったしで、今はちょうど文芸書の新刊に「目玉」がたくさんある時期ですからね。


とにかく、ふだんから多めの店だけど、平の冊数が半端じゃない。通常の平台だけでもすごいのに、さらに台が複数出ていて、あっちでもこっちでも本の柱ができています。ぼくが見たときは、上にあげた話題の文芸書たちのなかでは、西村賢太『苦役列車』の列がぼこっと減ってたのが、個人的にはちょっとうれしかったなあ。


さて。今日も書店の開店・閉店のニュースを。まずは、この開店の件から。「阪急リテールズ、3月大宮に出店」(1/26 新文化)。


記事を引きます。《3月2日、JR大宮駅構内のルミネ5階に同社45店目となる「ルミネ大宮1店」を80坪で出店する。埼玉県内ではルミネ川越店に次いで2店目。女性読者をターゲットに雑誌、趣味・実用書を中心にした品揃えを予定しているという。》


大宮と言えば、駅構内にはBOOK EXPRESSがあり、周辺には三省堂ジュンク堂いけだなどもあって、激戦区は大げさかもしれませんが、書店競合エリアですよね。そこに新たな書店が加わるとどんなふうになるのかなあ。ふだん定期的に通うにはちょっと遠い街なので、ごぶさたですが、お店ができたらぜひ大宮周辺の書店をチェックに行きたいものです。


さて、出店の話になると、どうしてもジュンク堂書店の動きについて、ふれないわけにいきませんね。昨年は大変な出店ラッシュでしたから、今年がどうなるのか、気になりますよね。すでに、この空犬通信でもふれた多摩センターの件、情報の出所によって確度が違っていたので、なんとなくあいまいな書き方しかできなかったんですが、本決まりのようですね。時期については、これまた話をうかがった人で言うことが違ってたりするんですが、4~5月でしょうか。この件、ご存じの方がいらっしゃったら、ぜひ情報ご提供ください。


そのジュンク、昨年の出店ラッシュのうち、もっとも話題を呼んだのはやはり年末の、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店でしょうか。開店当初の売上が関係者の予想を上回る大変に好調なものであったことなどが、業界紙・メディアでも報じられていましたね。その一方で、このような記事もありました。この種の大型出店が抱える問題の、目に見えないところでの影響などについても考えさせられますね。


同店について、最近、こんな記事を目にしました。「【日本版コラム】”リアル本屋”の行方は?―国内最大の書店で考えたこと」(1/25 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)。


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鎌倉の絵本店「syoca」、そして池袋の書店で見かけたフェア

今回も、書店のいろいろを。まずは、この「書店」の話題から。ツイートしたら、ずいぶんたくさんの反応があったので、こちらでも紹介しておきます。「鎌倉・長谷に絵本&本にまつわる家具の店「syoca」-地元の夫婦が開く」(1/25 湘南経済新聞)


このsyoca、昨年の12/1に、《日ごろから絵本に慣れ親しんでいる幼稚園児2人を抱える佐藤さん夫婦が、「大人になっても忘れられない、子どもの思い出になる絵本を届けたい」と開業した》のだそうです。


児童書・絵本の専門店自体はとくにめずらしいものではありませんが、《初めは絵本専門店を考えていたが、デザイナー集団「アパートメント」が主宰する「本のための小さな家具展」に出合い、絵本だけでなく、本にまつわる家具や周辺雑貨も取り扱う店に切り替えた》というところがユニーク。《本のための家具や雑貨を扱う》お店って、本好きとしてはやっぱり気になりますよね。


記事によれば、《家具は、「アパートメント」のデザイナーたちが製作した「本棚」「ブックスタンド」「ブックカバー」「ブックエンド」など20点ほど》を扱うとのこと。《棚の上が椅子になった本棚、レゴのように積み重ねて棚やスツール、テーブルにもできる家具「NoLimit」(1万9,800円~)、本をディスプレーする木の形をした「本の木」(4万8,300円)、本の形をしたトレー、本棚用の花器、内山紙のブックカバーなど、本の周辺を美しく見せ、楽しむための作品を多くそろえる》とあります。すぐに買えるような値段かどうかはともかく、見てはみたいですよねえ。


ただ、東京西部エリア在住者にはちょっと遠いなあ……。最寄り駅は、江ノ島電鉄の由比ヶ浜。新宿からの経路と時間を調べてみたら、JR湘南新宿ラインと江ノ島電鉄乗り継ぎで、1時間半ほどのようですね。ふらりと会社帰りに、書店回りのついでに、というわけにはいかない感じの距離です。


この件、ツイートしたら、たくさんの人が、行ってみたいと反応されてましたが、独りで遠出もいいですが、こういうお店に興味のある本好きが集って、ちょっとした小旅行気分で鎌倉まで一緒にツアー、当地のほかの書店・古書店もついでに見て回ったりしてきたら、遠路をおやじのソロで行くよりずっと楽しいかもなあ、などと、ちょっと考えたりしてしまいました。


さて。今度は先日の書店回りの話でも。仕事の用事があったので、リブロ池袋本店を訪ねてきました。昨年からずっとよくしてもらっている担当の方に、ずいぶん遅くなってしまった新年のあいさつの後、フェアの予定の話などいろいろうかがいました。新刊の案内や棚のチェックをして終わり、だけじゃなくて、こういうやりとりができるのはほんとうれしいものです。


1階では、リブロ池袋本店のフリーペーパー「池店別冊」、できたばかりの第3号を入手。


池店別冊3

お店のスタッフの方の文章だけでなく、外部の方のインタビューを毎号載せられるのもすごいことですが、今回なんて、ブックスキューブリックの店主、大井実さんが登場しています。新刊書店のフリーペーパーに、いくら地域や規模、店のタイプが違うとはいえ、他書店の店長さんのインタビューを掲載してしまうとは! ブックマークなど、地域の他書店との活動に関わってこられ、そういうつながりを大事にしてこられたTさん(本紙の編集人)ならではですよね。さすがです。ちなみに、入手しそこねていた過去の号も、Tさんのご好意で無事にゲット。夏葉社島田さんのインタビュー(創刊号に掲載)も読むことができましたよ。


そのリブロ池袋本店1階では、「坪内祐三が選ぶ「東京文庫」20選」なる空犬好みのフェアも開催中でした。同店のツイートによれば、《定番からこんなのあったのか本まで、東京を知的に歩く文庫20選です。売場で確かめてください。『最暗黒の東京』松原岩五郎(岩波文庫)なんて知らなかったなぁ。》というようなもの。つい先日もなにかの折りに書きましたが、(坪内さんとはもちろん比較にならぬレベルではありますが)こちらも一応東京本・東京文庫好き、さすがに知らない本はなかったのですが、やっぱり東京本のことをわかっている人はセレクトが違うなあ、と、うんうんうなずきながら眺めてきたものですよ。


その足で寄ったジュンク堂書店池袋本店も、今年初めての訪問。1階では、アルテス・パブリッシングの全点フェアが継続中です。また、後で調べればいいやと正確なタイトルをメモしてこなかったんですが、エスカレーターの脇では、昨年の「電子書籍元年」をもじった特集「紙の書籍元年?」(うろ覚えです)が展開されていました。『妖精事典』(冨山房)が書店のフェアでこんなふうに複数面陳でフィーチャーされているところは初めて目にしたかも。


8階、語学や児童書のフロアでは、エスカレーター前で、「図鑑促熱」なる、おもしろ図鑑を集めたフェアが開催中。昨年は『くらべる図鑑』(小学館)が大ヒット、ほかにもユニークな図鑑がいくつも出ていますよね。ぼくは元図鑑少年、仕事で児童書に関わったこともあるし、今は小学生の子持ちなので、このジャンルにはかなりくわしいほうで、知らないものはなかったはずなんですが、こうしてまとまると圧巻ですよねえ。自分用に欲しくなってしまって困りました。


で、今度は旭屋書店に移動。池袋はこの3店を回るだけでも、大変なんだよね……。こちらでは、「世界のおもしろ言語~様々な言語のかたちを愉しもう~」なる、語学書のフェアが目に止まりました。セレクトの中心になっている出版社の1つ、白水社のサイトによれば、《小社の「しくみ」シリーズや「ニューエクスプレス」シリーズを中心に、言語学の本まで取り揃えて展開中です。/「“世界と言語"がキーワードです。ぜひ色々な言語を知ってください!」と担当者さん。語学書売場で約1か月間開催予定です》とのこと。


白水社の本以外にも、新書に入っている言語もののタイトルなども並んでいて、軟から硬まで幅広いセレクト。こんなマイナーな言語(失礼!)でも、本になるんだ、単行本として成立するんだ、などと驚かされるような言語の本もあったりします。英語帝国主義とはまったく逆の方向を向いた、豊かなことばの世界を眺め渡せる好フェア。この年齢から、新しい言語に手を出したり、という気力はさすがにないですが、でも、こういうのはなんとなく眺めているだけでもいいものですよ。


『昔日の客』と馬込文士村と関連の作家たち

この空犬通信では何度も取り上げている『昔日の客』。増刷がかかったというだけでも驚きでしたが、なんと、先日3刷が決まったそうです(夏葉社さん、おめでとうございます!)。すごいなあ。すばらしいなあ。この地味な、とても万人向けとも旬とも思えない本(失礼)が、こんなふうに売れるなんて……。今年初めに、朝日新聞の書評に取り上げられたことも、勢いをつけるのに効果があったのかもしれません。「そんな古書店もあったんだ」(1/9 朝日新聞、評者・四ノ原恒憲)。


自分が手がけたわけでも、自分の社の本でも、とにかく自分が何らかのかたちで関わったわけでもなんでもないのに、なんだか我が事のようにうれしいです。ほんとに。


で、増刷記念、というわけではないですが、またまたこの本を取り上げます。この本の内容、そのすばらしさは、いろんなところで、いろんな人が書いてますから、内容については他の方にまかせ、今回は、このすばらしい本の楽しみをさらに広げるための、『昔日の客』周辺読書のすすめ、みたいなものを書いてみたいと思います。


同書の内容紹介には、《尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、野呂邦暢》らの名前があがっています。このほか、最初の一篇に登場する正宗白鳥も印象に残りますよね。三島、川端などほかにも登場作家はいますが、ビッグネームはおいておいて、とりあえずこの5人に話をしぼります。


この5人、『昔日の客』を読んだ人が興味を持っても、入手しやすいのは講談社文芸文庫ぐらい、古本で他の文庫や単行本を探すにしても、そのあたりの新古書店に転がっているような作家・作品群ではありませんから、なかなか大変です。文庫1冊で作家像を見渡せる「ちくま日本文学」(旧版は「…全集」)にも、上に挙げた作家たちは入っていません。


ぼくは『昔日の客』復刊前から、同書で取り上げられているような作家群をたまたま好きで読んでいたこともありますので、文庫を中心に、入手しやすいのをいくつか紹介してみます。


まずは、『昔日の客』を読んだら必ず読みたくなるであろう、両尾崎先生。うち、「一雄」先生は、著作も多く、けっこう文庫にもなっていますね。新潮文庫と講談社文芸文庫で、たとえば以下のような、代表作を含む作品たちが読めます。


  • 尾崎一雄『暢気眼鏡』(新潮文庫)
  • 尾崎一雄『虫のいろいろ』(新潮文庫)
  • 尾崎一雄『まぼろしの記』(講談社文芸文庫)
  • 尾崎一雄『美しい墓地からの眺め』(講談社文芸文庫)

このほか、岩波文庫にも作品集がありますし、角川・旺文社・中公文庫のなどの品切れ本(なかでは、中公の『閑な老人』が書名も中身も好き)もあります。品切れ文庫は、書名にもよりますが、中央線沿線の古書店でも見かけますから、探してみるといいでしょう。


「一雄」先生に比べ、ちょっとやっかいなのが「士郎」先生のほう。文庫で探すと、『人生劇場』は簡単に見つかりますし、時代ものもありますが、それらは個人的にあまり惹かれないので、未読。それ以外のものとなるとなかなかむずかしくて、これぐらいかな。


  • 尾崎士郎・中谷孝雄『尾崎士郎・中谷孝雄 近代浪漫派文庫31』(新学社)

この新学社の「近代浪漫派文庫」、講談社文芸文庫でも読めないようなマイナーな作家も入っていたりして、その意味では貴重な文庫なんだけど、資料性の点ではいろいろ不満も。作品を単に集めてのせた、という感じがしないでもない作りで、そで・表4に内容説明もない。目次と表4に収録作品名があげてあるだけなので、それが小説なのか随筆なのかもわからない。巻末にも、各編の前後にも、解説・解題はなく、初出や単行本の収録に関する情報もない。ないないづくしなんですよ。講談社文芸文庫の巻末資料の充実ぶりがすごすぎるのだから、それと比較するのは酷だし、こういう文庫は出ているだけでもすごいことなので、あまりぜいたくや無理を言いたくはないんだけど、平均1400円もするのだし、手に取る人だって、それなりに上級者が多いだろうから、もうちょっと情報的に親切でもいいかな、などと思ってしまいます。余談だけど。


さて、で、この巻、尾崎士郎は6編収録。現代小説が1編、時代もの中編が1編、残り4編は随筆で1編は見開き程度の短いもので、1編は文学論っぽいもの、2編は相撲エッセイ。時代ものや相撲エッセイが好きな方にはいいと思うが、それらは読まないぼくにしてみれば、泣きたくなるようなセレクトだったりします。図書館や古本屋さんで単行本や全集を探すのはいやだ、どうしても文庫で読みたい、という方は、1冊目にすすめるべきものかどうかはやや?であることをご承知のうえで、実物を手にしてみるといいと思います。


尾崎士郎本1尾崎士郎本2

↑単行本ならいろいろあるんですけどね。古本で所有しているもののなかから。『わが青春の…』は書名通りの本で、ぼくの好きな東京本。これが文庫になってたらいいのになあ。『昔日』からの流れでは、「大森山王」「馬込村」の2編もありますよ。『文学の…』にも「馬込村今昔」が入っています。『父…』はお嬢さんによる回想記で、「尾崎一雄さん」という一篇も。また著者略歴に「現住所=大田区山王…」などとあり、住所表記だけで、なんだかうれしくなりますよね。いろいろな本が人名や地名でつながっている……こういうのを拾っていくのは、ほんと楽しいです。


さて、『昔日』冒頭の訪問記の様子が印象的な正宗白鳥、いま熱心に読まれている作家とは言えませんが、『昔日』効果で読みたくなる作家の1人ですね。講談社文芸文庫に複数ありますが、小説集なら下の1冊かな。小説以外に評論もものした人ですが、岩波文庫のこれもいいですね。


  • 正宗白鳥『何処へ・入江のほとり』(講談社文芸文庫)
  • 正宗白鳥『新編 作家論』(岩波文庫)

もっと読みたいなあと思っていたら、気持ちがそういうときって、古本屋さんで書名・作家名が自然に目に入ってくるものなんですかね。先日の昼休み、いつものように神保町の古書店店頭を冷やかしていたら、田村書店の店頭均一に、『正宗白鳥全集』(福武書店)の第1巻が出てました。全集の端本は安いし、しかもこれ、激しい傷み本ではあるんだけど、それにしたって、この本が100円だなんてなあ……。全集を全部そろえてまで読もうとは思いませんが、ちょうど小説の巻だし、ちょっと読みたい気分を満足させるにはぴったりの買い物でした。あと、昨日記事にした、浦和の古本市では、小島信夫編・解説の彌生書房の随想集も安価で発見。


正宗白鳥全集第1巻箱正宗白鳥全集第1巻本体古本正宗白鳥随想

上林暁も講談社文芸文庫ですね。昔出ていた『白い屋形船・ブロンズの首』は品切れ。その復刊ではなく、それとは作品がかぶっている作品集が、昨年新たに刊行されています。同じく「聖ヨハネ…」を含む新潮文庫もありましたが、そちらの版は組と表記が今読むにはなかなかつらい。品切れ文庫では、ちくま文庫で出ていたのが、テーマとセレクトがgoodで、探してみる価値ありかと。選と解説は坪内祐三さん。


  • 上林暁『聖ヨハネ病院にて・大懺悔』(講談社文芸文庫)
  • 上林暁『禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』(ちくま文庫)

中央線沿線住人なら、これも気になるかもしれませんね。《戦前から自然に溜まった、武蔵野に関する古い文章、新しい文章に、大竹新助君の美しい写真を配して、この本は出来上った》(あとがきより)という1冊。そんなにレアじゃない本だと思うので、これも古本屋でチェックを。


  • 上林暁『武蔵野』(現代教養文庫)

上林武蔵野

そして、個人的に敬愛してやまない作家の一人、野呂邦暢。この人も、品切れが多く、文庫化作品もそれなりにあるのに、講談社文芸文庫以外は簡単に入手できるものが少ないんですよねえ。それが、いまではみすず書房の「大人の本棚」で、古本もの小説とエッセイ選の2冊が読めるという幸せな状況に。


  • 野呂邦暢『草のつるぎ/一滴の夏 野呂邦暢作品集』(講談社文芸文庫)
  • 野呂邦暢『愛についてのデッサン 佐古啓介の旅 大人の本棚』(みすず書房)
  • 野呂邦暢『夕暮の緑の光 野呂邦暢随筆選 大人の本棚』(みすず書房)

小説の代表作とエッセイをまとめて読めるなど、野呂邦暢という作家の全体像を知るにぴったりな作品集が出ていたので、ほんとならそれを真っ先に挙げたいところなんですが、これも長らく品切れ。古本でもあまり見かけませんよね。でも、いい作品集なので、ぜひ古本で探してみてください。


  • 野呂邦暢『野呂邦暢作品集』(文藝春秋)


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栄松堂書店東京駅一番街店と東京駅周辺の書店のこと

先日、東京駅周辺で書店回りをする機会があったので、今月13日にリニューアルオープンした栄松堂書店東京駅一番街店を訪ねてきましたよ。(リニューアルの件はtwitterで教えていただきました。ありがとうございます!)


栄松堂東京閉店案内

↑B1にあった旧店舗には、閉店・移転の案内が。


栄松堂東京新店舗入り口

↑新店舗の様子。一番街の1階、スターバックスの向かいあたりです。人の流れがたえないもので、こんな写真ですみません……。


栄松堂書店東京駅一番街店、旧店舗のときは、小さなお店ながら、品揃えに特徴のあるお店でした。店長さんが一昨年、あらたにすに登場してましたっけね。栄松堂書店 東京駅・東京一番街店 店長 都筑 栄二さん(2009/10/2)記事に、店長さん自らお店の特徴をまとめたところがありますから、引いてみます。


《当店は日本最大のターミナル駅、東京駅の地下1階にフロアーを構えています。文字通りの鉄道の中心地だけに、鉄道ファンも多く集まります。当店でも17年前から鉄道関連の書籍に力を入れております。》


そういうやや「濃い」目のお店がどんなふうに変わったか、もしくは変わっていないのか、見る前から楽しみだったんですが、結論から言うと、栄松堂書店東京駅一番街店らしさはそのままに、広くて見やすい、感じのいいお店になっていたように思いました。


以前よりも広くなりましたが、それでも決して大きくはない店内を見渡すと、あちこちに「らしい」ところが見つかります。たとえば。レジの前あたりには、経済・経営でそれぞれ1つずつ島ができています。立地からビジネスマンが多いことを考えれば当然かもしれませんが、そういう大きいくくりとは別に、壁際には税務・会計・企業実務・法務(すみません、うといジャンルなので、こまかい表記とかは違ってるかもしれませんが)といったより専門書的なものは別になっているのですよ。それらを合わせると広義のビジネス書にずいぶんスペースが割かれているのがわかります。しかも、これらの棚、お店の入り口側から見ると、文庫の棚よりも手前にありますからね。力の入れようもわかりますよね。


お店中央あたりのレジ、その脇の柱にはNゲージ(でいいのかな。電車の模型です)がずらりと並んでいるのも、この店ならでは。先の店長さんのことばにあった通りですね。ほかにも、ウェッジの出版物のコーナーがあったり(休刊になったウェッジ文庫もずらりと並んでいて、まるで出たばかりのみたいな扱い。なんだかうれしいような悲しいような……)、一般文庫の平台にも駅名だの鉄学だのの本が複数見えたり、マンガの平台にも『阿房列車3号』(百鬼園先生がコミック化されているという話を聞いて、読んでみたいと思ってたんですよ。この本についてはいずれ)が積んであったりと、鉄に弱い門外漢がざっと見ただけでも、鉄分濃度が高いことがすぐにわかる品揃えと見せ方です。


お父さんの趣味本と堅めのビジネス本が、ふつうの同規模のお店にしてみればアンバランスなぐらいの存在感で、でもこのお店にあっては実に仲良くちょうどいい具合の感じで同居する、独特の品揃え。自分の好きなジャンルの本が充実しているというわけではないのですが、それでも、こういうお店を見ると、書店派としてはなんだかうれしくなりますね。


東京駅周辺と言えば、八重洲側には八重洲ブックセンター、丸の内側には丸善丸の内本店と、東京を代表する大型書店が2軒もあり、さらに駅構内には、こちらもリニューアルなったブックエキスプレス東京駅京葉ストリート店(行くたびに、長谷川フォントPOPが増えているようで、楽しい;笑)と、魅力的で個性的な書店が複数あります。栄松堂が駅ビル内、しかも1階にあるお店とはいえ、立地的にものすごく有利かというと、そんな単純な話ではないはずで、競争的にはけっこうきびしい場所だろうと思うのです。


ただ、大型店2店からはそれなりに離れていますし、駅から、とくに八重洲側の改札からのアクセスの良さは抜群。その点では、大型店にわざわざ足を運ぶのがおっくうな移動客にとっては重宝なお店ですよね。そして、《鉄道の中心地だけに、鉄道ファンも多く集ま》ることを考えた品揃えで、JR系で駅の中にあるブックエキスプレスにもないような本を置くなど、立地だけでなく中身でもきちんと差異化をはかれているんですよね。


昨年の大型出店ラッシュ、その波は、我が街吉祥寺にも及びました。そんなこともあって、「同一商圏に大型店のある地域の中小規模書店のあり方」に、個人的にとても興味があるのです。興味だけでなく、共感も。そのような興味の持ち主が見ると、栄松堂書店東京駅一番街店は、とてもいいかたちで、独自のお店のあり方を貫いているように思えたのでした。書店好きなら、東京駅を通る際には、ぜひのぞいてみるといいお店だと思いますよ。


浦和で古本市、新刊書店、そして本をテーマにした展覧会

先日、打合せの用事があったので、浦和に行ってきました。浦和は駅前に伊勢丹があって、以前は毎年古本市をやってたんですよねえ。その頃は、市のたびに来ていた街なんですが、伊勢丹の古本市がなくなってしまってからは、すっかりごぶさた。


で、久しぶりに浦和の街を歩いていたら、たまたま古本市をやっていましたよ。「浦和宿古本市」。チラシには2月、3月の予定も載っています。毎月やっているものなのかな。


浦和宿古本市チラシ浦和宿古本市

規模は小さめ、それほどたくさんの本が並んでいたわけではないのですが、たまたま訪れた街で古本市にあたったりするとやっぱりうれしいものですよね。寒いし、一応仕事の途中、移動の途中だったけど、昼休みのかわりだと自分を納得させ(苦笑)、わずか10分ほど、ざっと眺める程度にしか見られなかったんですが、こんなのを抜いてきましたよ。


古本正宗白鳥随想

↑『昔日の客』関連作家、正宗白鳥先生の本。レアな本でもなんでもないけど、『昔日の客』効果で久しぶりにまとめて読みたいなあと思っていた作家の本が安価で見つかるとやはりうれしいもの。このあたりの作家たちは、講談社文芸文庫でしか読めませんからね。


浦和駅周辺にはいくつか新刊書店・古書店があるようですが、書店回りをするほどの時間と体力はなかったので、とりあえず西口駅前コルソのなかにある、須原屋コルソ店だけざっとのぞいてきましたよ(仕事ですよ、もちろんw。念のため)。


須原屋コルソ

須原屋、本店も同じさいたま市浦和区と、埼玉ベースのチェーンで、都内では見かけない店ですよね。このコルソ内のお店は、商業施設内によくあるタイプのワンフロア型書店で、200数十坪というところでしょうか。広めのスペースをとってある児童書コーナー、面陳多用のディスプレイがなかなかいい感じ。お店全体としては、全方位の品揃えで、平日の昼間ですが、けっこうお客さんもいましたよ。


ところで。本好きにとって、浦和と言えば、うらわ美術館がある街でもありますよね。本好き云々というのは、同館があげている収集方針2つのうち、1つが次のようなものだからです。


《本をめぐるアート---------------

美術作品としての「本」があるのをご存知でしょうか。例えばピカソやマティスはそれだけで 作品となる美しい絵を挿絵として本に描いています。しかもこの挿絵は版画で1冊ずつ刷り込まれているため発行部数が少なく、本そのものも大変貴重です。

うらわ美術館では、独立して額に入れてもおかしくないこのような作品を、本のまま収集しています。 この分野は、日本の美術館では未開拓ですが、欧米では極めて高い評価を得ています。うらわ美術館ではいち早くこの点に着目し、挿絵本だけでなく、装丁本や詩画集、さらには本をテーマとした立体作品など、皆さんに様々な表現による「本をめぐるアート」を紹介していきます。》(サイトより)


こんなふうに書かれると、本好きとしては、気になるでしょ? 見たくなりますよね。で、そういうテーマでどんな展示をやっているのか、と調べてみたら、本日1/23に終わってしまいましたが、こんなのをやってました。「これは本ではない―ブック・アートの広がり」


うらわ美術館看板これは本ではない

もう終わっちゃった展示なんで、正直なところを書いてもいいかなと思いますが、なんというか、本好きにはまったくおすすめできない展示でした。ちょっと期待してたので、がっかりです。


「これは本ではない」といいつつ、というかあえてこのように宣言してるぐらいですから、本をテーマにした作品ばかりが集められた展示なんですが、これがね、書物が本来持っている美しさを引き出すような展示ではぜんぜんなくて、「本」をアーティストが好き勝手に解釈した、かっこ付きのアート、ばっかりなんですよ。本を焼いたり(比喩ではなく、文字通り。以下同)、固めたり、水につけたり、くりぬいたり、切ったり貼ったり……そんなのをアートだの本だのとして見せられてもなあ、というのが、この展示を見た正直な感想です。野暮なことを言っているのは承知のうえですよ。「モノ」としての本を愛する者が野暮を承知で書いてるんですよ。だから、そもそも現代アートというものは……なんて解説をメールやコメントでしないでくださいね(苦笑)。


過去の展示を見ると、「装幀と挿絵-新収蔵作品を中心に」など、空犬の関心どまんなかみたいな回もあったようだし(見逃してます)、児童書関連の展示にはおもしろそうなものがいくつもあるし、本にもなっていますが、出版文化史的にも貴重な「創刊号のパノラマ-近代日本の雑誌・岩波書店コレクションより」なんて回もありましたから、美術館の路線としてはユニークでいいと思うのですよ。今回はちょっとがっかりな内容ですが、今後にまた期待したいところです。


文豪の装丁

先日、昨年出た装丁関連本について記事を書きましたが、アップした後で、昨年の本ではなかったけど、たしか昨年見つけた本で、『吾輩は猫である』の初版本をカバーに使った本があったっけなあ、装丁テーマの本は見逃さないほうなのに出たとき知らなかった本だったっけなあ……と思って我が書棚を探してみたら、あったあった、これでした。


  • NHK「美の壺」制作班編『文豪の装丁』(NHK出版)

文豪の装丁

NHKのテレビ・ラジオのテキストを立派にしたような造り、全部で70ページほどの薄っぺらい本ですが、中を開くと、図版の多くはカラーで、しかも書影も大きめ、本の表紙の素材や紙の感じ、厚みなどが伝わってくるような美しい写真が多く収められていて、装丁好きならうれしくなること必至の本と、見た目をいい意味で裏切る中身だったりするもので、驚きます。書名の通り、文豪の美しい装丁本たちを気軽に楽しめるこの本が、1000円を切る値段とは。いやはや。


NHKのTV番組『美の壺』で放送された、同名の回「文豪の装丁」(2006年10月27日放送)の内容を書籍化したもののようです。ふだんテレビはほとんど観ないもので、テレビ発のこの本を見逃していたようです。まだ生きている本のようですから、デザイン/装丁好きで未チェックの方は、ぜひ探してみてください。


吉祥寺の中古レコード店、バナナレコードがまもなく閉店です

今日は、日中、打合せの用事があって、浦和に行ってきましたよ。以前、伊勢丹浦和が古本市をやっていたころは、市のたびに、つまり少なくとも年に1回は来てたんですが、伊勢丹の古本市もなくなっちゃったし、最近はすっかりごぶさたです。そりゃあ、東京西部在住者・神保町通勤者には用事ないものね。


で、久しぶりの浦和、街を歩いていたら、たまたま古本市をやっていたのでそれをのぞいてきたり、都内では見かけなさいたまベースの新刊書店チェーン須原屋のコルソ店をのぞいてきたりしたのです。帰りには、東京駅で下車、リニューアルなった栄松堂書店も見てきたので、それらのことを書きたいんですが、メモや写真を会社に置いてきてしまった……。なので、それらの報告はまた来週にでも、ってことで。


今日は、書店ではないのですが、残念な閉店話を。吉祥寺ダイヤ街の中古レコード店、バナナレコード吉祥寺店が1/30(日)で閉店だそうです。で、今日から閉店セールが始まっています。「【吉祥寺店】13年間ありがとうセール


バナナ吉祥寺閉店チラシバナナレコード吉祥寺入り口

↑バナナレコードと言えば、入り口のイラスト(右)が目印。


新譜CDはタワーレコード、中古CD・アナログはディスユニオンを使うことが多いので、それほど熱心に通っていたお店ではないのですが、それでも、ここで買ったレコード・CDは何枚もあります。中古屋さんは商品がぎちぎちに詰め込まれたタイプのお店も多いのですが、ここは余裕のあるディスプレイで、値段もこなれていたので、落ち着いて買い物ができるのもgoodでした。そうかあ、閉店かあ。残念。


中古でもアナログを置かない店だってめずらしくないなか、バナナレコードは、お店の半分ほどがアナログ。レコード針などアナログ関連グッズもちゃんと置いている、アナログ派にはありがたいお店。オールジャンルの品揃えで、『レコード+CDマップ』にも《「一つのジャンルや時代に固執することのない」ことをモットーに、ロック、ソウル、ジャズ、レゲエ、クラシック、ヒップホップ、ハウス、テクノまでを幅広く揃える》とあり、たしかにその通りなんですが、レゲエやヒップホップはお店の規模からすると多めだったような気がします。そんなに強くないジャンルなので、よくわからないけど、レゲエ関係はジャマイカ盤(チープであやしいジャケが多いw)をけっこう置いてましたよね。


セール、今日から中古全品20%オフで、来週28からの3日間は30%オフになるそうです。ところで。……


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日本探偵小説論、物語日本推理小説史、創元文庫目録……昨年出た探偵関連本たち。

昨年からの積み残し本、今度は探偵関係です。


  • 野崎六助『日本探偵小説論』(水声社)
  • 郷原宏『物語日本推理小説史』(講談社)
  • 高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社 文庫解説総目録』(東京創元社)

扱う時代と内容にぴったりの、かっこいい装丁が目を引く『日本探偵小説論』。400頁超で4000円と、値段的にも分量的にもちょっと勇気の要る1冊だったんですが、目次や紹介文を見るかぎり、従来の推理/探偵小説史/論とは違う観点で書かれているのはあきらか。探偵小説読みとしては、これは読まないわけにはいきません。


……などと偉そうなこと言ってますが、まだ乱歩を扱った第1章「乱歩変幻(本の表記、「乱」は旧字)」しか読んでません。乱歩読みにはけっこう辛辣なことがたくさん書かれていますが、中身はスリリング。読み終えたくないので、ゆっくりゆっくり読んでいる『パンとペン』とも扱う時代が重なっているため、同じ人名がちらほら出てきたりするのも、読書がリンクするようでうれしい。読み進めるのがとても楽しみです。大変そうでもあるけど……。


書評はいくつか出ているようですが、川村湊さんの「<昭和十年前後>を足場に」(11/14 東京新聞)をあげておきます。一部だけ引いてみると、こんなふうに紹介されています。


《日本の探偵小説を、それ自体の流れだけで考察することには、あまり意味がない。著者は、江戸川乱歩の次に川端康成を論じ、地味井平造や大阪圭吉に 続けて、内田百〓や谷崎潤一郎を論じる。また、小栗虫太郎の人外魔境ものや橘外男の満洲ものの延長線上に、ポストコロニアル小説として、川端の『雪国』や 林芙美子の『浮雲』を取り上げる。日本の探偵小説という枠組みを、思い切って広げて見せたのである。》(※〓は門の中に月)


《ただ、あまりに多くの作家、作品を取り上げたために、一人の作家、一編の作品については、やや論述の物足りなさを覚えないこともなかった。尾崎翠、村松梢 風、花田清輝、野口赫宙(かくちゅう)などの作家や、戦時下のいわゆる<暗黒時代>の探偵小説作品にも、もう少し具体的に触れてほしかったというのは望蜀 (ぼうしょく)の言だろうか。それにしても、日本の近代文学の本質を<十年前後>という時間のなかに凝縮してみせた批評の力技は、ただ感嘆する以外にない のである。》


『日本』に比べると、『物語日本推理小説史』はもう少しオーソドックスなまとめ方、でしょうか。ただ、こちらも、帯に《推理小説を論じない日本文学史などありえない》とあるように、従来の日本文学史/推理小説史に異を唱える立場で、つまり《漱石や鷗外、あるいは谷崎や芥川の文学は、同時代の欧米探偵小説を抜きにしては語れないはずなのに、なぜかそのことに関する言及がない。そもそも黒岩涙香と押川春浪の出てこない明治文学史というのは少しおかしいではないか》(「あとがき」より)という思いでまとめられたもののようです。ね、読みたくなるでしょ。


先の『日本』では、乱歩を扱った第1章の次が、モダン都市小説の話でメインの作家が川端康成というのも、従来の探偵小説史からすると異例な感じですが、こちら『物語』も第1章のタイトルが「吾輩は探偵である」とあり、いきなり夏目漱石の話から始まります。こういう、内容的にも執筆のスタンス的にも呼応しあうかのような本が、同じ年に、しかもわずかひと月違いで刊行されたというのも、何かおもしろい符号ですよね。どちらも途中なんですが、あえて、とっかえひっかえしながら併読していきたいなと思ってます。


悩ましいのが、最後の東京創元社の目録本。実はまだ買ってないんですが、これもほしいなあ。中身の充実ぶり、重要さを思えば、値段云々を言っちゃいけないのはわかってるんですが、でも、(見た目には)厚めの文庫本2巻セットに5000円超というのが、なかなか、ね……。


昨年のことですが、これ、欲しい欲しいとうわごとのようにつぶやいていたらね、家族に「だって、ただの目録じゃん」などと言われてしまって、まったくその通りなので、何も言えなかった、なんてことも(苦笑)。でもねえ、これ、東京創元社の文庫を長く読んできた者にとっては、「ただの目録」なんかではないのですよ。


同じような本好き、たくさんいると思いますが、文庫の巻末の目録、読みましたよね? とくに、読みたい文庫を自由に買えるわけではなかった子どものころは。それこそ、なめるように。ときには、所有・未所有、未読・既読を鉛筆でチェックしたりして。創元文庫の巻末目録は、他の文庫にもよくある三段組のもののほか、ポーら重要作家では、写真入りの略歴+縦2段で大きく表組されたタイプのがありますよね。あれがいいんだよなあ。あの内容紹介なんて、文章をおぼえるほどに読んだのもあるものなあ。


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書店回り、TSUTAYA有楽町、そして古本市

今日は、お茶の水・新宿・吉祥寺をはしご、短時間で10軒弱ほども新刊書店を回ってきたので、さすがにへとへとの空犬です。昨日は、有楽町で、三省堂書店有楽町店とTSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイをのぞいてきました。


TSUTAYAのこのお店は、いつ見ても、POPの数、棚のジャンル表示など、とにかく見せ方が派手で、元気ですよね。品揃えやディスプレイの感じが自分の好みに全面的に合っているかどうかは別として、神保町の書店を見て、そして直前に三省堂書店を見た目で店頭の様子を見ると、あらためてそのはじけぶりが印象に残ります。同店については、いろいろなところで紹介されているようですが、参考にこれを挙げておきましょう。「有楽町イトシア、本とコーヒーの愉しみ」(All About)。


TSUTAYA有楽町

さて。話は変わって、古本市の件。昨年のいつだったかの記事に年末年始のデパート古書市が少なくなってしまって云々と書きましたが、(1/26からなので、年末年始の市、ではないですが)松屋銀座のこれがありましたね。第27回「銀座古書の市」


    第27回 銀座古書の市

    期間:1月26日~1月31日

    時間:午前10時~午後8時(最終日は午後5時30分閉場)

    場所:松屋銀座8階大催場

これ、例年、年末年始開催でしたよね。今年から時期をずらしたのかな。


これも年末年始ということではないですが、デパート関係ではこれもありました。「リブロ:池袋本店 2月9日(水)~2月15日(火) 春の古本まつりを開催いたします」(1/17 リブロ)


    春の古本まつり

    期間:2月9日(水)~2月15日(火)

    時間:午前10時~午後9時(※2月11日(金・祝)・13日(日)は午後8時、最終日15日(火)は午後7時)

    場所:西武池袋本店別館2階=特設会場(西武ギャラリー)

その他、古本市については、「日本の古本屋」即売展情報四谷書房さんの「東京古本市予定表」がくわしいので、古本好きはぜひチェックを。ぼくもいつも利用させてもらっています。


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装丁道場、本は物である、装丁問答……最近読んだ装丁本たち。そして恩地本

昨年からの積み残し本、今度は装丁関係です。


ぼくは「編集」という仕事、全般が好きなんですが、数ある編集の作業・過程のなかで、もっとも好きなのは、デザイナーから受け取った装丁のラフをはじめて目にする瞬間、かも。それまで、原稿のテキストファイルなど、かたちのないデータや、ゲラ(校正刷)など、実体のある紙ではあっても、綴じられてはいないため、あくまで紙の束でしかないものを相手に編集作業を進めてきたのが、装丁の案を受け取った瞬間に、本が「モノ」として「立ち上がる」感じがするのです。


このように、ふだんから装丁・ブックデザイン全般にはなみなみならぬ関心と愛情を寄せているもので、装丁・ブックデザイン関係の本が出たら、だいたい買うようにしています。昨年もいくつかおもしろいのや重要なのが出ましたね。


  • グラフィック社編集部『装丁道場 28人がデザインする『吾輩は猫である』』(グラフィック社)
  • 桂川潤『本は物である 装丁という仕事』(新曜社)
  • 長友啓典『装丁問答』(朝日新書)

『道場』は、副題の通り、現代のデザイナー28人が、いま『猫』の装丁を手がけるとしたらどんなふうにするか、というコンセプトで、実際に装丁を手がけたものを集めた、架空装丁集。『デザインのひきだし』の連載でいくつかは目にしていたんですが、こうして28人分をまとめてみると圧巻です。素材としては、手垢のつきまくっているといっていい作品なのに、作品としての目新しさはないに等しいといっていいのに、それでも、これだけ見事に違うものが、それも「今」の本として十分に通用する工夫に満ちたものが出てくるか、ということにまず驚かされます。


実際に、この装丁で猫を読み直したいなあ、猫を持っていたいなあ、と思わされるような、すばらしいものもいくつかありました。本を目一杯楽しもうという遊び心と、本への強い愛が、とてもいいかたちにまとまった1冊。図版がカラーなのもうれしい。


猫 袖珍版1猫 袖珍版2

↑ふつうの文庫も持ってますが、わが家にはこんなのもありますよ。『吾輩ハ猫デアル』、3巻本のじゃなくて、1冊本の袖珍本。大倉書店。明治44年。


ある種の宣言めいた書名がすでにすばらしい桂川潤さんの本は、副題通り、出版関係者以外の方には、ひょっとしたら具体的にはどんな作業・仕事なのかがわかりにくいかもしれない「装丁」というものを、具体例をたくさん混ぜながら、まとめたもの。本の製造工程はもちろん、一緒に本作りに関わった編集者や翻訳者との仕事を例にあげるなど、大から小の話題まで、装丁というもの全体を見渡すような、非常にバランスのいいまとめ方になっていますので、これ1冊で、装丁の歴史、装丁の作業内容をかなり具体的につかむことができそう。さらには電子書籍のことにもふれられています。


これで、もう少し図版、とくに書影が多く、それも大きく取り上げられていたら、そして、それらがカラーだったら、言うことないのになあ(カラー口絵が数ページあります)。それはともかく、とても読み応えのある装丁本です。


『装丁問答』は、装丁家である著者が書店で見かけて気になり、思わず「ジャケ買い」してしまった本などを具体的に取り上げ、それについての印象や装丁の解説をしたものが集められています。容れ物が新書で、さらに記事の多くは元雑誌の連載だったこともありで、「装丁とは」といった大文字の記述は少なめ。あくまで、具体的な本・装丁に寄った、パーソナルな視点での装丁論になっています。


こういう本の場合、著者に思わず「ジャケ買い」させてしまった、その装丁がどんなふうなのかがポイントになりますが、図版はすべてモノクロ、カラー口絵もなく、また本によっては、装丁の感じが必ずしもわかりやすいかたちではないアングルでの写真になっていたりして、ちょっと見せ方にもったいないところがあるような印象を受けます。


たとえば。p.74では、『どすこい(仮)』『殴るぞ』『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』『ムーンライト・シャドウ』と、1回に4点も取り上げられているのですが、それが本文の扉で、4点が1枚の写真にまとめられているため、それぞれ、かなり強烈なインパクトのある装丁なのに、たとえば『ミヤザワ』は装画が隠れてしまっているし、『どすこい』も細部がとんでしまっています。著者のブログで、この回の記事が読めますので、ブログのように、書影をストレートに見せた場合と、この本の該当ページのような写真の見せ方をした場合の、印象の違いをご覧いただければと思います。


ちなみに、ここまでの3冊、微妙につながっているんですよ。長友さんは『装丁道場』の28人の1人として自作の『猫』を披露していますし、桂川さんの本は、背と表紙、そして本文にも猫があしらわれていて、第1章の最初の文章で『猫』の装丁にふれられていて、初版3巻本(の復刻版)の書影があげられています。こんなふうに本がつながっていく感じっていいですよね


これら3点は、装丁好きなら必読の本ですよ。おすすめ。1年にこんなに出るだけでもうれしいのに、昨年末には、内容も値段も横綱級の、こんな本まで出ちゃいましたね。


  • 恩地邦郎編『恩地孝四郎 装本の業 新装普及版』(三省堂)

恩地本チラシ

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祝!芥川賞・直木賞W受賞……月刊誌『創』の出版社特集を読みながら

芥川賞・直木賞はどちらもW受賞、よかったですね。「芥川賞に朝吹さんと西村さん 直木賞は木内、道尾さん」(1/17 共同通信)。しかも、組み合わせ的に、書店での本の動きが楽しみになるような結果になったのもよかったよかった。


うち、個人的にちゃんと読んでいるのは、西村賢太さんだけなんですが、受賞作の内容も気になりますが、それより(などというとちょっと失礼な感じですが;苦笑)、西村読者としては藤沢清造全集がどうなるのかが、気になりますよね。賞金(だけで足りるわけではもちろんないでしょうが)を敬愛する作家の全集刊行にあてる、なんて、過去の芥川賞史に前例がないはず。いい話ですよねえ。なんか西村賢太っぽくない気もするけど(笑)。ぜひ、芥川賞作家として、だけでなく、別の意味でも名前を残すようなことをやってのけてほしいですよね。


さて。先日は『anan』が、今度は『週刊東洋経済』が本の特集ですね。本・書店・出版関係の特集にはなるべく目を通すようにしているんですが、どちらも、正直なところ、それほど強く興味を引かれないもので、今日はこれらではなく、『創』の出版社特集を買って、帰りの電車の中で読み始めました。


  • 『anan』No.1741(マガジンハウス)特集「本が好き♥」
  • 『週刊東洋経済』2011年1月22日号(東洋経済新報社)特集「頼れる!読書術」
  • 『創』2011年2月号(創出版)特集「出版社の徹底研究」

毎年この時期恒例の「出版社の徹底研究」。取り上げられているのもいつもとおおむね一緒で、講談社、小学館、集英社、新潮社、文藝春秋、マガジンハウス、光文社。冒頭に2010年の動きを振り返る座談会もあります。記事などの詳細は、こちらの目次でどうぞ。


ところで、この雑誌、東京堂書店で買ったんですが、同店で、今週末におもしろそうなイベントが行われるようですので、紹介しておきますね。1つは、「追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会 」。《11月17日、急逝された黒岩比佐子さんを偲んで、本会場で10月16日に行われた『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)刊行記念講演の模様を上映いたします》というもの。岡崎武志さんと鈴木千秋さんが友情出演されるそうですよ。1/22(土)13:00から。この日は小学校行事でダメなんだよなあ。残念。


もう1つは、「『近代日本奇想小説史』(横田順彌著・ピラールプレス)刊行記念 長山靖生氏×北原尚彦氏 トーク&サイン会」。こちらは同日17:00から。申し込みなど詳細は同店のサイトをどうぞ。


東京堂書店イベントチラシ

『近代日本奇想小説史』か、おもしろそうだな、どれどれ……と、いま調べてみたら、なんと! 1万2千円もする高額本ではないですか! うーん、『恩地孝四郎 装本の業』(三省堂)といい、『書影でたどる関西の出版100』(創元社)といい、『東京創元社文庫解説総目録』(東京創元社)といい、最近気になる本は、みな高額本ばかり……。こういうのを迷わずに片端から買えるオトナになりたいものですよ。


さて、今ごろなんですが、今年の目標の話でも

1月も半分以上過ぎたというのに、今ごろなんですが、先日風邪で伏せっていたときに今年の目標というか希望のようなものを考えてみたっけなあ、などと思い出したもので、忘れぬうちに書いておこうと思いました。目標といっても大したことないのばかりなんですけどね。


(以下、ものすごくどうでもいい話です;苦笑。)


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書原、啓文堂書店、平安堂……続・書店のいろいろ

先日、地方の老舗書店の閉店についての記事を書きましたが、今回は書店の話題いろいろ、東京近郊編です。まずは、こちら。栄松堂書店の東京駅1番街店が移転、1/13にリニューアルオープンとなったようです。


場所は、スターバックスコーヒー八重洲北口店の向かい側で、以前の店舗の2倍ほどのスペースになったそうですよ。(以上、ツイッターで教えていただいた情報です。ありがとうございます!)


東京駅近辺って、ここ2、3年、いついってもどこかしらでずっと改装工事が続いているような感じで、お店の入れ替わり出入りも激しく、毎日通るわけでもないぼくのような者にとっては、なんだかよくわからないことになっていたんですが、ようやく落ち着いてきた感じですね。書店も、BOOK EXPRESSが続けて閉店してしまったときはどうなることかと思いましたが、昨年、BOOK EXPRESSの東京駅京葉ストリート店もオープン。今回、栄松堂書店も増床オープンということで、書店環境も充実してきました。八重洲側には八重洲ブックセンターが、丸の内側には丸善がある駅とはいえ、やはり小・中規模の書店が駅の中や近くにあるのは、本好きにはありがたいことですからね。新しくなった栄松堂書店、来週にでも早速のぞきにいってこようと思います。


続いて、残念なこのニュースを。京王線高幡不動駅近くの書店、書原高幡不動店が、明日1/16(日)で閉店とのことです。高幡不動のあたりはなかなか用事もないもので、ふだんはあまり行けないエリアのお店ですが、書原は個人的に好きな書店なので、それほど多くはない支店の1つがなくなってしまうのはとても残念です。同じように感じる方が多かったのでしょう、ツイッターでふれたところ、たくさんの反応がありました。愛されていたお店だったんですね……。本当なら閉店前の様子を見に行きたいところなんですが、この週末は残念ながら時間がとれそうにありません。ほんと、残念。


高幡不動駅には、啓文堂書店高幡不動店がありますから、書店がゼロになってしまうわけではないところが救いでしょうか。啓文堂書店にはぜひ、書原の分までがんばってほしいものです。


吉祥寺に引き続きもしかしたら多摩センターも、という感じで、同じ商圏への大型店出店が続き、ちょっと気の毒な感じもする、その啓文堂書店、相模原店が改装で一時休業になるようです。「【相模原店】改装工事に伴う休業のお知らせ」(1/3 啓文堂書店)。休業期間は、1/17(月)~3/16(水)。《3月17日(木)より現在と同フロアにて新装オープンの予定》とありますから、楽しみですね。


さらに、啓文堂書店では、この春に出店の予定があるようですね。永福町店と武蔵野台店。正確な時期はわかりませんが、春ごろで、どちらも数十坪程度の規模のお店のようです。


そういえば、先日、啓文堂書店三鷹店を訪問したら、久我真樹『英国メイドの世界』(講談社)刊行記念なる、三鷹店独自のフェアが展開中でした。


英国メイドフェア1英国メイドフェア2

お店の人によるものだろうと思うのですが、それとも著者だったりするのかな、「ストイックな方がむしろ萌えます。」というポップが立っていました。よくわからないけど、なんだかいい感じ(笑)。


メイド……個人的には、よくわからない、というか、あんまり興味ない世界だから内容を云々はできないんだけど、店頭で配布されているフェアの選書リスト(上の写真)、ご覧いただければわかるように、別に萌え~な世界の本だけをあげてあるわけではなく、まじめな本、かたい本もちゃんとおさえてあります。っていうか、この本自体、「メイド」ということばから受ける萌えな感じの内容ではなくて、ハウスメイドから、カズオ・イシグロ的執事まで、男女を問わない英国家事使用人の歴史や実態をまとめた専門書的な趣の本のようです(「鶴田謙二氏、推薦図書」がいい感じ;笑)。こういうフェアが、駅前の中規模書店で展開されてるってのがおもしろいよね。


このお店、三鷹駅南口の駅前ビル、コラルに入っているワンフロアのお店なんですが、広さの割に、けっこうかための本をしっかり置いていたり、岩波書店の本のコーナーがあったりと、駅周辺にある同規模のお店に比べ品揃えのバランスがちょっと独特で、なかなかいいんですよ。この日も、フェア以外の棚をうろうろチェックしてたら、海外文学の棚前で、マングェルの『図書館 愛書家の楽園』(白水社)が平積みになってました。いい本だけど、2年前の本だし、最近何かで取り上げられたりして話題になったという話も聞かないし、けっこう内容的には本格派でむずかしいし、3570円と高めだしで、ふつうの駅前書店がレギュラーで平にしておく本じゃないよね。こういう本がさりげなく並んでいるあたりがすごい。


啓文堂書店というと、お隣吉祥寺が旗艦店ということもあって、その陰になってか、三鷹店はやや目立たない感じですが、いいお店ですよ。ひそかに、ってこともないけど、愛用しているお店の1つです。


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ホーキング、村山、マンガでわかる……最近読んだ宇宙本たち。

昨年は、宇宙・装丁・探偵・特撮・SFといった、ぼくの好きなジャンルでいくつか重要な本が続けて出たりしたんですが、紹介する機会を逸して積み残しみたいになっちゃっているのがありますので、それぞれ3点程度に絞り、何度かに分けて紹介します。まずは宇宙本から。


宇宙本、それもあまり専門的に過ぎないものが好きで、文系脳の持ち主にしてはこのジャンルの本は割によく読んでいるほうなんですが、昨年から今年にかけて、こんな宇宙本たちを読みましたよ。


  • スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ『ホーキング、宇宙と人間を語る』(エクスナレッジ
  • 村山斉『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)
  • 中川人司・coco『マンガでわかる 宇宙のしくみと謎』(池田書店)


ホーキング本と村山本は、けっこうハードだったなあ。どちらもテーマが重なっていて、同じような説明が出てくるんですが、それを両方読んでも理解できないものなあ……。別に本が悪いということではなく、こちらの理解力の問題なのですが……。


宇宙本は好きだけど、ぼくの「宇宙好き」はあくまで、夜空の星や月を眺めてああきれいだなの延長だったり、SFアニメやSF映画好きの延長だったり、でしかないんですよね。だから、話題が量子物理学のことになると、ウルトラ文系の身には、なかなかどころかかなりハードで、いくらがんばっても、どうしても入っていけない部分、理解できない部分が残っています。おそらく、脳のふだん使わないところでも刺激されているのか、ずっと読んでるとなんだかきりきりしてきます……。嫌な感じではないんだけど、なんか修行っぽい感じがしなくもない(苦笑)。


そういえば、ホーキングの名前を知るきっかけになった大ベストセラー『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』、親本が出たのが大学のころかな。当時、がんばって読んだけど、ぜんぜん理解がついていかなかったのを思い出しました。


村山本、このテーマとしてはベストセラーといっていいほど売れたようだけど、新書とはいえこの内容、買った人たちはみんなちゃんと読めてるのかなあ。プロはどう読んでるんだろう。探してみたら、本書の書評には、たとえばこんなものがありました。「科学の織物を縦覧」(2010/11/22 読売新聞、評者・池内了)。「宇宙の全体像を閉じこめて」(2010/12/5 朝日新聞、評者・瀧井朝世)。「素人相手に宇宙の謎に迫る」(2010/12/17号 週刊朝日、評者・長薗安浩)。


うち長薗氏はこんなふうに書いています。《(……)後者のテーマになるとページをめくるたびに困惑が深まり、ハイゼンベルクが表した位置と速度に関する式のあたりでついに降参。その後は、文字面だけをながめて過ごしたのだった。/村山は悪くない。原因は、きっと私にある。あるいは、このようなコンパクトな本で、素人相手に宇宙の謎に迫ろうとした企画自体に無理があるのだろう。》


《企画自体に無理がある》って……(苦笑)。それって、完全なダメ出しですよね(苦笑)。その後に、《どちらにせよ、今、自分がいったいどこまで宇宙を理解できているか知りたい方には、うってつけの一冊となっている。》と続くんだけど、なんだかほめてるんだかよくわからないことになっているあたりに、この本のむずかしさがよくあらわれているようで、思わず笑ってしまいました。


この2冊を読んだ後に、『マンガでわかる 宇宙のしくみと謎』を読むと、あまりにも読みやすくて、わかりやすくて、すらすらと内容が頭に入ってくるので、ちょっと感激してしまいます。「俺って、天文、いけるじゃん!」と、なんか勘違いしそうになるほど(笑)。でも、最後の章ではホーキング本、村山本でも扱われていた量子物理学の話がちゃんと出てきて、前2冊に比べ、圧倒的にやさしく解説してあるのに、「やっぱり俺じゃダメだ……」とわからせてくれるので、素人をわかったような気分にさせすぎないという意味でも安心の1冊です(笑)。

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文庫の「東京本」が好きなのです

そうそう、この前BOOKSルーエで、「なんか最近の新刊で、空犬さんが買わなきゃいけない文庫があったよ-」と、こんな本をすすめられたのでした。


  • 吉田健一『東京の昔』(ちくま学芸文庫)


「東京」について書かれた本、それも文庫のかたちのものが好きなのです。別に、網羅的にコレクションしているわけではないのですが、目につくものはだいたい買ってたりします。


この「東京本」好きを含め、本の趣味がわかりやすいせいでしょうか、知り合いの書店員さんから、「空犬さんが好きそうな本が出ましたよ」なんて教えられることがしばしばあります。持つべき者は書店員の友人ですよ、ほんと。見逃していた新刊に気づかされることもあれば、なんだかよくわからないものを買わされてしまうこともないわけではないんですけどね(笑)。


「これ、空犬さんの言う『東京本』なのかどうかわからないけど……」と花本氏。ばっちり、空犬好みの「東京本」ですよ。ひと昔前の東京の姿が描かれている本ですから。ただ、残念ながら、これ、中公文庫版を持ってるんですよね。


東京の昔 中公

↑我が手元の中公文庫版。ちくま版のカバー(飲み屋のカウンターかテーブルの上でしょう、とっくりとおちょこと小皿に箸が写っています)もいいけれど、こっちの中公版もなかなか味があっていいでしょ。


《これは本郷信楽町に住んでいた頃の話である。》と始まる本書は、昭和初期の東京を舞台にした長編小説。その当時の東京の雰囲気をたっぷり味わえる一篇で、もうずいぶん昔に読んだきりでしたが、いま久しぶりに引っ張り出した本をぱらぱらやってたら、また読みたくなってきました。


そういえば、少し前にも中公文庫からちくま文庫入りした「東京本」、それもけっこう重要な「東京本」があったな、と思ったら、これでした。


  • 横関英一『江戸の坂 東京の坂 (全)』(ちくま学芸文庫)

(全)とあるのは、元の中公文庫版が正編と続編の2巻だったのを1冊にまとめたものだから。中公文庫版の2冊、その存在を知って欲しいなあと思ったときにはすでに品切れだったので、けっこう古本屋で見つけるのに時間がかかったんだよなあ。そんなにレアな本でもないのに。なので、元版にはそれなりの思い入れがあるのです。


江戸の坂 東京の坂 中公

↑ちくま版は写真のカバーになっていましたが、元版は、ご覧の通り、正続とも尾形月耕の絵が使われていていい感じ。それぞれ、「江戸見坂」と「半蔵門」。


見た目は薄い文庫なんですが、内容のほうは坂の「専門書」といっていいもので、東京の地理が相当程度頭に入っていないと、とてもすらすら読めるものではありません。というか、読めない。とても、通読はできない。それでも、坂の名前(おもしろい名前の坂もけっこう多い)や地名の由来など比較的読みやすい部分を拾いつつ、小さくてモノクロだけどそれなりに数の入っている図版を眺めていると、東京の坂、地形、その歴史がなんだかわかったようなわからないような、フシギに楽しい気分になってきたりします。


加筆修正、増補があったり、講談社文芸文庫のように解説などの巻末資料が充実していたりすると、買い換えたくなってしまうし、実際、買い換えることもあるけど、今回はどうなのかなあ。両方とも元版で持っておきたいから、あえて調べていません。


品切れ・絶版文庫が装いを新たに復活するのはうれしいことなんだけど、元版所有者の場合は、ちょっと複雑だったりすることもある、そういう話でした。



中公の東京本

↑かつての中公文庫は「東京本」の宝庫でした。中公のクリーム色の背がずらりと並ぶわが家の東京本棚から、中公文庫のお気に入り「東京本」を数冊引っ張り出してみました。こうしてみると、中身だけでなく、カバーもいいですね。


老舗書店の閉店、TSUTAYA、DNP&ドコモ……書店のいろいろ

年初に少しだけ書店のことにふれましたが、ちゃんとまとめるのは久しぶりになりますね。書店関係のいろいろをまとめて取り上げます。


まずは、閉店がらみのニュースから。残念なことに、今月、地方の老舗書店の閉店がいくつか続くようです。静岡・清水の戸田書店清水本店が1/18に、北海道・旭川の冨貴堂MEGA店と広島の金正堂がそれぞれ1月末に閉店になるようです。


うち、金正堂については、こちらの記事に詳細が。「大正創業 金正堂が1月閉店」(2010/12/28 中国新聞)。


記事を引きます。《広島市中区の本通り商店街で1926年(大正15年)に創業した老舗書店の金正堂が1月末で店を閉じる。大型書店の進出などで競争が激化したため。市中心部からまた一つ、一般向けの書店が姿を消す。》

《本通り商店街に隣接する金座街商店街では広文館の金座街本店があるが、本通り商店街では一般向けの書店はゼロとなる。》

……「姿を消す」「ゼロとなる」……書店好きにはさびしい話ですね。


同店について、e-honの店舗案内がユニークなものなので、引いてみます。


《大正15年創業のお店です。大正、昭和、平成と75年間、同じ場所で営業しています。この間、このお店も原爆にあいました。そこで少しエピソードを。原爆後地下倉庫で燃えていた火が消えずに今も燃え続いています。九州の山奥にある星野村という名前通り星のきれいな村です。平和の灯として村で守り祈っているとのことです。品揃えも、エピソードもユニークなお店です。》


冨貴堂については、こちらを。「冨貴堂MEGA店、来年1月末で閉店」(2010/12/21 新文化)。


《旭川・買物公園通にあるマルカツデパート6階の同店は5年間の賃借契約満了に伴い、閉店を決めた。2 年前から社内で再契約や移転など対応に関する検討を重ねたが、出版市場の低迷や競合店による商環境の悪化などで収支が厳しい状況を考慮、グループ的な視点から再契約を断念した。/同店は総売場面積が500坪、うち書籍・雑誌が460坪、文具15坪、カフェ25坪の複合書店。1996年11月の開店、14年の営業期間だった。》


金正堂は大正15年、旭川冨貴堂は大正3年(札幌冨貴堂は明治31年)、戸田書店は大正13年と、いずれも大正創業の老舗です。店舗営業をなくして外商のみとなるらしい金正堂と違い、冨貴堂と戸田書店は他のお店がありますからお店がなくなったり廃業したりの話ではありませんが、それでも、長く地域に根ざした営業を続けてきた老舗の支店が維持できないというのはやっぱりさびしいことですよね。


いずれも、ふだん行けない地域・お店の話で、以上はすべてWebやツイッター経由で得た情報をベースに書いたものです。うち、戸田書店の件は、新聞記事などによる確認がとれていない情報です。これらのお店について、もしもくわしいことをご存じの方、記事の間違いや漏れなどに気づかれた方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけるとうれしいです。


老舗が、商店街の書店が消えていく一方で、書店をめぐってはこんなニュースたちも。





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やっぱり吉祥寺の出版社はおもしろい……夏葉社さんとアルテスさん

明日は、すっかり吉祥寺飲み仲間という感じで親しくさせていただいている吉祥寺の出版社、夏葉社の島田さん、アルテス・パブリッシングの鈴木さんと3人で新年会です。楽しみだなあ。


で、その夏葉社の島田さんですが、ミシマ社のWebマガジン、ミシマガジン「本屋さんと私」に登場です。「第56回 夏葉社ができるまで~出家(!?)、失恋、そして、リーマンショック~(夏葉社・島田潤一郎さん編)」


島田さんの人柄が「見える」、いい記事ですよねえ。上に書いたように、一緒にお酒を飲む機会を持てたりするようになったので、出版立ち上げまでの経緯は、ご本人の口からいろいろ教えてもらっていたんですが、それでも、知らないエピソードもあったりして、楽しく読めました。しかし、出家未遂(?)に失恋にって、島田さん、実にオープンだなあ(笑)。後半も楽しみ。


夏葉社は、これだけではありませんよ。この前の日曜日は、朝日新聞の書評に、『昔日の客』も取り上げられましたしね。あと、聞けば、今年は前半に、いくつか出版・本がらみのイベント・トークなどにも出演されるようです。そちらはくわしいことがわかったら、また詳細をこの空犬通信でも報告したいと思います。


昔日の客 朝日書評

イベントと言えば、それこそなあ、吉祥寺つながりで、ほんとうは吉っ読で何かやれたらいちばんいいんだけどなあ……。さすがに、我々ではちょっと非力過ぎて……(泣)。でも、こうしていろんなメディアや会で、夏葉社さんの出版活動や刊行物が取り上げられるのは、本当にうれしいことです。夏葉社の出版活動と刊行物は、規模やテーマからすると異例といっていいほど昨年は話題になりましたが、もっともっと知られてもいい、知られてほしいと思うからです。


一方のアルテス・パブリッシングも負けてませんよ。昨年は、三省堂書店神保町本店でもやっていた全点フェア、現在は、ジュンク堂書店池袋本店で展開中のようです。それも、芸術書のフロアではなく、1階、入り口入ってすぐフェアコーナーではないですか! こちらで写真が見られます。


音楽書読みのみなさん、とくに神保町の全点フェアを見逃している方は、ぜひジュンク堂書店池袋本店1Fのフェアをのぞいてみてください。


色川、藤枝、書斎……今日買った文庫たち。と、フリーペーパーのこと

愛機MacBookが不調、さすがに寿命かと買い換え、新しいマシンになったのはいいんですが、データの移行、らくちんをしようと、無線でつないだ状態で設定移行アプリをぽちりとやってしまったのが運の尽き、半日たっても一晩たっても終わらない……。おかげで、この2日間、ほとんどパソコンが使えず、ブログの更新ほか、パソコンを使う作業がまったくできずにおりました。やれやれ。というわけで、新しいマシンでの初更新です。


さて。今日は寒かった……。あまりの寒さに心の中でずっと泣きながら、会社帰り、吉祥寺へ。BOOKSルーエに花本氏を訪ね、吉っ読の新年会やイベントのこと、最近の本のことなど、しばしおしゃべりしてきたのでした。で、買ってきたのはこんな本たち。


  • 色川武大『小さな部屋・明日泣く』(講談社文芸文庫)
  • 藤枝静男『藤枝静男随筆集』(講談社文芸文庫)
  • 内澤旬子『先生の書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』(河出文庫)

色川武大、藤枝静男、山本健吉の正宗白鳥……今月の講談社文芸文庫の新刊は気になる本、欲しい本ばっかりだ。でも、3冊いっぺんに買うと5千円弱だからなあ。色川本は単行本・文庫もほぼ全部持ってるから重なりそうで、迷ったけど、「幻の処女作」を含むとなると買わないわけにはいかない。


藤枝静男の文庫化は久しぶり、随筆は初めてかな。著作数の割に文庫化の機会に恵まれない人ですよね。文芸文庫巻末の一覧を見たら、過去6点の文庫のうち3点が講談社文庫で3点が講談社文芸文庫。うち、講談社文庫2点は文芸文庫と重なっているから、今回のを入れても5点に満たず、しかも『或る年の冬 或る年の夏』は品切れみたいだしなあ。


で、今回の随筆集、自伝的な随筆を含むというのも楽しみだし、解説が堀江敏幸さんというのもちょっとうれしい。


『センセイの書斎』、持っていたはずの親本は誰かにあげてしまったようで見当たらない。文庫の紙面だとイラストの細部がどうかなあという不安もありましたが、書斎本を文庫で読める喜びには代え難く、購入。「書斎」に混じって書店が2軒混じっているから、書店好きも見逃せません。ちなみに2店とは、目録のすばらしさで有名な古書店、月輪書林と、いまはなき、すずらん通りの新刊書店、書肆アクセス。昼休み、毎日のようにのぞいていたアクセスの棚がなつかしい……。


BOOKSルーエ、1階と2階の間の階段、踊り場の手すりは、ご存じの通り、フリーペーパーやチラシの置き場になっていて、必ずチェックするようにしているんですが、今日、これまで見たことのないフリペが目に入ったのでもらってきました。


きのこの友 創刊号

↑スキャンしたら、細部がとんでしまいました……。



『きのこの友』。見たことないはずだ、「創刊号」とあり、発行が2011年1月になっています。ピンクがベースのフシギな色使い、手書きとワープロ文字が混じった組、いかにもきのこな妖しさに満ちていていい感じ。B4の紙に切れ目を入れて折り重ねることで、ホッチキスを使わずに冊子状にしてあるところは、ジュンク堂書店新宿店のフリペ「淳久倶楽部」と同じ造りです。


強烈な装丁・造本で本好きの度肝を抜いた『きのこ文学名作選』(港の人)を手がけた祖父江慎さんが寄稿しているほか、オリオン書房ルミネ店の方、タワーレコード新宿店の方他が稿を寄せています。ほんと、昨年からなんだかきのこづいてますよね(笑)。空犬熱愛マンガ『レコスケくん』の本秀康さんもきのこ本を出すようです。『まじかるきのこさん』(イースト・プレス)。今月末の発売のようで内容はわかりませんが、絵本のようですね。


そうそう、フリーペーパーといえば、こんなニュースが。

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読み応えありすぎでへとへと……『WATCHMEN ウォッチメン』

今日から3連休ですね。その初日だというのに、日中は寝床から出られず動けずで、完全に無為に過ごしてしまいました。こういうのを、からだを休めることができてよかった、と考えればいいんですが、どうも考え方が貧乏くさくて、もったいない、と思ってしまうんですよねえ……。


コミックを読み慣れないもので、読み終えるのに時間がかかるほうなんですが、なかでもこれはもうなんというか、ものすごーく時間がかかりました……。


  • アラン・ムーア、デイブ・ギボンズ『WATCHMEN ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション)

日本のコミックでさえそんなに読んでないのだから当然と言えば当然なんですが、アメコミってほとんど読んだことがありません。特撮&SF好きなもので、アメコミ原作ものの映画はけっこう(どころか、ほとんど、か)観ているにもかかわらず、です。この作品も映画を先に観てるんですが、それがなかなかよかったので、この複雑な構成の物語、原作っていったいどんななんだろうとめずらしく気になって、手にしてみたというわけなのです。




さすがは、ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞した作品、SFとしての読み応えも大いにあって、というか、読み応えありすぎなぐらい。ディテールの描き込み、情報の詰め込みぶりがものすごくて、ぱらぱら流し読みを許さない感じです。なもので、冒頭にも書いた通り、とにかく読了までに思いっきり時間がかかり、へとへとになってしまいました。小説なら、相当面倒なものでもけっこう読めるほうなんですが、やっぱりコミックだと、脳の使う部分が違ったりするのでしょうか。でも、その「へとへと」はぜんぜん嫌な感じではなくて、心地よい疲れで、けっこう達成感があります。映画を観ているので、物語の進行もラストもわかっているんですが、それでも楽しめましたよ。


作中、印象的な台詞はいくつもあるのですが、なかからDR. マンハッタンのこれを。


《“さぁ、涙をふいて。君はクォークよりも稀少で、ハイゼンベルクが夢想だにしなかったほどに予測困難な存在だ。万物を創った力の諮問を、くっきりと写した粘土なんだ。”

“だから涙をふいて…”

“地球に帰ろう”》


いやあ、一生に一回ぐらい、女性にこんな台詞言ってみたいよね。って、いったいどんなシチュエーションで言うんだ(苦笑)。これ、火星から地球に戻るときの台詞ですからね(笑)。


安くはない本だし、(くどいようですが)読むのもけっこう大変ですから、万人におすすめの本かどうかはわかりませんが、映画が気に入った人はもちろん、映画を観ていない人でも、あなたがSF者なら読む価値は大いにありですよ。


そうそう、アメコミの原作といえば、これも最近読んだのでした。


  • マーク・ミラー、ジョン・ロミータJr. 『キック・アス 』(小学館集英社プロダクション)

映画版の『キック・アス』は、現時点でいちばん観たい映画なんですが、昨年一度、時間を作ってシネセゾン渋谷に駆けつけたら満員で入れないということがあって以来、なかなかチャンスがありません。上映館も増えたようだし、早く観にいかないとなあ。でも、シネセゾン渋谷が閉館だというから、それなりに思い出のあるこの館でやっぱり観るのがいいかなあ、などと迷っています。


映画版のほうがどの程度アレンジされているのかはわかりませんが、原作のほうは、前評判に聞いていた以上に血みどろ、全編これすさまじい暴力の嵐だったので、ホラー映画好きの空犬もちょっと驚いてしまいました。原作コミックのほうはかなりハードですから、スプラッター耐性の低い方はご注意を。


吉っ読5周年記念のイベント、やります!

風邪でダウン中だというのに、昼間寝過ぎてなかなか寝られずにいるもので、やむなくDVDを観たりしながらだらだらしている空犬です。


今年2011年は、吉祥寺書店員の会「吉っ読」(きっちょむ)にとって、5周年の年であることは、昨年もどっかで書いた気がしますが、その、中身の薄い(苦笑)5年間の活動を記念(?)して、今年の6月(というのは、吉っ読のキックオフイベントをやった月なのです)に、本と音楽のイベント「ブックンロール」の第3弾を開催することにしました。


まだ内容も出演者もぜんぜん決まってないんですが、昨年8月の第1弾同様、本と書店と音楽をキーワードにしたイベントになります。前回は、「音楽」の部分はおまけ程度の扱いだったんですが、今回はその部分を拡張、吉っ読バンドだけでなく、他のバンドの方にも出演していただき、ライヴとしても楽しめるものにしたいと考えています。もちろん、本と書店に関するトークもあります。


とりあえず日だけ決めました。6月17日(金)の夜です。19時ごろから3時間程度のイベントを考えています。詳細が決まりましたら、この空犬通信と吉っ読のサイトでご報告します。


アナログシングル盤ボックスに再び涙……Joy Divisionの10枚組シングルボックス

どうやら風邪にやられてしまったようで、喉の奥がいがいが、頭ふらふら、新年の仕事始め早々にお休みをいただく羽目になり、今日はしなくちゃいけない仕事も、行きたい書店もたくさんあったのに、なんだかなあ、な気分でいっぱいの空犬です。


さて、伏せって動けない、というほどでもないので、こんなときこそ、大量にたまった積ん読本・未読本を片づけようと、寝床のかたわらに本を積み上げ、ぱらぱらやってみるのですが……中身がまったく頭に入ってこない。寝てろ、ってことですね。はい、そうします。



◆今日のBGM◆


  • Joy Division『PLUS MINUS -LTD- SINGLES 1978-1980』



新年最初の「今日のBGM」がラスカルズのアナログで、2回目がこれだからなあ。どんだけ化石的な趣味の持ち主なんだと思われそうですが、まあいいよね。おもしろいのでやっぱり紹介しておこう。ジョイ・ディヴィジョンの7インチシングル10枚組のボックスです。


この手の函入りのシングル盤セットって、シングル盤好きには、たまりませんよね。これまでも、ビートルズやザ・フー、エルヴィスなんかが出てますし、日本発のものだとザ・クラッシュのものすごいのもありましたね(発売当時知らなくて買い逃して以来、ずっと中古で探してたんですが、昨年、ようやく手に入れました。しかも、超安価で!)。この空犬通信でも、ザ・スミスのシングルボックスを紹介したことがありました。


こうしたシングルボックスは、だいたいUK盤なり日本盤なり、当時出たものをオリジナルのかたちで復刻したセットであることが多いんですが、今回のジョイ・ディビジョンのはちょっと違って、ボックス用に「編集」されたものになっているようです。Webの内容紹介文を引いておきます。


《2010 retrospective box set consisting of 10 seven inch vinyl presented in a beautiful clamshell box. All tracks have been newly re-mastered from original tapes by Stephen Morris and Frank Arkwright (Metropolis Studios) with creative direction for the box set artwork coming from Peter Saville and Studio Parris Wakefield. Compiled by renowned journalist and author Jon Savage, the boxset is released in celebration of Ian Curtis - in the year that is the 30th anniversary of his death. Includes singles which have previously been issued and some which have been created specifically for this release. Although they released two albums in two years - Unknown Pleasures (1979) and Closer (1980), Joy Division recorded many other tracks throughout their career that were released on stand-alone singles - most notably 'Transmission" and 'Love Will Tear Us Apart". +- brings these singles, and more, together in one place.》


80年代ごろって、12インチシングルというのがありましたよね。個人的には、あまりメディアのかたちとして好きじゃなかったので、当時も買わなかったし、今でもほとんど持ってないんですが、当時の、とくにイギリスのバンドは、シングルを12インチでしか出していなかったり、リミックス違いだったりが多くて、チェックするのが大変でした。ジョイ・ディヴィジョンも、ニュー・オーダーもそうで、というか、12インチを思いっきり活用したバンドですからね。なもので、当時のシングルを発売形態込みで復刻しようと思ったら、大変なことになりそう。


それを、すべて7インチに統一し、ものによってはスリーヴもボックス用に新しくしているとありますから、従来の「オリジナル復刻ボックス」とはかなり感じが違うものになっています。


その分、別にオリジナルにこだわりのない当方のような、なんちゃってシングル盤好きにはぴったりの内容になっています。Joy Divisionの場合、シングルでしか聴けない重要曲がいくつもありますから、こうしてシングルで彼らの音楽を楽しむこと自体、意味あることなんですよねえ。ジャケのアートもおもしろいしね。そんなことを考えながら、シングル盤を、とっかえひっかえしながら聴くのは、すごく楽しいですよ。


The Smithsのとき同様、というか最近のアナログ復刻はだいたいそうですが、封入されているコードを入力することで、デジタルファイルのダウンロードもできるようになっていますから、デジタル派も安心(笑)。


ところで。あれれ、新品が18000円って、すごい値段になってるなあ。ぼくが買ったときは、もっと安かった(半額以下?)だった気がするんだけど。なので、ご興味のある方は、2万円近くするものをいきなりAmazonで買ったりせずに、いろいろあたってみることをおすすめします。


今年も書店のことを

昨年は書店関係の記事をたくさん書きましたが、今年も書店、それもリアル書店(と、区別して書くこと自体、自分でも違和感があるんですが、とりあえず)の話題、それも楽しい話題をたくさん紹介できるといいなあ、などと考えながら飲酒中の空犬です。今年の目標の1つは節酒なのに……いかんことです。


昨年は新刊書店のオープン/閉店のニュースが多かったですね。こんなブログをやっているものですから、ふだんから、書店の出店・閉店については記録をとっているのですが、自分で把握できているだけでも大変な数になっていました。書店関係のニュースがにぎやかなのはけっこうなことなんですが、出店・閉店の話ばかりが多いのもどうかと、ちょっと心配になりますよね。


今年はもう少し業界全体が落ち着いた感じになればいいなと思うのですが、昨年中に報じられたり噂になったりしたものだけでもすでにいくつもありますからね。ジュンク丸善は、昨年の記事でも紹介しました通り、大型を含む出店が複数ありそう。ほかにも、たとえばくまざわ書店や啓文堂書店など、すでに出店計画がオープンになっているところもありますね。また、昨年、いくつかのお店が続けて閉店となったBOOK EXPRESSのリニューアルも、東京駅に続いてありそう。


これらを含む書店の動きは、今年も自分にできる範囲で追っかけて、ここでレポートしていこうと思いますが、はてさて、どうなることやら。


このように、出店・閉店関連の動きもいろいろありそうだし、「元年」と呼ばれた電子書籍関係も今年は大きく動きそうだし、今年も書店をとりまく状況は決して楽観はできない感じ。そんななか、年初からこんなこと言ってる方もいるんですねえ。「「三方一両損」のリアル店舗」


記事のコメント欄にも《もうちょい書籍、書店のことを勉強してから発言した方が良いですよ。》などと書かれてしまっているような内容で、書店派としては苦笑せざるを得ませんね。worrisさんがまとめたものがこちらで読めますが、《俺の本が本屋に置いてなかったのでムカついた、っていう話。》という、すばらしすぎるまとめのコメントがこの件のすべて、という感じで、ほかに付け足すものがなさそうですね(笑)。それにしてもなあ、いまだに、書店の状況や本の流通に関して、ある種の(身勝手な)幻想をいだいている人が、それも本を書く人のなかにもいるんですね。


こんなことを書いたり発言したりしてしまう人のプロフィール欄に《ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。》なんてことが書いてある。書店だって「企業」なんだけどな(苦笑)。こんなふうな一面的な見方しかできない人が他の「企業」のことを云々してるなんて、なんだかちょっとね。まあ、関係ないからいいけど。


ところで。話は変わりますが、昨日は、今年初めの本と映画について書いたので、今年初めて訪れた書店のことも書いておきます。1/2に、家族で初売りをのぞきに吉祥寺に行ったんですが、そのときにリブロ吉祥寺店に寄りました。書店での初買い物もできて、親子で楽しい時間を過ごせたんですが、ちょっとした「事件」がありました。


店内に、ガードマンの方の姿が複数見え、何かあったかな、と思っていたら、今度は警察官の姿が、それも複数。くわしいことはよくわからないのですが、店内に、メンタルな問題を抱えた方がいたようで、見た感じ、危ない人のようには見えなかったのですが、ぼくの見ていなかったところで何かあったのでしょうか、事情はわかりませんが、通報されたようです。


児童書売り場の座り読みコーナーに子どもがいたので、その問題の方が、ふらふらと児童書売り場のほうに向かったときは、さすがに心臓の縮む思いをさせられました。先に書いたように、別に危ない人には見えなかったんだけど、見た目だけではわからないし、実際、本屋さんのなかに警官が複数集まっていること自体、異様なことなわけですから、そんな場面を目にしてしまったら、心配しないではいられませんからね。


その方が具体的に何をしたのかはわかりません。ただお店のなかをうろうろしているだけ、にも見えました。実際、うちの子も、周りの騒ぎにはまったく気づかず、ふつうに児童書売り場で本を読んでいたぐらいなのです。もちろん、ぼくもすぐそばについていて、問題の方と、周りをとりまく警官やガードマンの様子を見ていたのですが、何をするわけでもないようでした。


ただ、警察官に声をかけられたときに、その方がちょっと大きな声を出してしまったりがあり、そのときはさすがに、一時、店内がざわざわした感じになっていました。それまで事態に気づかなかったうちの子も、さすがにびっくりし、大きな声のやりとりがこわかったのでしょう、ぎゅっとしがみついてきました。


結局、その方が店外に連れ出されることで事態はおさまり、大きなトラブルはなかったようでした。その方が実際何をしたのかは、最後までよくわかりませんでした。メンタルな問題を抱えた方が、ちょっと大きい声を出してしまったりはふつうにあることなので、それだけで危ない、危険とみなしてしまうのはどうかと思うし、もしそうなのだとしたら、ちょっと気の毒な気もします。ただ、何か事があってからでは遅いので、お店の対応をフライングだと批判することはもちろんできないし、したいとも思いません。


この空犬通信でも、書店で起きた事件について何度か書いたことがありますが、自分や我が子がそのような場面に遭遇するとは想像してもみなかったので、後から思い出して、あらためてぞっとしています。ほんと、何もなくてよかった。ぼくにとってもそうですが、うちの子にとって、本屋さんは大好きな本がたくさんあって、どれだけ長くいてもあきない、そういう特別な場所です。そんなところでこわい目にあって、行きたくない、こわくて行けない、なんてことになったりしたら……。この1年が、書店での事件や事故がない年になることを祈らずにはいられません。


というわけで。ちょっと特別な「書店はじめ」になってしまいましたが、今年も、たくさんの書店に顔を出して、たくさんの書店でたくさんの本を買って、たくさんの書店のことを、このブログで紹介していくつもりですので、よろしくお願いします。


今年最初の本、今年最初の映画

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


冬休み、あっという間でしたね。なんていうと、年末年始もお仕事だった小売り関係のみなさんに怒られそうですが、まだしばらくお正月気分にひたってだらだらしてたい感じです。この年末年始、大きな用事はなかったので、それなりにゆっくりはできたものの、思ったほど読書も進まず、積ん読本・未読本の山はあいかわらず……。嗚呼。


いつも、かなりたくさんの本に並行して手を出しているもので、「今年最初の本」というふうに特定するのがむずかしいんですが、今年になってから手にして読了した、という意味での「最初の1冊」はこれでした。


  • 天野尚『最後のアマゾン』(小学館)

すばらしい写真集です。よけいな説明抜きに、ぜひ書店店頭でぱらぱらやってみていただきたいものです。


文字ものは、昨年からの読みさしを片づけるのが精一杯で、この3日ほどで読み切ったものはないんですが、昨年からの読みさしのうち、これをようやく読了。


  • 『ゼロ年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)

見開きで1本を基本に100の作品が紹介される本書、この10年のアメリカ映画を見渡すにはいい本だと思いますが、すでに観た人がターゲットだからでしょうか、あらすじの紹介などがなく、論評的・作品論的な紹介になっていますから、ガイド的に使おうとする人にはちょっと向かないかも。


町山智浩、柳下毅一郎、黒沢清、滝本誠ら、とくに秘宝系の映画を愛する向きには豪華といって間違いないメンツによるコラムやインタビューが充実で、勉強になります。書き手とテーマなど、詳細はこちらで。


映画本の話をしたら、当然、今年最初の映画もあげておかないとね。





急逝したヒース・レジャーの代役をジョニー・デップら、大物俳優3人がつとめたことでも話題になった一作。劇場で見逃していたのを、レンタルブルーレイでやっとチェックできました。テリー・ギリアム、大好きな監督だし、代役3人の使い方や熱演も悪くないし、ダークでキッチュな絵も好みなんだけど、うーん、なんとなくものたりない。今年最初のアニメで、娘と一緒に見た今年最初の映画でもある、こちら↓が評判通り、いや、評判以上にすばらしかったので、よけいにちょっと残念な感じがしてしまいました。





おもちゃの話だし、それにアニメでしょ?……なんて感じで、食わず嫌いでいる映画好きもいそうですが、だとしたら、ほんともったいないと思います。よく練られた脚本、生き生きしたキャラ、驚くべきディテールの絵、適度なノスタルジー……作品としてよくできているというだけでなく、シリーズ全編のあちこちに見られる過去映画のパロディ/オマージュや、エンディングのNGシーンのパロディ(3はNGではないけど)も楽しい。


子どもを楽しませる工夫に満ちあふれた、ファミリー映画として第一級品であるのはもちろん間違いないのですが、この細部を、作り手の遊び心を、本当の意味で楽しめるのは、映画好きの大人だと思います。おすすめ。


というわけで、本も映画も、いずれもいつものノリですね。今年も、こんな感じで、昨年に引き続き、書店と本の話題を中心に、だらだらと書いてみようと思いますので、よろしくお願いします。


ところで。

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